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第2回:すぐに試せる問診ハック②

監修:矢吹拓先生(国立病院機構栃木医療センター内科部長)

毎日の診療がちょっとラクになる、そんな診療のライフハックが診療ハックです。膨大な経験を積まれてきた先生方の「臨床の知恵」、すなわちハックを全6回にわたり連載形式でお届けします。前半はすぐに臨床に活かせる問診・診察のハック、後半は知っておくと一歩上のマネジメントスキルが身につくハックを厳選してご紹介します。

聞き方や伝え方の工夫を少し変えるだけでより精度の高い診察につながるだけでなく、問診自体がちょっとラクになります。第2回は「主訴の時系列を攻略する問診ハック」として、症状の持続期間・時系列を手際よく聞き出す方法「患者さんが高齢で病歴が取れません」、持続的な症状を確認するときは「症状がなかった時間」がないか聞くの2つのハックをご紹介します。

症状の持続期間・時系列を手際よく聞き出す方法「患者さんが高齢で病歴が取れません」

執筆:北野 夕佳 先生

内科外来で85歳の発熱症例を対応しています。発熱、咳嗽、喀痰、咽頭痛、頭痛、腰背部痛、体重減少があることまではわかりましたが、時系列を聞くのに、このペースだと1時間くらいかかりそうです。

2コマ漫画(ビフォアアフター)

2コマ漫画(ビフォアアフター)

どんな診療ハックスキル?

問診に時間がかかりそうなときは、semi-closed questionで必要な情報を聴取する。

用意するもの・準備するもの

特になし。

実際の方法

問診〔病歴(history)〕が、臨床判断上で強力な武器であるのは、あらためていうまでもないと思います。上記のような高齢者ですと、鑑別疾患として「肺炎、結核、上気道炎、尿路感染症」、見逃したくないものとして「細菌性髄膜炎、椎体炎・椎間板炎」などが挙がると思います。検査技術の進んだ現代とはいえ、上記の鑑別をすべて一斉に評価することは困難です。
すなわち、病歴でテスト前確率を上げる・下げることが強力な武器になります。ですが、高齢の患者さんなどに「いつから咳が出ますか?」と聞くと、「えっと、〇〇の法事の前だから、先週の水曜日? いや違うな、金曜日?」「でもね、ヘルパーさんの日の次だったんですよ。手帳を見なくちゃ」と延々時間を取られて進みません。ここで「患者さんがうまく病歴を伝えられない人なので」と患者さん側の要因にしてしまい、問診をあきらめてしまう医師もいます。ですが、認知症がひどい場合などではなくて、ただ少し話が冗長な高齢者なら、こちらがうまく聞き出せばかなりの情報を得られますし、そのことで鑑別も絞ることができます。臨床がスピードアップするコツをお伝えします。
私がしているのは、以下です。「いつから咳が出ますか。この2~3日ですか、この2~3週間ですか、2~3か月ですか。だいたいでいいですからね」とsemi-closed questionで聞きます。そのことで、患者さんも「3日間か5日間かは正確じゃなくてもよくて、数日or数週or数か月という情報をこの医者は知りたいのだ」と理解してくれます。この聞き方で、情報がガンガン取れます。
上記を駆使して問診したら、冒頭のサンプル症例で並列だった「発熱、咳嗽、喀痰、咽頭痛、頭痛、腰背部痛、体重減少」が一変し、「発熱・咳嗽・喀痰は数日、咽頭痛・頭痛は数か月、腰背部痛・体重減少は数年」の情報が得られました。まずは肺炎疑いで評価介入する方針でよさそうですね。

ハックポイント

  • icon「咳が出だしたのはいつからですか」ではっきりしないときは、「数日、数週間、 数か月、数年のどれですか」とsemi-closed questionで聞く。
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持続的な症状を確認するときは「症状がなかった時間」がないか聞く

執筆:前野 哲博 先生

患者さんの訴える症状が連続性か、断続性かを確認することは、鑑別診断を考えるうえで非常に重要な情報です。ただ、患者さんに「その症状はずっと続いていましたか?」と聞いて「はい」と答えたにもかかわらず、よくよく聞いてみると、実際には断続性の症状だった、ということもよく経験します。そこでお勧めなのがこの方法です。

2コマ漫画(ビフォアアフター)

2コマ漫画(ビフォアアフター)

どんな診療ハックスキル?

「症状がなかった時間はありましたか?」と聞く。

用意するもの・準備するもの

特になし。

実際の方法

症状が持続的か、断続的かを確認することは、鑑別診断を考えるうえで重要です。断続的な症状であれば、可逆的な病因が考えられるため、(ケースバイケースではありますが)一般に悪性腫瘍や感染症、変性疾患などは考えにくく、安心して経過観察ができる可能性が高くなります。
外来などで問診を行う際には、症状が持続性かどうかはきちんと確認していると思うのですが、実際には断続性であっても、「ずっと症状がある」と答える患者さんは多いように思います。たとえば、以前私が経験したケースでは、「3日前からずっと頭が痛い」と訴えて受診した患者さんによく話を聴くと、症状は2秒の右後頭部痛が5回だけだった、ということがありました。この患者さんは、3日前に仕事中に2回、昨日は出勤中と昼休みに1回、今日は朝仕事中に1回ピリッとする痛みを自覚して、それを「ずっと痛い」という言葉で表現していたわけです。これは決して患者さんが意図的に嘘を言っているわけではなく、症状が出現するのは時々でも、日常生活の中で、何度もつらい症状を自覚せざるをえない状況は「ずっと続いている」からなんでしょうね。
そこで、病歴を確認するために私がよく用いているのは「症状がなかった時間はありましたか?」という質問です。本当に持続的であれば、この質問に対する答えは「いいえ」であるはずです。もしこれが「はい」であれば、症状がある時間とない時間がある、すなわち持続性ではないということですから、次に「一度症状が始まるとどれくらい続きますか」「そのエピソードはどれくらいに1回ありますか」「どんなときに症状が出現(消失)しますか」と質問を続けていって、症状の経過の全体像を明らかにしていきます。もし「症状がなかった時間はあるが、始まりと終わりははっきり言えない」場合は、「気がつくと症状があるが、何かほかのことに集中していると忘れている」状態である可能性が高く、MUS(medically unexplained symptoms)でよくみられる病歴です。
このように、患者さんが持続的な症状を訴えてきた場合は、「ずっと続くか」という質問に加えて「症状がない時間はあるか」という「ウラをとる」質問を必ずセットで聞くことにより、病歴をより正確に評価することができます。患者さんは、症状を自覚している時間に意識が向いていることが多いので、症状がない時間に意識を向ける質問を投げかけることで、病歴の「輪郭」をより明確に描き出すことができますので、ぜひ使ってみてください。

ハックポイント

  • icon持続的な症状を訴える患者には「症状がなかった時間はありましたか?」と聞く。
  • icon「いいえ」であれば持続的症状。「はい」であれば、持続時間、頻度、寛解増悪因子などを確認して、症状の経過を明らかにする。
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監修者より

今回の2本のハックは、「問診では“何を聞くか”だけでなく、“どの解像度で聞くか”が重要である」ということを教えてくれています。北野先生のsemi-closed questionは、その好例です。「いつからですか?」という問いは、高齢者診療ではしばしば曖昧な生活情報へ展開し、聞き取る側は時系列の迷子になります。そこで「数日・数週間・数か月のどれですか?」と、“診断に必要な粒度”を提示することで、問診は一気に整理されます。これは単なる時短術というよりも、「医師は何を知りたいのか」を患者さんと共有する技術なのだと思います。
一方、前野先生の「症状がなかった時間はありましたか?」は、病歴に“陰影”をつけるハックです。患者さんは症状があった瞬間を強く記憶するため、数秒の頭痛が数回でも「3日間ずっと痛い」と表現されることがあります。だからこそ、「症状がある時間」だけでなく、「なかった時間」に目を向けることで、病歴の輪郭が一気に鮮明になります。
今回の2つのハックに共通しているのは、患者さんの話を“修正”するのではなく、“整理しやすい形に変換する”という姿勢です。問診が上手な医師とは、たくさん質問する人ではなく、患者さんの頭の中にある情報を、一緒に整理できる人なのかもしれません。

監修

矢吹 拓 先生

国立病院機構栃木医療センター内科部長・診療管理部長

2004年群馬大卒。前橋赤十字病院にて臨床研修修了後、国立病院機構東京医療センター総合内科を経て、2011年より国立病院機構栃木医療センターに勤務。『総合診療』誌編集委員。 編著として『外来診療ドリル―診断&マネジメント力を鍛える200問』(2016)、『薬の上手な出し方&やめ方』(2020)、そして注目の新刊本『診療ハック―知って得する臨床スキル125』(2025)など多数。

執筆

北野 夕佳 先生

聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院救命救急センター 副センター長/聖マリアンナ医科大学救急医学 教授

1996年京大卒。同大病院や大阪赤十字病院での研修を経て、大阪赤十字病院ではチーフレジデントを務めた。その後京大大学院にて分子生物学に関連した基礎研究を行う。2004年に渡米、翌年ECFMG certificateを取得。米ヴァージニア・メイソン医療センターで内科レジデンシーを修了し、米国内科専門医(ABIM)を取得した。09年に帰国後、東北大病院高度救命救急センター助教に就任。11年聖マリアンナ医大救急医学助教、講師を経て、25年より現職。

執筆

前野 哲博 先生

筑波大学医学医療系地域医療教育学 教授/筑波大学附属病院総合診療科

1991年筑波大卒。河北総合病院で初期研修の後、筑波大病院総合医コース修了。川崎医大、筑波メディカルセンター病院などを経て、2000年筑波大講師、09年より現職、18年4月に同大病院副病院長。総合診療科で診療・教育に従事する傍ら、地域医療教育学分野の研究にも取り組む。
編著書に『帰してはいけない外来患者 第2版』(2021)、『医療職のための症状聞き方ガイド』(2019)など多数。

クレジット

本記事の内容は『診療ハック―知って得する臨床スキル125』矢吹 拓 編(医学書院、2025)を基に再構成したものです。

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