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基礎からわかる外用剤

年齢による違い

高齢者の経皮吸収性

表1に示すように、非ステロイド系消炎鎮痛剤であるジクロフェナクナトリウムゲル軟膏では高齢者のAUCが成人の約5倍になっており、経皮吸収率が高いことが示されています7)

表1. ジクロフェナクナトリウムゲル軟膏塗布後の薬物動態7)

投与量 被験者
(被験者数)
t1/2
A U C
算出
例数
薬物動態パラメータ
製剤(有効成分) Cmax
(ng/mL)
Tmax
(hr)
t1/2
(hr)
AUCO-∞
(ng・hr/mL)
2.5g(25mg) 成人(10) 4 1.3±1.1 9.2±2.9 4.8±3.0 13.7±10.2
5g(50mg) 成人(7) 3 1.6±0.9 12.6±2.5 6.6±1.6 24.1±10.6
7.5g(75mg) 成人(7) 4 1.1±0.6 14.6±6.2 8.5±5.8 20.0±6.6
7.5g(75mg) 高齢者(7) 4 2.4±1.5 22.6±7.4 39.0±24.8 108.1±58.2
ジクロフェナクナトリウム錠(25mg) 成人(10) 10 339.8±129.2 1.6±0.7 2.7±1.1 634.7±178.1
mean ± S.D.

*:血漿中濃度対数値-時間曲線の消失相の直線部分より、消失速度定数Kelを求めることができ、t1/2およびAUC0-∞が算出可能であった例数。

しかし、一般的には高齢者のほうが経皮吸収性が低くなる場合が多いようです。図3に各種薬物を20~40代と60~80代の健康人の皮膚に適用したときの経皮吸収性を示します8)

図3. 年齢と経皮吸収性の関係図3. 年齢と経皮吸収性の関係

テストステロンやエストラジオールでは20~40代と60~80代の人で経皮吸収性に大きな差はありませんが、ヒドロコルチゾン、安息香酸、アセチルサリチル酸、カフェインでは60~80代で経皮吸収性が減少しました。これは、加齢にともない皮膚表面の皮脂や角層水分量が低下することが原因の1つとして考えられます。特に脂溶性が低い(オクタノール/水分配係数LogPが低い)薬物で経皮吸収性が減少する傾向があり(表2)、角層水分量の減少が影響するものと考えられます。その他、加齢にともなって角質層の厚さは変化せず9)、角質細胞が大きくなる10, 11)という報告もあり、主薬の主な経皮吸収経路である細胞間隙が狭くなるために、高齢者では経皮吸収性が低下する可能性もあります。

表2. 薬物とLogPの関係

薬物(LogP)
テストステロン(3.32) エストラジオール(4.01) ヒドロコルチゾン(1.61)
安息香酸(1.87) アセチルサリチル酸(1.19) カフェイン(-0.07)

*オクタノール/水分計数LogP 油水分配係数とも呼ばれます。オクタノール(油相)と水(水相)を入れたフラスコ中に薬物を添加後、振とうし、それぞれの相の薬物濃度から以下の式で算出します。
LogP=Log10(油相中濃度/水相中濃度)
油水分配係数が高いほど油相に溶解しやすい(脂溶性が高い)ことを示します。例えば、油水分配係数が3の場合は、油相の濃度が水相の濃度の1000倍となります。

■引用文献

7) ボルタレンゲル1%インタビューフォーム

8) Roskos KV, et al., J. Pharmacokinet. Biopharm., 17, 617-30, 1989

9) Marks R, Br. J. Dermatol., 104, 627-33, 1981

10) Grove GL, et al., J. Soc. Cosmet. Chem., 32, 15-26, 1981

11) Plewig G, J. Invest. Dermatol., 54, 19-23, 1970

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