ホーム

基礎からわかる外用剤

経皮吸収性促進方法について

経皮吸収性促進技術には「化学的アプローチ」と「物理的アプローチ」があります。

化学的アプローチはエタノール、プロピレングリコール、メントールなどの化合物を添加物として用いる方法です。これらの化合物には経皮吸収促進効果があり、経皮吸収の面ではメリットとして働きますが、デメリットとして皮膚刺激が高いことも知られており、添加物として用いる場合はそのメリットとデメリットの兼ね合いを考慮することが重要です。

物理的アプローチは、何らかの力を外部から与えることにより経皮吸収を促進させる方法です。次に、その代表的な方法を示します。

*:医薬品添加物辞典2007(日本医薬品添加物協会編集)では直腸膣尿道適用剤としてカプリン酸ナトリウムのみが「吸収促進剤」として記載されており、外用剤には吸収促進剤としての添加物は記載されていません。

閉鎖密封法(ODT)

高温多湿の日本では1~2日、場合によっては半日、外用剤の塗布部位をプラスチックやラップなどで覆うことで皮膚からの水分蒸発を防ぎ、角質層を水和させ(ふやけさせ)ます。水和により角層細胞が膨潤するとともに、角質細胞間脂質に挟まれている水が増えることで、角層バリア機能を低下させ、主薬の経皮吸収性を促進させます。その際、5~15%の角層水分量が約50%増加することも報告されています11,12)。また、塗布部位を覆うため、その温熱効果(皮膚表面温度が32℃から37℃に上昇したという報告がある13))により血流が増加することからも、経皮吸収性が促進されます。

閉鎖密封法により全ての主薬の経皮吸収性が促進されるわけではなく、特定の薬物のみに影響します。また、基剤によっても閉鎖密封法の影響は異なります。

*ODT:Occlusive Dressing Therapyの略語

イオントフォレーシス

皮膚に微弱な電気(数ボルト)を流すことで、主薬の経皮吸収性を促進させる方法です。その原理として、皮膚に電気を流すと電圧差や電気浸透流(溶媒流とも呼ばれ、陽極から皮膚の内側へ向かう水の流れのこと)が生じることを利用しています。主薬が陰イオンとなる酸性物質の場合は陰極側のリザーバーに入れ、中性物質や陽イオンとなる塩基性物質の場合は陽極側に入れます(図9)。

イオントフォレーシスを利用した装置は既に製品化されており、リドカインなどの局所麻酔薬やアスコルビン酸(ビタミンC)などの経皮吸収性の促進に利用されています。

なお、高電圧の電気を流すと不可逆的に角質層に小孔が生じることを利用して経皮吸収性を促進させる方法を、エレクトロポレーション(電気穿孔法)といいます。

図9.イオントフォレーシスの原理
図9.イオントフォレーシスの原理

フォノフォレーシス

皮膚に1~3MHzの超音波を負荷することで主薬の経皮吸収性を促進させる方法です。この周波数の超音波はマッサージにも用いられています。フォノフォレーシスの原理は正確には分かっていませんが、超音波により生じるキャビテーション(微細な泡)が主に関与しているとされ、その他に皮膚温度の上昇や角質細胞間脂質への干渉などが考えられています。この方法の欠点として、主薬を効率的に経皮吸収させるための超音波の条件設定が難しいことが挙げられます。

その他(無針注射法、マイクロニードル法)

無針注射法は、液体や粉末の薬剤に空気圧を負荷することで強引に角質層を通過させる方法です。この方法は注射針を用いないために、感染などの危険性が少ないことがメリットの1つです。高分子のワクチンを皮膚内に注入するために、無針注射法を利用したデバイス(Jet Injector Device)はFDAで既に承認されていますし、より痛みを軽減できるデバイスの開発も進んでいます。

マイクロニードル法は、角質層(10~20μm)のみを通過する針を有する剣山のようなものを皮膚に適用することで、神経に到達させず(痛みを感じさせず)に角質層に穴を開け、バリア機能を低下させる方法です。

これらの経皮吸収性促進方法のうち、閉鎖密封法は臨床でよく用いられている方法であり、イオントフォレーシスやフォノフォレーシスは美白やシワ取りなどの美容目的でも用いられています。無針注射法やマイクロニードル法を利用したデバイスは本邦ではまだ開発段階であり、その進展が期待されています。

■引用文献

11) Blank IH, et al., The epidermal barrier. In: Rook A, Champion RH, eds.Progress in the biological sciences in relation to dermatology, Vol. 2,Cambridge: Cambridge University Press, 245-61, 1964

12) Potts RO, et al., J. Soc. Cosmet. Chem., 37, 9-33, 1986

13) Kligman AM, Drug Dev. Ind. Pharm., 9, 521-60, 1983

ページトップへ