乾癬は皮膚の炎症症状を伴い慢性の経過をとる病気です。「かんせん」という名前から「人から人にうつる」と誤解されやすいのですが、他の人に感染する病気ではありません。皮膚症状の見た目や現れる場所は人によってさまざまですが、頭皮や髪の生え際、ひじ、ひざなど比較的外からの刺激を受けやすいところに出やすいという傾向があります。典型的な症状は、皮膚から少し盛り上がった[浸潤・肥厚(しんじゅん・ひこう)]赤い発疹[紅斑(こうはん)]の上に、銀白色のフケのようなもの[鱗屑(りんせつ)]がくっついてポロポロとはがれ落ちます。
乾癬の症状の一例


西山 茂夫:皮膚病アトラス 第5版, 175, 文光堂, 東京, 2004
乾癬の皮膚では、炎症を起こす細胞が集まって種々の炎症を起こす物質を出しているため、毛細血管が拡張し、皮膚が赤みを帯びた状態になります。また皮膚の細胞が、正常な皮膚と比べて10倍以上の速度で生まれ変わり、増殖が過剰な状態になっています。過剰に増殖した細胞により、皮膚は厚く積み上がって盛り上がり、最終的には鱗屑となってはがれ落ちていきます。

健康な皮膚のサイクル

乾癬の皮膚のサイクル
国内の乾癬患者さんは約43万人(おおよそ300人に1人)といわれています1)。
乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層で発症します。男女比は約2対1で男性に多く、発症年齢は男性では30代と60代、女性では20代と50代が多いようです2)。
乾癬は症状によって
次の5つに分類されます。
- 尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)
- 乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん)
- 滴状乾癬(てきじょうかんせん)
- 乾癬性紅皮症(かんせんせいこうひしょう)
- 膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)
乾癬の原因は何ですか?
乾癬の原因についてはいろいろな研究が進んでいますが、まだ完全には解明されていません。
乾癬になりやすい体質があり、そこに感染症や精神的ストレス、薬剤などのさまざまな要因が加わって発症すると考えられています。糖尿病や脂質異常症(高脂血症)、肥満なども影響するといわれています。
乾癬は症状をコントロールしながら
上手に付き合っていくことが大切です。
乾癬そのものを完治させるのは難しいですが、最近はさまざまな治療方法が開発されて、症状がほとんどない状態にすることも可能になっています。また、治療だけでなく、食生活を見直す、体重を少し落としてみる、たばこをやめる、などの生活習慣の改善でも治療の効果が現れやすくなったり、乾癬の症状そのものが良くなったりするともいわれています。
気になることは、どんどん主治医に相談することが大切です。
乾癬は人にうつることはありません。
乾癬は感染する病気ではなく、患者さんの発疹に触れても、温泉やプールに一緒に入っても、他の人にうつることは絶対にありません。
乾癬になりやすい体質が
遺伝する場合もありますが、
過度に心配する必要はありません。
乾癬になりやすい体質は遺伝すると考えられていますが、乾癬の家族内発症頻度(親や兄弟、祖父母に乾癬患者さんがいた場合の発症率)は5%程度3)といわれており、過度に心配する必要はありません。
まずは皮膚科を受診しましょう。
乾癬の種類や症状、患者さんのライフスタイルなどによって、適切な治療方法は異なります。まずは皮膚科を受診して、確実な診断と適切な治療を受けることが大切です。
「乾癬が治る」と謳(うた)う⺠間療法もありますが、科学的根拠がなく、かえって悪化してしまうこともあるので注意が必要です。また、各地に患者会があり、患者さん同士で乾癬についての悩みや不安を話し合ったり、医師に相談したりできるので、問い合わせてみてはいかがでしょうか。
- 1)Kubota K et al.:BMJ Open 5(1);e006450, 2015
- 2)Ito T et al.:J Dermatol 45(3);293-301, 2018
- 3)佐野 栄紀:日本臨牀 76(1);22-27, 2018