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乾癬ってこんな病気

乾癬の種類と症状

[監修] 東京慈恵会医科大学 名誉教授 中川 秀己 先生

1. 尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)

尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)の症状 “尋常”とは普通という意味で、乾癬患者さん全体の約70〜80%が尋常性乾癬です。

皮膚が赤くなる[紅斑(こうはん)]、皮膚が盛り上がる[浸潤・肥厚(しんじゅん・ひこう)]、銀白色のフケのようなもの[鱗屑(りんせつ)]が付着しはがれ落ちるなどの症状がみられます。

頭皮や髪の生え際、ひじ、ひざ、おしり、太もも、すねなど外部からの刺激を受けやすい部位でよくみられますが、それ以外の部位にも発疹が出る場合があります。最初は直径数mm程度1)の小さな発疹から始まり、次第に乾癬特有の赤く盛り上がった発疹となります。乾癬では症状が出ていない皮膚に引っ掻くなどの刺激を与えると、その刺激をきっかけに新たな発疹が現れることがあります。これをケブネル現象といい、衣服や眼鏡、ベルトなどの刺激によっても起こることがあります。衣服は柔らかい素材やゆったりしたサイズのものを選び、皮膚を掻いたりしないようにしましょう。
また、乾癬患者さんの40〜80%は爪にも乾癬の症状がみられ2,3)、爪が先端から浮き上がって白くみえたり、爪の表面にポツポツとした凹凸ができたりします。
かゆみは約50%の患者さんでみられ4)、かゆみの程度は人によりさまざまです。

2. 乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)

乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)の症状 関節症性乾癬(かんせつしょうせいかんせん)とも呼ばれます。
乾癬患者さんの中には、手足の関節や、首から背骨、アキレス腱、足の裏などに痛みや、腫れ、こわばりを訴える方もいます。このように、乾癬によって関節に炎症が起こった状態を乾癬性関節炎といい、乾癬患者さんの約15%に合併するといわれています5)。症状は関節リウマチに似ていますが、異なる病気です。

乾癬性関節炎の多くは関節に症状が出る前、または出ると同時に乾癬の皮膚症状が現れます。しかし、皮膚症状が遅れて現れることもあるので気になる症状があれば、主治医に相談することが大切です。

乾癬性関節炎の症状の現れ方

乾癬性関節炎の症状の現れ方の種類と割合

Yamamoto T et al.:J Dermatol 43(10);1193-1196, 2016より作図

乾癬性関節炎では、腫れ、変形、痛みなどの症状が手や足の指先の関節に現れることが多いのですが、背中や首がこわばったり、骨盤が痛んで歩きにくくなったり、かかとの後ろのアキレス腱や足の裏に痛みが出たりすることもあります。
また、爪に乾癬の症状がある場合は、関節炎を起こしやすいといわれています。

乾癬性関節炎は、患者さん自身が乾癬の皮膚症状と関節の症状が関係していることに気づきにくいため、見過ごされることがあります。関節に症状が出ると、日常生活に支障を生じ、関節の症状の治療が遅れると重症化しやすく、急速に関節症状が進行し関節が変形し戻らなくなることがあるため、早期に発見し、少しでも早く治療を開始することが重要とされています。
現在、乾癬性関節炎を見つけるための質問票が開発されており、早期発見に活用されています。その一つにPASE(ペース)と呼ばれる質問票があります。
Psoriatic Arthritis Screening and Evaluation:乾癬性関節炎のスクリーニングと評価)
下の「PASEはこちら」ボタンをクリックすると質問票が表示されます。それぞれの質問の当てはまるところにチェックを入れ、総PASEスコアが37点以上の場合は、主治医に相談してください。

PASEはこちら

3. 滴状乾癬(てきじょうかんせん)

滴状乾癬(てきじょうかんせん)の症状 直径0.5〜2cm程度6)の小さな水滴大の発疹が全身に現れるのが特徴です。小児や若年者に多く、乾癬患者さんの約4%7)に発症します。風邪などの感染症がきっかけで起こることがあり、特に扁桃腺炎(へんとうせんえん)が誘因となることが多いといわれています。
きっかけとなった感染症を治療することで症状は治まりますが、まれに何度も再発を繰り返し、尋常性乾癬に移行することもあります。

4. 乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)

乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)の症状 尋常性乾癬が全身に広がって、全身の90%以上の皮膚が赤みを帯び8)、細かい鱗屑がはがれ落ちる状態(紅皮症)を乾癬性紅皮症と呼び、発熱や悪寒、倦怠感などを伴います。紅皮症の誘因は皮膚炎、感染症、薬剤などいくつかあります。
発症率は乾癬患者さん全体の約1%9)で、乾癬の治療が不十分だった場合や科学的根拠のない治療を行った場合、もしくは治療を行わなかった場合などに発症することがあります。

5. 膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)

膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)の症状 乾癬のうち、発熱や皮膚の発赤とともに、膿(うみ)の入った球状の袋[膿疱(のうほう)]が多数現れる疾患を膿疱性乾癬といいます。この膿疱には細菌が含まれていないので周りの人にうつることはありません。

発疹が手のひらや足の裏、指先など一部だけにみられる限局型と、急な発熱とともに全身に発赤と膿疱が現れる汎発性膿疱性乾癬(はんぱつせいのうほうせいかんせん)があります。汎発性膿疱性乾癬の発症頻度はまれですが、重症疾患でほとんどの患者さんは入院治療が必要です。汎発性膿疱性乾癬は厚生労働省の希少難治性疾患(指定難病)に指定されており、認定基準を満たすと医療費助成が受けられます。

  • 1)瀧川 雅浩、白濱 茂穂:これでわかる乾癬の新しい治療, 9, 南江堂, 2011
  • 2)Augustin M et al.:Br J Dermatol 163(3);580-585, 2010
  • 3)Manhart R, Rich P:Clin Exp Rheumatol 33(Suppl 93);S7-13, 2015
  • 4)古江 増隆:ここまでわかった 乾癬の病態と治療, 88, 中山書店, 2012
  • 5)Ohara Y et al.:J Rheumatol 42(8);1439-1442, 2015
  • 6)瀧川 雅浩、白濱 茂穂:これでわかる乾癬の新しい治療, 14, 南江堂, 2011
  • 7)Takahashi H et al.:J Dermatol 38(12);1125-1129, 2011
  • 8)佐伯 秀久:日本臨牀 76(1);41-45, 2018
  • 9)古江 増隆:ここまでわかった 乾癬の病態と治療, 109, 中山書店, 2012