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新熊 悟(奈良県立医科大学皮膚科准教授)
図1 初診時の顔面の腫脹(左)および体幹の皮疹(右)
70歳代,男性。てんかん発作に対し,カルバマゼピンの内服が開始された。内服開始後6週時に発熱と体幹の皮疹が出現し,顔面の腫脹を伴うようになったため,当科を受診した(図1)。白血球1万2800/mm3,肝機能障害があり,両側鎖骨上窩にリンパ節腫大を認め,薬剤性過敏症症候群(DIHS)を疑った。 本患者において,診断のために行うべき検査は以下のうちどれか。
①IgE抗体検査
②抗核抗体検査
③血清フェリチン検査
④TARC検査
薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)は,発熱や多臓器障害を伴う重症薬疹の1つであり,原因薬剤の中止後も症状が遷延することが特徴である1)。抗てんかん薬,ジアフェニルスルホン,サラゾスルファピリジン,アロプリノール,ミノサイクリン塩酸塩,メキシレチン塩酸塩など,比較的限られた薬剤が誘因となる。 多くの症例では,発症後2~3週でヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)をはじめとするヘルペスウイルスの再活性化が認められ,薬剤アレルギーとウイルス再活性化の双方が病態形成に関与しているとされる。治療経過中には皮疹や肝障害の再燃を繰り返すことがあり,これらの再燃はウイルス再活性化によると考えられている。 さらに,発症早期にはサイトメガロウイルス(CMV)肺炎や消化管出血,ニューモシスチス肺炎などの感染症を,発症から半年以降の回復期には橋本病,1型糖尿病,円形脱毛症,白斑などの自己免疫疾患を発症することがある。時に生命を脅かすこともあるため,早期診断および治療介入に加え,長期的な経過観察が重要とされる。
DIHSの診断基準を表1に示す。発症までの原因薬の内服期間は2~6週であることが多い。発症早期には特異的な臨床所見に乏しく,粟粒大から半米粒大程度の小型丘疹や紅斑を散在性に認めるが,経過とともに紅皮症へと進展することもある。発症から数日で顔面に浮腫性腫脹を認め,紅斑は眼囲を避けて出現し,眼周囲の蒼白が特徴的な所見とされる。また,口囲に生じる紅色丘疹,膿疱,小水疱,鱗屑も診断の手がかりとなる。粘膜には発赤,点状紫斑,軽度のびらんを伴うことがある。 HHV-6の再活性化は発症後約3週でみられることが多く,以下のいずれかにより判定される。①ペア血清においてHHV-6 IgG抗体価が4倍以上上昇する,②血清(または血漿)中にHHV-6 DNAが検出される,③末梢血単核球あるいは全血中のHHV-6 DNA量が明らかに増加する。ペア血清は,発症後14日以内と28日以降(21日以降で対応可能な場合も多い)の2時点で採取するのが確実である。なお,HHV-6以外にも,CMV,HHV-7,Epstein-Barrウイルスなどの再活性化を認めることがある1)。 本診断基準の問題は,発症早期に確定診断が困難である点にある。その理由として,「薬剤中止後2週間以上遷延する経過」や「発症2~3週後に生じるHHV-6の再活性化」が診断項目に含まれており,病初期には診断基準を満たさないこと,また,DIHSの原因薬がしばしば他の型の薬疹も引き起こすこと,発疹の形態学的特徴が一般的な薬疹と鑑別困難であることが挙げられる。 この課題を克服する目的で,様々なバイオマーカーが報告されている。中でも,2型ヘルパーTリンパ球に発現しているCCR4のリガンドであるthymus and activation-regulated chemokine(TARC)値は,DIHS急性期に顕著な高値を示すことが多く,発症初期における有用な診断指標となりうる2)。また,後ろ向き研究により,DIHS急性期のTARC値と,発熱期間,皮膚粘膜症状,腎障害,血小板減少との間に相関がみられたとの報告があり,TARCは重症度予測マーカーとしても有用である可能性が示唆されている3)。
表1 DIHSの診断基準
典型DIHS:1~7すべて 非典型DIHS:1~5すべて。ただし4に関しては,その他の重篤な臓器障害をもって代えることができる
(文献1 より作成)
DIHSの治療目標は,病初期にみられる全身症状および臓器障害の完全寛解を図ることに加え,経過中に発症しうるCMV感染症の予防および制御,さらには軽快後に発症する可能性のある自己免疫疾患などの続発症を予防し,発症時には迅速に対応することである。このため,病初期には,速やかに十分量の全身性ステロイドを投与し,炎症の制御を図ることが重要である。さらに,治療経過中は,ステロイドを原則として緩徐に減量することで,ウイルス再活性化に起因する臓器障害の発症を抑制することが「薬剤性過敏症症候群診療ガイドライン2023」1)において推奨されている。
本症例では,血清TARC値は9620pg/mLと高値を示した。カルバマゼピンの中止後も2週以上にわたり皮疹が遷延し,血清中からHHV-6 DNAが検出されたことから,最終的に典型DIHSと診断した。プレドニゾロン(PSL)30mg/日にて治療を開始したところ,速やかに皮疹および肝障害の改善が認められた。その後,PSLを漸減したが再燃はみられず,終診となった。
DIHSの急性期におけるTARC高値は,皮疹活動性と相関し,HHV-6再活性化に先行するため,早期診断の指標となる。
【文献】
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