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正しい治療で症状をコントロール アテンションマーク 治療方法について 監修:中原剛士先生
(九州大学大学院医学研究院 皮膚科学分野 教授)

女性 スキンケア

アトピー性皮膚炎におけるスキンケア

乾燥を防ぎ、皮膚のバリア機能を正常に保つためのスキンケアは、アトピー性皮膚炎の治療のひとつとされています。また、アトピー性皮膚炎は、症状の改善と悪化をくり返すことがあるため、症状が重いときだけでなく、軽いときにも、スキンケアを行うことが大切です。
スキンケアの基本は、「清潔な皮膚を保つこと」と「保湿で皮膚のうるおいを保つこと」です。
この2つを正しく行い、皮膚のバリア機能をしっかりと保持しましょう。

皮膚の清潔について

アトピー性皮膚炎の炎症部位からは、よく黄色ブドウ球菌という細菌が検出されます。この菌がひっかいてできた傷やバリア機能が低下した皮膚から侵入することがあるので、入浴やシャワーなどで洗い流す必要があります。
また、炎症の引き金となるような刺激物質を洗い流すという意味からも、皮膚を清潔に保つことは重要です。ただし、以下の点に注意しましょう。
シャワーを浴びる男性

【清潔の注意点】

熱いお湯や長風呂はかゆくなることがあるため避けましょう。 お湯の温度は、皮膚バリア機能回復の至適温度とされる38~40℃がよいといわれています。 タオルなどでゴシゴシこすらず、よく泡立てた石鹸でやさしく洗いましょう。また、石鹸が残らないように十分に洗い流してください。 使用する石鹸は、低刺激性・低アレルギー性のものや、着色料や香料などの添加物が少ないもの、刺激がなく使用感がよいものなどを選びましょう。 入浴後は速やかに保湿剤を塗って、皮膚の乾燥を防ぎましょう。
洗浄後、皮膚に軟膏が残る場合
軟膏は、石鹸で洗っても洗い残しがある場合があります。洗い残しが気になる部分は、オリブ油等を塗布すると取り除くことができます。
動画サムネイル

優しく皮膚を洗って清潔に

お子さまの身体を洗うときに
気をつけることをご存知ですか?
日常生活で気をつけるポイントをみる 白矢印

保湿について

保湿剤によるスキンケアは、アトピー性皮膚炎の症状があるときはもちろん、症状が落ち着いているときでも、日常的に行い、乾燥から皮膚を守ることが大切です。

保湿剤の役割

保湿剤は、皮膚の水分が逃げないように“ふた”をしたり、皮膚に水分を与えたりする役割を持っています。健康な皮膚には角層のバリア機能があり、水分の蒸発や外からの刺激を防いでいます。しかし、皮脂、天然保湿因子、角質細胞間脂質といった皮膚のうるおいを保つ物質が不足して皮膚が乾燥した状態(ドライスキン)になると、角層が剥がれてすき間ができ、外からの刺激を受けやすくなったり、体内から水分が出ていきやすくなります。健康な皮膚を守るため、季節に関係なく、保湿剤を塗ってスキンケアをしましょう。
健康な皮膚とドライスキン 健康な皮膚とドライスキン

保湿剤の選択

保湿剤にはいろいろな種類があるので、医師と相談して症状や好みなどに合わせて選ぶようにしてください。お子さまが嫌がらないものを選ぶことも重要です。

代表的な保湿剤の種類

●目的別

保湿を目的としたもの

ヘパリン類似物質製剤 角層内の水分を引きつけてうるおいを保つ力が強い。
尿素製剤 角層内の水分を引きつけたり、角層を柔らかくする作用がある。傷があるとしみることがあるので注意する。

保護を目的としたもの

白色ワセリン 油分が皮膚をおおって水分の蒸発を防ぐ。
亜鉛華軟膏 炎症を抑える作用がある。
その他 抗菌効果と炎症を抑える作用がある。
保湿を目的としたもの ヘパリン類似物質製剤 角層内の水分を引きつけてうるおいを保つ力が強い。
尿素製剤 角層内の水分を引きつけたり、角層を柔らかくする作用がある。傷があるとしみることがあるので注意する。
保護を目的としたもの 白色ワセリン 油分が皮膚をおおって水分の蒸発を防ぐ。
亜鉛華軟膏 炎症を抑える作用がある。
その他 抗菌効果と炎症を抑える作用がある。

●剤形別

軟膏

皮膚への刺激が他の剤形とくらべて少なく、皮膚を保護する力が強い。
しかし、塗った部分がテカったりベタベタしたりすることがある。

クリーム

軟膏とくらべてベタつき、テカリが少なく、衣服から出ている部分にも使いやすい。皮膚を保護する力は軟膏とローションの中間程度。

ローション

さっぱりした使い心地でベタつかないため、衣服から出ている部分にも使いやすい。広い範囲や、髪の毛のある頭皮に使う場合も塗りやすい。

フォーム

泡となって出てくるため、広い範囲に素早く塗ることができる。
また、さっぱりとした使い心地でベタつかない。
軟膏 皮膚への刺激が他の剤形とくらべて少なく、皮膚を保護する力が強い。
しかし、塗った部分がテカったりベタベタしたりすることがある。
クリーム 軟膏とくらべてベタつき、テカリが少なく、衣服から出ている部分にも使いやすい。
皮膚を保護する力は軟膏とローションの中間程度。
ローション さっぱりした使い心地でベタつかないため、衣服から出ている部分にも使いやすい。
広い範囲や、髪の毛のある頭皮に使う場合も塗りやすい。
フォーム 泡となって出てくるため、広い範囲に素早く塗ることができる。
また、さっぱりとした使い心地でベタつかない。

季節別選択

夏はさっぱりとした使用感のよいもの、冬は皮膚をおおう効果に優れたものがよいでしょう。
季節別選択イメージ

塗る場所

塗る範囲が広い背中などは塗り広げやすいフォームやローション、また、髪の毛のある頭皮もさっぱりとした使い心地がよいフォームやローションを選ぶとよいでしょう。
薬を塗る範囲

塗る時間帯

朝の忙しい時間帯は短時間で塗ることができる
フォームやローション、時間に余裕があるときは
軟膏やクリームを選ぶとよいでしょう。
薬を塗る時間帯

使用量の目安

軟膏やクリームは、人差し指の先端から1つ目の関節の長さまで出した量(1 FTU:1フィンガーチップユニット)が0.5gに相当します。ローションの場合は1円玉を目安にしましょう。
この量で、成人の手の面積約2枚分に塗れます。
フォームは製品のキャップ大の大きさに噴出した泡の量で成人の手の面積約4枚分に塗れます。
軟膏・クリーム
軟膏・クリーム
軟膏・クリーム
軟膏・クリームは
人差し指の先端から
1つ目の関節まで
ローション
ローション
ローション
ローションでは
1円玉大で
青矢印
成人の手 成人の手
成人の手の面積約2枚分に塗れます。
フォーム
フォーム
フォームは
製品のキャップ大
の大きさに噴出した
泡の量で
青矢印
2人の成人の手 2人の成人の手
成人の手の面積約4枚分に塗れます。
腕にティッシュが付く様子

ティッシュが付く、
テカる程度も目安です。

ティッシュが皮膚に付く、または皮膚がテカる程度も使用量の目安になります。
※ただし、保湿剤の種類によって異なる場合があります。
部位・年齢別の使用量について
詳しくみる 白矢印

塗り方のコツ

薬を塗る前には、手を清潔にしましょう。
手のひらを使って、こすらずに、優しく塗り広げます。
ゴシゴシ強くすりこむと、皮膚を傷つけバリア機能を低下させることになります。
入浴後は、できるだけ早く保湿しましょう。
通常、皮膚の水分量は、入浴後10分程度で蒸発して入浴前の水分量に戻りますが、
アトピー性皮膚炎の人は、皮膚の皮脂や角質層の保湿成分等が流れ出てしまい、
入浴前より乾燥してしまいます。

保湿剤の塗り方を見る

保湿はとても大切なスキンケアです。
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