乾癬に関連する病気（合併症）

[監修] 東京慈恵会医科大学名誉教授中川秀己先生

乾癬に関連する病気（合併症）って？
どうして、さまざまな病気が合併するの？
全身の病気を防ぐためにも、乾癬と上手に付き合いましょう

1. 乾癬に関連する病気（合併症）って？

乾癬は皮膚症状が注目されがちですが、近年、皮膚だけでなく全身のさまざまな部位で炎症をきたす「全身性の炎症性疾患」であることがわかってきました^1、2)。乾癬の方では、爪の症状や関節炎のほか、肥満症、糖尿病、高血圧、メタボリックシンドロームなどにかかるリスクが高いことが知られています^1、2)。

乾癬患者さんの6～10人に1人が合併する
乾癬性関節炎（かんせんせいかんせつえん）³⁾

乾癬性関節炎は、乾癬患者さんの6～10人に1人が合併する炎症性の関節炎です。手先や足先に近い関節に腫れや変形、痛みといった症状があらわれます。腰やおしりに症状を生じることもあります。
多くは乾癬の皮膚症状に続いて発症しますが、関節症状が先に発症したり、皮膚症状と関節炎が同時に発症することもあります。関節炎が進行すると関節が変形して、生活に支障をきたす可能性が大きいため、早期に症状を見つけて関節炎に有効な治療を始めることが大切です。

乾癬性関節炎の症状

乾癬性関節炎を見つけるための質問票PASEはこちら

乾癬患者さんが合併しやすい全身の病気とは？

乾癬患者さんの体のなかで起こる慢性的な炎症は、全身のさまざまな部位に生じます。2006年から2008年に国内で行われた研究では、乾癬患者さんの2.5人に1人（39.7%）が肥満症であることが報告されました。また、脂質異常症（35.8%）、高血圧（27.2%）、糖尿病（18.5%）、心筋梗塞、狭心症などの虚血性心疾患（12.6%）の発症率も高いことが明らかとなっています⁴⁾。

乾癬患者さんが合併しやすい全身の病気

文献5）より作成

2. どうして、さまざまな病気が合併するの？

乾癬の発症には、免疫機能の異常が関わっています⁵⁾。免疫機能は、有害な物質や細菌、ウイルスなどを見つけて攻撃し、除去する機能です。この攻撃・除去の過程で、免疫細胞から炎症性物質（炎症を引き起こす物質：炎症性サイトカインとも呼ばれます）が作られ、炎症が起こります⁶⁾。乾癬では免疫機能に異常が起こり、この炎症が長期間にわたって継続します⁵⁾。

全身の炎症がさまざまな病気につながる

乾癬患者さんの体のなかでは全身の炎症が起きているため、脂肪組織（悪玉脂肪細胞）から炎症性物質が放出されて、インスリン抵抗性が生じます。インスリン抵抗性とは、体にうまく糖を取り込めなくなる状態のことで、この状態が続くと、２型糖尿病や脂質異常症、動脈硬化などの疾患の発症につながり、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります¹⁾。
また、肥満症では、炎症性物質の放出が増え、全身の炎症が強まるといわれています⁷⁾。

乾癬と合併症の関係

文献1）より改変

3. 全身の病気を防ぐためにも、
乾癬と上手に付き合いましょう

全身の病気を防ぎ、悪化させないためにも、乾癬の症状をコントロールすることが大切です。

適切な治療を継続しましょう

乾癬の治療には、「外用療法（塗り薬）」、「光線療法（紫外線照射）」、「内服療法（飲み薬）」、「生物学的製剤（注射または点滴）」などがあります。乾癬の症状や患者さんの希望などによって、そのときに最適と考えられる治療が選択されます。
定期的に通院して治療を継続するとともに、治療に関して何か気になることがあれば、かかりつけ医に相談しましょう。

乾癬の悪化要因に注意

乾癬の悪化要因や日常生活での注意点を知り、乾癬と上手に付き合っていきましょう。
肥満は乾癬の悪化要因となるため、健康的な食生活や運動習慣を意識しましょう⁷⁾。

乾癬との付き合い方はこちら

身体の変化を早めに見つけて、かかりつけ医に相談を

関節に腫れや変形、痛みといった症状がみられたら、かかりつけ医に相談しましょう。乾癬性関節炎を見つけるための質問票[PASE（ペース）]に回答して、診察の際に持参してもよいでしょう。

また、健康診断を定期的に受け、血圧や血糖値、コレステロール値に変化があれば、早めにかかりつけ医に相談しましょう。