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基礎からわかる外用剤

主薬の経皮吸収性に対する基剤や剤形の影響

主薬の経皮吸収性に対する基剤の影響

主薬の経皮吸収性(角質層への分配)に影響を与える主な因子は、「基剤と皮膚との親和性」と「基剤と薬物との親和性」です。その他、「基剤中の薬物の拡散性」や「基剤中の薬物の状態」も主薬の経皮吸収性に影響を与える因子となります。

「基剤と皮膚との親和性」とは、基剤の皮膚へのなじみやすさのことです。角質層は脂溶性が高いため、水溶性基剤より油脂性基剤のほうが皮膚との親和性は高くなり、経皮吸収性は高まります。「基剤と薬物との親和性」とは、基剤に対する薬物の溶けやすさのことです。主薬が基剤に溶けやすいほど主薬は基剤に留まりやすいため、基剤から主薬が放出されず、経皮吸収性は低下します。主薬の経皮吸収性は、「基剤と皮膚との親和性」と「基剤と薬物との親和性」のバランスに左右されます(表6)。

表6. 主薬と基剤の組合せによる「基剤と皮膚との親和性」と「基剤と薬物との親和性」の関係

主薬 基剤 基剤と皮膚との親和性による
経皮吸収性
基剤と薬物との親和性による
経皮吸収性
水溶性薬物 油脂性基剤 (高) (低)
水溶性基剤 (低) (高)
脂溶性薬物 油脂性基剤 (高) (高)
水溶性基剤 (低) (低)

( )内は親和性を示す。

水溶性薬物の場合は、水溶性基剤より油脂性基剤の方が経皮吸収性が高まります。例えば、ワセリンなどの油脂性基剤を混合すると主薬の経皮吸収性は高まります。

脂溶性薬物の場合は、どの基剤で経皮吸収性が高くなるかは一概には言えません(図3)。基剤が変化した場合の経皮吸収性は、「基剤と皮膚との親和性」と「基剤と薬物との親和性」のどちらの因子の影響が強いかによって決まります。例えば、脂溶性薬物であるステロイドの外用剤にワセリンなどの油脂性基剤を混合すると、経皮吸収性が高まることが知られています。この場合は、「基剤と薬物との親和性」よりも「基剤と皮膚との親和性」の影響が大きいことが、経皮吸収性が高まる理由と考えられます。

図3.脂溶性薬物である場合の基剤による経皮吸収性
図3.脂溶性薬物である場合の基剤による経皮吸収性

上記の他、基剤が主薬の経皮吸収性に影響を与える因子として、「基剤中の薬物の拡散性」や「基剤中の薬物の状態」があります。

「基剤中の薬物の拡散性」は、基剤中での主薬の広がりやすさのことです。皮膚に接している主薬から順に皮膚へ移行するため、皮膚に接している部分の主薬濃度が低下します。その後、拡散性が高い基剤ではすぐに他の部分から主薬が補充されますが、拡散性が低い基剤では主薬がなかなか補充されず角質層への移行性が低下します(図4)。

図4.基剤中の薬物の拡散性
図4.基剤中の薬物の拡散性

「基剤中の薬物の状態」の違いも、経皮吸収性に影響を与える可能性があります。基剤中の主薬は飽和濃度までは基剤に溶解していますが(溶解型)、飽和濃度を超えると結晶化します(結晶型)。角質層には溶解型のみが移行でき、結晶型はその大きさのため移行できません。さらに、溶解型はイオン化しているイオン型とイオン化していない分子型に分類でき、一般的に分子型の方がイオン型よりも角質層に移行しやすい傾向があります(図5)。

また、「基剤中の薬物の状態」は、主薬に対する基剤の溶解性やpHなどに影響されます。

このような基剤中の薬物の状態による経皮吸収性の違いを利用し、あえて薬物を結晶型とすることで、薬効の持続性を向上させているものもあります。

図5.基剤中の薬物の状態と移行量
図5.基剤中の薬物の状態と移行量
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