保護者と主治医が振り返る治療体験談
コロナ禍で里帰り出産をしたAさん。生後1ヶ月で娘のB子ちゃんに乳児血管腫(いちご状血管腫)が見つかり、病院で治療を受けました。家族の協力も得ながら、育児と仕事を両立させて治療を乗り切ったそうです。
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乳児血管腫は、赤ちゃんの皮膚にぶつぶつとした赤いあざのようなものができる病気です。生まれつきという場合もありますが、生後1ヶ月前後ぐらいにあらわれてくることが多いですね。
娘は、生後1ヶ月頃に、顔に大きめの湿疹のようなものができ、出産した助産院の健診で「乳児血管腫かもしれないので小児科を受診してください」と言われました。でも、里帰り出産でしたし、まだかかりつけの小児科がなく、たまたま行った診療所でも確かな情報は得られませんでした。
乳児血管腫は、この時期にできる皮膚の腫瘍の中ではいちばん多いものですが、自然治癒することもあるので様子を見るという考え方もあり、一般の先生には病気や治療についてあまり知られていないところがあります。
そうなんですね。診療所を受診した後、夫がインターネットで検索して見つけた、乳児血管腫についてのウェブサイト(当ウェブサイト:乳児血管腫の治療)で、専門的な治療が受けられると知り、この病院を受診しました。
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乳児血管腫は自然に小さくなり消えていく場合もありますが「あと」(瘢痕:はんこん)が残ることもあります。B子ちゃんの場合は、「あと」が残ると目立つところに血管腫ができていて、膨らみも少しずつ大きくなっていたので、早い段階での治療を提案しました。
なかなか情報がなく、先生からお話を聞くまでは、ずっと残るものなのかもしれないと心配していたので、治す方法があるとわかって、ほっとしたというか、よかったという思いがありました。
乳児血管腫のタイプや膨らみ方、できる場所などによって、飲み薬やレーザー、手術などの治療の選択肢も変わってきます。お子さん一人ひとりの病状とそれぞれの治療法について、最初に保護者の方がしっかりと理解された上で、治療に取り組んでいただくことが大切ですね。
授乳が必要な時期だと、どうしても母親がしなければいけないことが多く、ただでさえ産後で自分のホルモンバランスが崩れていて、子育て自体も手探りの時期に治療もはじめるのは大変でした。でも、この病気に詳しい先生とよく相談しながら、治療に取り組むことができてよかったと思います。
いろいろとご苦労もあったかと思いますが、B子ちゃんもお母さんも治療を頑張ってくださいましたね。 保護者の方にとっては大変な時期だと思いますが、治療をすることで、お子さんとご家族が将来、前向きな気持ちになってくれたらと思っています。
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小関 道夫 先生
岐阜大学大学院医学系研究科小児科学教室 臨床准教授。2002年愛知医科大学卒業。大垣市民病院小児科や名古屋第一赤十字病院小児血液腫瘍科を経て、現職。専門は小児科、血液・腫瘍。日本小児科学会専門医・指導医。
乳児血管腫は自然治癒することも多いとされてきましたが、「あと」が残ることがあります。お子さんが大きくなった時に、「あと」が目立って悩んだり、生活上で機能的な問題が出たりすることもあるかもしれません。お子さんに乳児血管腫が見つかった場合は、この病気や治療に詳しい医師や医療施設に相談されることをお勧めします。