医学賞

マルホ研究賞

1999年、皮膚科学における若手研究者育成の一助として創設された「ガルデルマ賞」は、2020年より「マルホ研究賞」と名称を変え、マルホ株式会社が運営いたします。
公募により集められた皮膚科学に関連する基礎的および臨床的研究論文は、大学教授からなる選考委員会において厳正に審査され、優れた研究論文に対して本賞が授与されるとともに、学会において受賞式・受賞研究の発表会が行われます。
第25回の応募期間は、2024年4月15日~2024年6月30日(当日消印有効)です。

>第25回 マルホ研究賞 公募要項

>エントリーシート ダウンロード

>過去の受賞者一覧はこちら

 

Master of Dermatology (Maruho)

当社は、日本の皮膚科における臨床分野の発展に貢献した皮膚科医師に敬意を表する賞として、「マルホ賞—臨床皮膚科学への大いなる貢献者達へ—」を2010年に創設しましたが、2017年より“Master of Dermatology (Maruho)”と名称を改め、公益社団法人日本皮膚科学会と共同運営しております。
本賞は、日本皮膚科学会が「皮膚科の臨床、皮膚科学研究、人材育成、社会貢献など、日本の皮膚科学の発展に多大なる貢献をした者」をテーマに公募を行います。日本皮膚科学会の学会賞等選考委員会での選考の後、理事会で受賞者が決定され、日本皮膚科学会総会において授賞式と受賞記念講演会が行われる予定です。
令和6年度「Master of Dermatology(Maruho)」の詳細については、「公益社団法人日本皮膚科学会」の Webサイトをご覧ください。

令和5年度 Master of Dermatology(Maruho)の受賞者

令和5年度 Master of Dermatology(Maruho)の受賞者は下記のとおりです。

受賞者 所属 受賞テーマ
森田 栄伸
(もりた えいしん)
株式会社 メディカル工笑
島根大学名誉教授
小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの
主要アレルゲンω5-グリアジンの同定に基づく高精度診断法の
開発と病態解明及び低アレルゲン小麦の開発と実用化

(敬称略)

受賞テーマの要約

小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの主要原因抗原ω5-グリアジンを同定し、リコンビナントω5-グリアジンを利用した特異的IgE検査を開発した。本検査は世界中で使用され、その高い精度からComponent-resolved diagnosticsの概念とω5-グリアジンアレルギーの呼称が定着した。本邦では2010年保険収載された。加水分解コムギアレルギーの病態解明と疫学調査により、食物アレルギーにおける経皮感作の重要性を確立した。「特殊型食物アレルギーの診断の手引き」の作成と配布により、特殊型食物アレルギーの診断法と対処法を啓発した。高感度ELISAによる血中グリアジン濃度の測定を行い、小麦依存性運動誘発アナフィラキシーの運動やアスピリン誘発の機序を解明、患者生活指導の根拠を確立した。ω5-グリアジンアレルギー及び加水分解コムギアレルギーの疾患感受性遺伝子を同定した。
ω5-グリアジン欠失小麦系統1BS-18の発見と1BS-18食用小麦の作製及びそれを用いた臨床研究を遂行、1BS-18食用小麦系統の栽培とその製品の流通による小麦アレルギーの発症予防を目指している。

令和4年度 Master of Dermatology(Maruho)の受賞者

令和4年度 Master of Dermatology(Maruho)の受賞者は下記のとおりです。

受賞者 所属 受賞テーマ
古川 福実
(ふるかわ ふくみ)
和歌山県立医科大学
名誉教授
高槻赤十字病院 名誉院長
ループスエリテマトーデスの皮膚病変に対する発症機序の解明と
治療方法の確立に関する一連の研究

(敬称略)

受賞テーマの要約

全身性エリテマトーデス(SLE)とその皮膚病変について、その発症機序と治療方法の確立に関する一連の研究を行ってきた。数種のSLEのモデルマウスの解析の中からFas欠損MRL/lprマウスの皮疹がLEの優れたモデルであることを見出し、多くの退交配マウスの解析から、皮疹発症に至る遺伝的背景と紫外線などの環境因子の重要性を明らかにした。ヒトの研究に展開し、皮膚LE患者の無血清培養表皮細胞を用いて中波長紫外線により高頻度に抗体依存性表皮細胞障害が起こり、臨床的な紅斑が出現することを示した。予防・治療にあたっては、遮光とともに、タクロリムス外用の有用性やToll like receptorを介して奏功するヒドロキシクロロキンの有効性を多施設二重盲検法で実証し、適正使用ガイドラインを作成した。以上のような成果から、自然および獲得免疫のアンバランスが本症病態の新たなコンセプトとして注目され、実臨床研究の新たな地平となった。

令和3年度 Master of Dermatology(Maruho)の受賞者

令和3年度 Master of Dermatology(Maruho)の受賞者は下記のとおりです。

受賞者 所属 受賞テーマ
塩原 哲夫
(しおはら てつお)
杏林大学医学部皮膚科
名誉教授
薬剤性過敏症症候群を初めとする
アレルギー性皮膚疾患の病態解明・治療理論の確立

(敬称略)

受賞テーマの要約

いつも目の前に現れる臨床上の疑問を解決したい一心で研究を続けてきた。その中で絶えず私の中にあったのは、欧米の物まねではない彼らに依存しない我が国独自の概念を、世界に向けて発信したいと言う“独立不羈”の強い願望であった。それは終戦後まもなく生を受けた我々世代特有のものなのかもしれない。
薬剤性過敏症症候群(DiHS)は多くのユニークな特徴を持つ重症薬疹であるが、ヘルペスウイルスの再活性化、Tregの増大に伴う免疫抑制、それの退縮に伴う自己免疫反応の増大と続く長期にわたる病態の把握には、息の長い臨床の観察と細かいデータの解析が必要である。それは教室員達の惜しみない協力があって初めてなし得た仕事であり、感謝してもしきれない。それ故に欧米の研究者では絶対出来ないものであり、日本人の長所が発揮できる数少ない疾患である。長期予後に関しては現在も解析中であり、今後も研究が続けられることを願って止まない。

令和2年度 Master of Dermatology(Maruho)の受賞者

令和2年度 Master of Dermatology(Maruho)の受賞者は下記のとおりです。

受賞者 所属 受賞テーマ
清水 宏
(しみず ひろし)
北海道大学大学院
医学研究科 皮膚科学 教授
グローバルな皮膚科学教育ならびに
水疱症研究への貢献

(敬称略)

受賞テーマの要約

私は、40年余りにわたって、世界の皮膚医学の教育・研究をリードしてきました。グローバルな皮膚科学教育の発展のために、皮膚科学の教科書作成に取り組み、日本語の教科書である「あたらしい皮膚科学」(2005年初版、2011年第2版、2018年第3版)、英文バージョンである「Shimizu’s Dermatology」(2007年初版、2016年第2版)を上梓しました。これらの著書は、皮膚科学教科書としてベストセラーとなっており、世界の皮膚科教育に多大な貢献をしました。また、専門である水疱症の分野では、表皮水疱症のモデル作成と幹細胞治療の開発(Nat Med 2007; Cell Stem Cell 2011; PNAS 2011; Hum Mol Genet 2016; eLIFE 2017等)や、水疱性類天疱瘡の病態解明(JCI 1993; JI 2009/2010a/2010b/2012/2014; JACI 2018等)によって、当該領域の実臨床に基づいた研究を発展させてきました。

令和元年度 Master of Dermatology(Maruho)の受賞者

令和元年度 Master of Dermatology(Maruho)の受賞者は下記のとおりです。

受賞者 所属 受賞テーマ
富田 靖
(とみた やすし)
名古屋大学
名誉教授
「多くの色素異常症の病因遺伝子の解明と病因遺伝子に基づいた
白皮症病型分類の確立に貢献」

(敬称略)

受賞テーマの要約

私が作成した単クロン性抗体によりチロジナーゼ関連蛋白1(TRP1)を発見し、1986年にその遺伝子 - 後に眼皮膚白皮症(OCA)3型の病因遺伝子であることが判明 - のクローニングに成功した。1989年 世界に先駆けて、OCA患者チロジナーゼ遺伝子の病因となる変異を明らかにした。その後150名以上のOCAやHermansky-Pudlak症候群の患者の病因となる遺伝子変異の解明と臨床症状の研究を進め、現在 世界的に通用している病因遺伝子に基づくOCAの病型分類の確立に貢献した。
遺伝性対側性色素異常症(DSH)の4家系、約100人の連鎖解析を進め最終的にDSHの病因遺伝子がADAR1であることを2003年に世界に先駆けて発表した。さらにこの遺伝子の変異部位によっては、重篤な神経症状を合併することを解明した(なおこのDSHの病型は、今ではAicardi-Goutieres症候群の一病型に加えられている)。これらの研究の延長として2013年に網状肢端色素沈着症(APR)の病因遺伝子がADAM10であることも明らかにし、DSHとAPRは別疾患であることを遺伝子レベルで確定した。

平成30年度 Master of Dermatology(Maruho)の受賞者

受賞者 所属 受賞テーマ
古江 増隆
(ふるえ ますたか)
九州大学大学院
医学研究院皮膚科学
Aryl hydrocarbon receptor研究による社会貢献
—油症および炎症性皮膚疾患の治療—

(敬称略)

受賞テーマの要約

皮膚は体表内外の様々な化学物質を感知するAryl hydrocarbon receptor (AHR)を豊富に保有し、ダイオキシン、紫外線クロモフォア、植物由来物質、微生物由来物質などに適応している。我々は、AHRが酸化ストレス⇔抗酸化防御という相反するシグナルの分水嶺として働き、AHRを介したダイオキシンによる酸化ストレスは、抗酸化作用のある植物由来物質(桂皮など)によって相殺され、臨床試験によっても油症患者の症状を軽減させることを明らかにしてきた。
さらに、AHRシグナルが角化バリアを担うフィラグリンやその他の表皮分化蛋白の発現を亢進させる主要な経路であること、そのため抗酸化作用のあるAHRアゴニストは抗炎症作用とバリア回復能を併せ持つことから、炎症性皮膚疾患に対する新規治療薬開発の一領域を担うことを提唱してきた。
私はこれまでAHR研究を皮膚科の重要な研究領域の一つとして位置づけ、環境と生命の相互作用という重要な課題に取り組んできた。