プロトピック軟膏を
使用されている患者さんへ

監修:加藤則人先生
(京都府立医科大学大学院 医学研究科皮膚科学)

どうしてプロトピック軟膏を
使うの?

アトピー性皮膚炎の治療では、ステロイド外用薬やプロトピック軟膏で皮膚のかゆみや炎症をおさえて皮膚をよい状態に保つことが大切です。

プロトピック軟膏はステロイド外用薬とは別の薬です。身体の過剰な免疫反応をおさえてアトピー性皮膚炎のかゆみや炎症をおさえます。プロトピック軟膏の炎症を抑える効果はミディアム(マイルド)クラス~ストロングクラスのステロイド外用薬と同じくらいです。

プロトピック軟膏ってどんな
特徴があるの?

プロトピック軟膏の有効成分の粒は比較的大きいため、アトピー性皮膚炎の皮膚の状態の悪いところからは吸収されますが、正常な皮膚からはほとんど吸収されないと考えられています(下図)。

このため、プロトピック軟膏は「効くべきところには効いて、良くなったところ、もともと正常なところにはほとんど吸収されない」という特徴があります。
効果が出てくるのが少し遅く感じるかもしれませんが、医師の指示どおりに塗ってください。プロトピック軟膏は長い間使っても皮膚が薄くなったり、皮膚が乾燥してくる…などといったことは起こらないと考えられています。

プロトピック軟膏は使い始めに
刺激を感じるって本当?

使い始めには、プロトピック軟膏を塗ったところがヒリヒリしたりほてったり、かゆくなったりするなど刺激を感じることがあります。このため、「症状が悪くなった」「自分には合わない薬だ」と思う方もいます。ただし、使い始めの刺激はほとんどの方が感じる副作用で、珍しいものではありません。
塗り続けると1週間ほどで感じられなくなってきます。

使い始めはほとんどの人が刺激を感じます。
多くの場合、刺激は1週間ほどで感じられなくなります。「どうしても我慢できない…」という場合は医師に相談してください。

プロトピック軟膏を塗ると
どうして刺激を感じるの?

刺激を感じるのはプロトピック軟膏の有効成分であるタクロリムスが吸収されているためです。
タクロリムスは皮膚から吸収されると刺激やかゆみの元となる物質を作り出す神経(皮膚の知覚神経)に働きかけるため、その物質が大量に放出されます。このため、使い始めに刺激となって感じられると考えられています。
しかし、プロトピック軟膏を塗り続けることで刺激やかゆみの元となる物質がすべて放出されることと、刺激やかゆみを感じる神経が慣れて反応しなくなることで、プロトピック軟膏による刺激は徐々に感じられなくなり、それと同時にアトピー性皮膚炎によるかゆみもおさまってきます(下図)。

  • タクロリムスは刺激やかゆみの元となる物質を作り出す神経(皮膚の知覚神経)に働きかける。

  • 刺激やかゆみの元となる物質が大量に放出される。
    また、神経から脳へ「ヒリヒリとした痛み・かゆみ」が伝えられる。これらが刺激として感じられる。

  • プロトピック軟膏を塗り続けると刺激やかゆみの元となる物質がすべて放出されて出なくなる。
    また、神経も慣れて反応しなくなることにより、プロトピック軟膏による刺激は感じられなくなり、それと同時にアトピー性皮膚炎によるかゆみもおさまってくる。

プロトピック軟膏がかゆみの元となる物質を放出させる過程が刺激を感じる理由と考えられています。刺激やかゆみの元となる物質がすべて放出されて、刺激やかゆみを感じる神経が慣れて反応しなくなったら、刺激も感じられなくなり、それと同時にアトピー性皮膚炎によるかゆみもおさまってきます。

刺激を防ぐ方法はないの?

  • ○ 炎症がある程度おさまっている状態からプロトピック軟膏を使い始めると刺激を感じにくいようです。
    まずはステロイド外用薬でジュクジュクした状態を治してからプロトピック軟膏を使い始めます。

このような上のような状態の皮膚にプロトピック軟膏を塗ると刺激を感じやすいので、まずはステロイド外用薬を使います。

写真提供:京都府立医科大学大学院医学研究科皮膚科学 教授 加藤 則人 先生
  • ○ 初めてプロトピック軟膏を使うときにいきなり広い範囲に塗ると刺激を強く感じることがあります。
    使い始めは狭い範囲から開始して、刺激に慣れてきたら徐々に塗る範囲を拡げていくなどの方法があります。
  • ○ お風呂上りなど身体がほてった状態で塗ると刺激を感じやすいので、お風呂上りはほてりがとれてから塗りましょう。
  • ○ 保湿剤を先に塗ってからプロトピック軟膏を塗ると刺激を感じにくいという報告があります。
  • ○ 塗ったところを冷やしたり、飲み薬を併用すると刺激がおさえられるという報告があります。飲み薬については医師に相談してください。

塗った後、日光に当たったり熱いシャワーを浴びたりすると刺激を感じることがあります。また、塗るのをやめた後、日にちをあけて再開すると刺激がぶり返すことがあります。

プロトピック軟膏の使用による刺激は長続きするものではありませんが、どうしても我慢できない場合や、プロトピック軟膏の使用によって刺激以外の気になる症状が出てきた場合は、使用を一旦中止して医師に相談してください。

プロトピック軟膏はどういう
状態の皮膚に塗ればいいの?

赤みや湿疹があまり強くなく、触るとざらざらしている下の写真のような状態の皮膚に塗ってください。

  • 赤みや湿疹はあるものの、ジュクジュクはしていない。

  • 赤みはないが、触るとまだざらざらした状態。

  • 触るとザラザラ、ブツブツ、皮膚の内側では炎症が起こっています。

写真提供:京都府立医科大学大学院医学研究科皮膚科学 教授 加藤 則人 先生

  • ○ 自分で「もう治ったかな?」と判断して治療を中断してしまうと、炎症の火種が大きくなってすぐぶり返してしまうかもしれません。
    医師から指示された用法・用量をしっかり守って治療を続けることがよい状態を長く保つ秘訣です。
  • ○ 使用中に炎症がひどくなった場合は、塗る回数を増やす(1日2回まで)、早めに受診するなどの対処が必要です。対処方法については医師に相談してください。

下の写真のような状態の皮膚には塗らないでください。

  • 炎症が強く、ジュクジュクした状態。このような状態ではまずはステロイド外用薬で炎症を抑えることが必要です。

  • かき壊してしまったところ。このような状態ではまずはステロイド外用薬で炎症を抑えることが必要です。

  • 細菌やウイルスなど感染が起こっているところ。
    このような状態では感染の治療が必要なので受診してください。

写真提供:京都府立医科大学大学院医学研究科皮膚科学 教授 加藤 則人 先生
  • ○プロトピック軟膏をジュクジュクしたところ、状態の悪い湿疹やかき壊してしまったところに塗ると刺激を強く感じることがあります。
  • ○とびひやヘルペスなど、感染が起こっているところへは塗らないでください。

プロトピック軟膏はどう塗ればいいの?

医師に指示された使い方にしたがって塗ってください。

塗る量のめやす

プロトピック軟膏は、成人の人差し指の先端から1つ目の関節の長さまで出した量(1フィンガーティップユニット:1FTU)で成人の手の面積約1枚分に塗ることができます。

成人の手の面積約2枚分に塗るのに必要な量

塗り方

湿疹のある部分を中心に、症状のあるところにやさしく塗り伸ばしてください。

身体のパーツ別:塗る量のめやす

プロトピック軟膏0.1%

  • ○おとなの顔面
    1回2FTU
    1日2回、1週間使用でチューブ1.5本
  • ○おとなの首
    1回2FTU
    (首の前面も背面も塗った場合)
    1日2回、1週間使用でチューブ1.5本

上記のめやすは顔や首の全体にまんべんなく塗り伸ばすときに必要な量です。症状や医師の指示に応じて調節してください。

プロトピック軟膏0.03%小児用

  • お子さんに塗る場合は医師に指示された使用の上限量内で調節してください。

プロトピック軟膏0.1%は1日の使用の上限量が「16歳以上は1回5g(=1本)まで、1日2回まで」と決められています。
プロトピック軟膏0.03%小児用は年齢(体重)区分により使用の上限量が決められています。
医師に指示された量を守って使ってください。

プロトピック軟膏はいつまで塗ればいいの?

「見た目もきれいになってきたし、かゆみもなくなってきた。薬はまだ使い切ってないけどそろそろ塗るのをやめようかな?べたつくのも嫌だし…」

気持ちはとてもよくわかります。面倒だしべたつくのは嫌ですよね。でも、見た目には治っているように見えても、皮膚の下では炎症の火種がくすぶっている可能性があります。この状態で塗るのをやめてしまうとすぐぶり返してしまうかもしれません。炎症の火種が消えた状態を保つことが大切です。皮膚がどのような状態になるまで薬を塗り続けるか、どうなったら塗る回数を減らすか、など塗り薬の使い方を医師から説明してもらい、その指示を守って続けるようにしましょう。

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