保護者の方に知っておいてほしいこと

子どものアトピー性皮膚炎

監修:二村昌樹先生
(国立病院機構名古屋医療センター小児科医長・
アレルギー科医長)

年代によって変化
する症状や部位

年代別の症状の特徴

アトピー性皮膚炎では、かゆみを伴う湿疹が良くなったり悪くなったりをくり返します。
くり返す期間が1歳未満の乳児では2ヵ月以上 、それ以上の年齢では6ヵ月以上の場合に、症状や湿疹部位から総合的にアトピー性皮膚炎と診断されます。
子どものアトピー性皮膚炎は、2歳未満の乳幼児期から学童期に発症することが多く、成長するにつれて症状はよくなる傾向がみられますが、成人になるまで再発をくり返し症状が続くこともあります。
かゆみのある湿疹が身体の左右対称にあらわれるのが特徴で、症状が出やすい部位は年齢によって変わります。

乳児期(2歳未満)
頬を中心とした顔/頭や首のまわり

ケアネット社webサイトより引用

頬を中心とした顔や頭がかさかさし、赤くなります。
かゆみがある場合、かくことで皮膚が傷つけられ、次第にジクジクとした湿疹がみられるようになります。
特に、離乳期には口のまわりや頬によくみられます。
ひどくなると、首のまわり、胸・背中、手足にも広がります。

幼児期~学童期(2歳~12歳)
首のまわり/わきの下/ひじの関節(内側)/ひざの関節(裏側)/手首・足首

ケアネット社webサイトより引用

顔の湿疹は減りますが、首やひじの内側やひざの裏側などの関節部分、手首などに症状があらわれるようになります。
かゆくてくり返しかいてしまうため、皮膚がゴワゴワと硬くなります (苔癬化<たいせんか>と呼ばれます)。

思春期・成人期(13歳以上)
主に顔や首のまわり、胸・背中などの上半身に発疹が強くみられるようになります。

ケアネット社webサイトより引用

アトピー性皮膚炎は良くなったり、悪くなったりをくり返します。症状が少し良くなったからといって塗り薬を自己判断で中断せずに医師の指示にしたがって、継続しましょう。
アトピー性皮膚炎では、皮膚の乾燥を防ぐための保湿剤・保護剤のほか、かゆみや炎症を抑えるためのステロイドの塗り薬やカルシニューリン阻害の塗り薬などの抗炎症外用薬を塗ります。

塗り薬:炎症やかゆみを抑える塗り
薬について詳しくみる

スキンケアの方法・
塗り薬の塗り方

スキンケアの方法

アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア機能が低下し、かさかさと肌が乾燥しやすい状態になっています。
そのため、皮膚を洗って清潔に保ったうえで、水分を保持したり水分の蒸発を抑える保湿剤や、皮膚の外部からの刺激などを防ぐ保護剤などを塗って皮膚のバリア機能を補うスキンケアが大切です。

スキンケアを行うポイント

  • 1)皮膚を清潔に保ちましょう
    スキンケアでは、皮膚についた汚れやアレルゲン(アレルギーの原因)、汗、黄色ブドウ球菌などを落として清潔にすることが大切です。
  • 2)お風呂やシャワーのあとは、速やかに保湿剤・保護剤を塗りましょう
    お風呂からあがったら、速やかに保湿剤を塗り、皮膚の乾燥を防ぎます。

適切な洗い方のコツ

  • ○ よだれや汗は、できるだけ早く洗い流すか、濡れた柔らかいタオルなどでふき取りましょう。
  • ○ お湯の温度は、皮膚バリア機能を保つために38~40℃がよいといわれています。
  • ○ 石鹸・洗浄剤に含有される色素や香料などの添加剤は、皮膚への刺激となる可能性もあります。
  • ○ 石鹸・洗浄剤は、低刺激・低アレルギー性のものや、色素や香料などの添加物が少ないもの、刺激がなく使用感がよいものを使用しましょう。また、洗浄後に乾燥が強いものも避けましょう。
  • ○ 石鹸・洗浄剤は、よく泡立てて皮膚を傷つけることがないようにして、皮膚の汚れを落としましょう。
    また、石鹸・洗浄剤が皮膚に残らないように十分にすすいでください。
スキンケアについて詳しくみる

塗り方のポイント

ステロイドの塗り薬・保湿剤

できるだけ1日2回(朝・夕)塗りましょう。
ステロイドの塗り薬も保湿剤も、入浴後早めに塗ることが効果的とされています。それぞれの薬について塗る場所や回数などは、医師の指示にしたがうようにしてください。

どの薬も塗る量が不十分だと、期待される薬の効果が得られません。使用量についても、医師の指示にしたがって、十分な量をしっかりと塗りましょう。

1回に塗る量の目安 にはFTU(フィンガーチップユニット)という単位を用います。
チューブの口径が5mm程度の場合、成人の人差し指の先端から1つ目の関節の長さまで出した量(約0.5g)を1FTUといいます。 1FTUが成人の手の面積約2枚分に塗れる量に相当し、塗り薬の適量とされています。

ステロイド・保湿剤の外用量の目安(FTU)

1FTU=約0.5g※1

1FTUを成人の手の面積約2枚分の広さに塗るのが適量

※1 外用薬のチューブの口径、開けた穴の大きさなどによって量が異なる場合もあります。
  • 軟膏・クリームの場合

  • ローションの場合

  • フォームの場合

    製品のキャップ大の大きさに噴出した泡の量で2FTUとなります。(成人の手の面積約4枚分に塗るのが適量)

使用量FTU (1FTU=0.5g:口径5mm チューブの場合)

日本アレルギー学会・日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」アレルギー 2021;70:1257-1342より改変
使用量の目安について
詳しくみる

カルシニューリン阻害の塗り薬

使用量の目安

1回使用量 2FTU(0.5g)≒
成人の手の面積約2枚分

成人を1としたときの比率で算出した。
日本アレルギー学会・日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」アレルギー2021;70:1257-1342をもとに作成。

日常生活で気をつける
ポイント

アトピー性皮膚炎を悪化させる原因にはさまざまなものがあり、人によって原因は異なります。それぞれの原因を抑えるためにも、日常生活では以下のポイントに気をつけましょう。

住環境

  • ○室内を清潔にし、適度な温度と湿度を保つ
  • ○肌に触れるふとんやシーツ、枕カバーなども清潔に保つ
  • ○ぬいぐるみはベッドには置かないようにする
  • ○ペットは洗って清潔を保つ。寝室には入れない
  • ○帰宅後、室内に入る前に衣類に付いた花粉を払い落してから室内に入るようにする

衣服

  • ○チクチク、ゴワゴワする肌着や衣類(化学繊維、ウールなど)は避ける
  • ○新品の肌着は、洗濯してから着る

食事

  • ○特定の食べ物によるアトピー性皮膚炎の悪化が気になるときは、医師へ相談する

肌をかかない

  • ○症状がひどくなるので、できるだけかかないようにする
  • ○過度な対策は子どもに悪影響を与えることもあるので、かゆみがひどいときは医師に相談する
  • ○両手を使った遊びをさせるなどして、かくことから気をそらせる

スキンケア

  • ○日焼けや汗で症状が悪化しやすくなるため、汗をかいたら濡れたタオルでふいたり、シャワーを浴びて、汗を洗い流す
  • ○外出時には日焼け止めを使用したり、帽子をかぶり紫外線を防ぐ
  • ○乾燥が強いときは、保湿剤を使って保湿する

その他のかゆみ対策

  • ○石鹸やシャンプー・リンスをしっかり流し、すすぎ残しがないようにする
  • ○皮膚が傷つかないように、爪は短く切る
  • ○寝ている間は、手や爪で直接かかないように、長袖、長ズボンを着るなど工夫をする
  • ○髪の毛先が触れてかゆみが生じるときは、髪の毛は短く切ったり、束ねたりする
  • ○かゆいときは、その部分を冷たいタオルなどで冷やす
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