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スペシャルコラム
大槻先生インタビュー
大槻マミ太郎先生
(自治医科大学 副学長・特別教授)

これまで多くのアトピー性皮膚炎患者さんを診療されてきた大槻マミ太郎先生に、アトピー性皮膚炎の治療に取り組むうえで、患者さんにぜひ心に留めておいていただきたいことについてお伺いしました。

アトピー性皮膚炎の原因は「過剰な免疫反応」です

大槻先生
まず、アトピー性皮膚炎が起こる原因についてご理解いただきたいと思います。人の身体には、「免疫」といって、細菌やウイルスなど人の身体に害を及ぼすものが入ってきた際に、それらを退治する仕組みがあります。「免疫」は本来、人の身体にとって必要な、よい働きなのです。

ところが、何かのきっかけで、花粉やダニ、ホコリなど、本来なら反応する必要がないものにまで免疫が反応してしまうことがあります。アトピー性皮膚炎では、こうした過剰な免疫反応によって皮膚に炎症が起きているのです。
よって、アトピー性皮膚炎の炎症をコントロールするには、過剰な免疫反応を抑える必要があります。現在、アトピー性皮膚炎の治療薬で、過剰な免疫反応を抑える働きを持つ塗り薬には、タクロリムス軟膏とステロイド外用薬などがあります。

しっかりと治療を続けることが重要です

大槻先生
これらの塗り薬に対して、副作用が怖いとか、身体に悪いのではないかと、使用をためらう患者さんが少なからずいらっしゃいます。アトピー性皮膚炎は皮膚の炎症がおさまるまで、必要な量の薬を必要な期間、必要な部位に使い続ける必要があります。また、徐々に炎症がおさまり、見た目には症状がなくなっても、皮膚の奥で炎症がくすぶっていることがあります。ここで薬をやめてしまうと再び悪化する可能性があります。

患者さんの中には「薬を使ったのに良くならない」、「また悪化した」といった経験をしたために、「薬は効かない」、「治療してもムダ」などと考え、医師に不信

感を抱いて病院を変えたり、薬や治療そのものをやめたりする方もいらっしゃいます。しかしほとんどの場合、良くならない理由は薬が効かないからではなく、炎症を完全にコントロールできるだけの十分な治療を行えていないからなのです。特にステロイド外用薬は適切な量をしっかりと塗る必要がありますが、使用量、とくに1回に塗る量が足りていない患者さんが多いのが現状です。10歳ぐらいのお子さんで症状がほぼ全身に及んでいる場合、1回に10〜15g程度のステロイド外用薬を必要とします。親御さんはその量を聞いて驚かれますが、数日間しっかりと塗ることで症状は改善し、1回の使用量を減らしたり、塗らない日を設けたりしていくことができますので、副作用が心配になるほどの量を塗り続けるわけではありません。

医師は副作用に注意しながら、それぞれの患者さんに必要な治療を選択しています。自己判断で薬の量を減らしたり、治療をやめたりせず、医師と二人三脚で必要な治療を続けていただくことを切に願います。

塗り薬は1回の使用量を把握して、しっかりと塗ることが重要です

タクロリムス軟膏やステロイド外用薬などの塗り薬は、1回の使用量を把握して、しっかりと塗ることが重要ですので、私は患者さんに塗る量の目安をお伝えするようにしています。たとえば先ほどの例のように、ステロイド外用薬を1日1回10g塗る必要がある場合は5g入りのチューブ2本分、もし15gならチューブ3本分ですので、「1日にチューブ2本(あるいは3本)を1回でしっかりと使い切ってください」とお伝えしています。
塗り薬の使用量がわからない場合は、1回の使用量の目安を医師に確認されることをお勧めします。

タクロリムス軟膏についてよく知ってください

ステロイド外用薬とは異なる位置づけの薬

大槻先生
タクロリムス軟膏は「免疫抑制外用薬」に分類されます。「免疫抑制」と聞くと、「怖い薬」というイメージを持たれる方もいらっしゃると思いますが、タクロリムス軟膏は過剰な免疫反応を抑えて、免疫機能を調節する働きをしています。医師は患者さんの皮膚状態などを考えて処方していますので、いたずらに「怖い薬」と拒絶するのではなく、治療上のメリットにも目を向けていただきたいと思います。

タクロリムス軟膏の炎症を抑える強さは、ミディアムからストロングクラスのステロイド外用薬と同程度とされています1) 2)。また、タクロリムス軟膏はステロ

イド外用薬の長期使用でみられることがある皮膚萎縮(皮膚が薄く弱くなること)や毛細血管拡張(血管が網の目状に見えること)といった副作用はほとんどありません。そのため、アトピー性皮膚炎の長年にわたる治療によって、皮膚と皮膚がこすれやすい肘の内側や膝の裏側などに皮膚萎縮を起こしている場合でも、タクロリムス軟膏を使用することができます。

アトピー性皮膚炎が長期にわたる治療やケアが必要な疾患であることを考えると、タクロリムス軟膏があることは、患者さんにとって大いにメリットのあることだと考えています。

1) Reitamo S , et al. : J Allergy Clin Immunol 109(3) , 539 (2002)
2) FK506軟膏研究会 : 西日皮膚 59(6) , 870 (1997)

1) Reitamo S , et al. : J Allergy Clin Immunol 109(3) , 539 (2002)
2) FK506軟膏研究会 : 西日皮膚 59(6) , 870 (1997)

刺激感について

大槻先生
タクロリムス軟膏を塗った後に、ピリピリする、ほてる、痛い、といった刺激感を感じることがあります。刺激感は塗った直後だけでなく、入浴後や紫外線を浴びた後、熱いものを食べたり飲んだりした後など、さまざまなタイミングで起こります。もし患者さんがタクロリムス軟膏の刺激について知識がない場合、「何か顔がほてる…、体調が悪いのかな…」などと余計な心配を与えてしまいますので、
タクロリムス軟膏を塗った後に、ピリピリする、ほてる、痛い、といった刺激感を感じることがあります。刺激感は塗った直後だけでなく、入浴後や紫外線を浴びた後、熱いものを食べたり飲んだりした後など、さまざまなタイミングで起こります。もし患者さんがタクロリムス軟膏の刺激について知識がない場合、「何か顔がほてる…、体調が悪いのかな…」などと余計な心配を与えてしまいますので、私は必ず時間をかけて説明しています。この刺激感は炎症がおさまるにつれて徐々に感じなくなってきます。数日経過しても刺激感がなくならない場合は、医師に相談していただくのがよいと思います。

また、顔には刺激感が強くて使えないという方もいらっしゃいます。その場合は、まず首にだけ試してもらっています。なぜなら、首は顔よりも刺激感が比較的弱いため継続して使うことができ、刺激感が徐々におさまっていくことが実感できるからです。患者さんにとって、首の症状は見た目にも非常に気になりますので、「首がこれだけきれいになったのだから、今度は顔にも使ってみよう」と、タクロリムス軟膏での治療に、ひいてはアトピー性皮膚炎の治療全般に前向きに取り組んでいただけるようになった患者さんを数多く経験しています。

アトピー性皮膚炎の患者さんは、疾患や治療についてよく勉強されています。そのため、治療や薬に対していろいろな疑問や先入観を持たれていることがあります。私は、必ず自身に生じた皮膚炎(原因は問いません)に塗って試した薬を処方するようにしています。タクロリムス軟膏の刺激感や効果のあらわれ方についても、「どのタイミングで、どのようになり、どのような経過をたどるか」を私自身の経験を通して伝えていますので、患者さんには信頼を寄せていただくとともに、納得して治療に取り組んでいただいています。
私は必ず時間をかけて説明しています。この刺激感は炎症がおさまるにつれて徐々に感じなくなってきます。数日経過しても刺激感がなくならない場合は、医師に相談していただくのがよいと思います。
また、顔には刺激感が強くて使えないという方もいらっしゃいます。その場合は、まず首にだけ試してもらっています。なぜなら、首は顔よりも刺激感が比較的弱いため継続して使うことができ、刺激感が徐々におさまっていくことが実感できるからです。患者さんにとって、首の症状は見た目にも非常に気になりますので、「首がこれだけきれいになったのだから、今度は顔にも使ってみよう」と、タクロリムス軟膏での治療に、ひいてはアトピー性皮膚炎の治療全般に前向きに取り組んでいただけるようになった患者さんを数多く経験しています。

アトピー性皮膚炎の患者さんは、疾患や治療についてよく勉強されています。そのため、治療や薬に対していろいろな疑問や先入観を持たれていることがあります。私は、必ず自身に生じた皮膚炎(原因は問いません)に塗って試した薬を処方するようにしています。タクロリムス軟膏の刺激感や効果のあらわれ方についても、「どのタイミングで、どのようになり、どのような経過をたどるか」を私自身の経験を通して伝えていますので、患者さんには信頼を寄せていただくとともに、納得して治療に取り組んでいただいています。

さいごに

大槻先生
アトピー性皮膚炎は、いつまでも同じ治療を続けるわけではありません。症状が良くなれば、ステロイド外用薬の量を減らしたり、間隔を空けたり、ランクを下げたり、保湿剤に切り替えたりと、治療を変更していきます。また症状が悪化すれば、逆に強い治療に変更していきます。治療していく上で疑問や心配な点がありましたら、その都度医師に相談しながら治療に取り組んでいただければと思います。

アトピー性皮膚炎の患者さんは、長年この疾患・症状と闘い続け、いろいろな思いや葛藤を抱えていらっしゃると思います。私はそれらの思いや葛藤を理解してくれる医師、ご自身の性格を理解してくれる医師が、患者さんにとって「信頼できる医師」なのではないかと考えます。そのような医師に皆さんが出会い、より治療に前向きに取り組んでいただくことを願うとともに、私たち医師も、患者さんを知ることによって信頼関係を築くスキルを高めていかなければならないと考えています。
アトピー性皮膚炎は、いつまでも同じ治療を続けるわけではありません。症状が良くなれば、ステロイド外用薬の量を減らしたり、間隔を空けたり、ランクを下げたり、保湿剤に切り替えたりと、治療を変更していきます。また症状が悪化すれば、逆に強い治療に変更していきます。治療していく上で疑問や心配な点がありましたら、その都度医師に相談しながら治療に取り組んでいただければと

思います。アトピー性皮膚炎の患者さんは、長年この疾患・症状と闘い続け、いろいろな思いや葛藤を抱えていらっしゃると思います。私はそれらの思いや葛藤を理解してくれる医師、ご自身の性格を理解してくれる医師が、患者さんにとって「信頼できる医師」なのではないかと考えます。そのような医師に皆さんが出会い、より治療に前向きに取り組んでいただくことを願うとともに、私たち医師も、患者さんを知ることによって信頼関係を築くスキルを高めていかなければならないと考えています。
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