正しい治療で症状をコントロール

治療方法について

監修:中原剛士先生
(九州大学大学院医学研究院 皮膚科学分野 教授)

炎症やかゆみを抑える塗り薬の
上手な使い方

アトピー性皮膚炎では、抗炎症外用薬での治療が基本です。
必要な量を、必要な期間、使い続けることが症状改善には不可欠です。
ここでは、上手な塗り薬の使い方をご紹介します。

1 部位ごとに適した薬があることを知る

たとえばステロイドの塗り薬の場合、以下の図のように部位によって薬の吸収率が異なります。
一般的に、皮膚の厚い手の平や足の裏などは吸収されにくく、特にカルシニューリン阻害の塗り薬では効果が出にくいことがわかっています。

ステロイド外用薬の部位別吸収率(腕の内側を1とした場合の比率)

部位によるステロイド外用薬の吸収率
(前腕伸側を1とする)
(Feldman RJ,et al.J Invest Dermatol 1967 : 48 : 181-3 より一部改変)

2 適切な量を塗る

(1)ステロイドの塗り薬・保湿剤 ステロイドの塗り薬や保湿剤では使用量の目安にFTU(フィンガーチップユニット)という単位を使います。
軟膏・クリームの場合、成人の人差し指の先端から1つ目の関節の長さまで出した量が約0.5gに相当し(チューブの穴の直径が5mm程度の場合)、これを1FTUと呼びます。1FTUで、成人の手の面積約2枚分に塗ることができます。
ローションの場合は、1円玉大が1FTU(約0.5g)となります。
フォームの場合は、製品のキャップ大の大きさに噴出した泡の量が2FTU(約1.0g)となります。
FTUを目安に、医師に指示された量をきちんと塗ることが大切です。

ステロイド・保湿剤の外用量の目安(FTU)

1FTU=約0.5g※1

1FTUを成人の手の面積約2枚分の広さに塗るのが適量

※1 外用薬のチューブの口径、開けた穴の大きさなどによって量が異なる場合もあります。
  • 軟膏・クリームの場合

  • ローションの場合

  • フォームの場合

    製品のキャップ大の大きさに噴出した泡の量で2FTUとなります。(成人の手の面積約4枚分に塗るのが適量)

使用量FTU
(1FTU=0.5g:口径5mm チューブの場合)

日本アレルギー学会・日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2021」アレルギー 2021;70:1257-1342より改変
使用量の目安について
詳しくみる

(2)カルシニューリン阻害の塗り薬 カルシニューリン阻害の塗り薬は1回に塗る量の上限が決められています。
成人の場合は、0.1%を1日1~2回、1回5gまでとなっています。
小児の場合は、0.03%小児用を1日1~2回、1回5gまで(年齢によって減量)となっています。

年齢(体重)別の1回あたりに塗る量の目安

  • 2歳~5歳(20kg未満)

    1回塗布量の上限
    1g
    FTU換算
    4FTU
  • 6歳~12歳(20kg以上50kg未満)

    1回塗布量の上限
    2g~4g
    FTU換算
    8~16FTU
  • 13歳以上(50kg以上)

    1回塗布量の上限
    5g
    FTU換算
    20FTU
  • 16歳以上

    1回塗布量の上限
    5g
    FTU換算
    20FTU

年齢(体重)区分

1回塗布量の上限

FTU換算

2歳~5歳(20kg未満)

1g

4FTU

6歳~12歳(20kg以上50kg未満)

2g~4g

8~16FTU

13歳以上(50kg以上)

5g

20FTU

16歳以上

5g

20FTU

カルシニューリン阻害の塗り薬をチューブから押し出したとき、人差し指の先端から1つ目の関節の長さまで出した量(1フィンガーチップユニット:1FTU)で、成人の手の面積約1枚分に塗ることができます。

(3)ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害の塗り薬 ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害の塗り薬は1回に塗る量の上限が決められています。
成人の場合は、0.5%を1日1~2回、1回5gまでとなっています。
小児の場合は、0.25%を1日1~2回、1回5gまで(体格によって減量)となっています。

(4)ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害の塗り薬 ホスホジエステラーゼ4(PDE4)阻害の塗り薬の1回あたりの塗る量は0.1㎡あたり1gが目安です。
成人の場合は、1%を1日2回となっています。
小児の場合は、0.3%を1日2回となっています。症状によって1%を1日2回塗ることもあります。

3 塗り方のコツを知る

手をきれいに洗ってから塗ります。
(塗り終わった後の指先は拭く、洗うなどして薬剤が残らないようにしましょう。)
ゴシゴシ強くすりこむと、皮膚を傷つけバリア機能を低下させることになります。やさしく塗り広げましょう。また、皮膚炎のある部位にだけ塗りましょう。
抗炎症外用薬とともに保湿剤を塗ることで乾燥を防ぎ、皮膚を保護することができます。
手の平や足の裏などの皮膚が厚い部位では、入浴直後の皮膚が柔らかくなっているときに塗ると薬の吸収が良くなり、効果的です。

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