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鑑別診断

多くの症例は視診により診断が可能ですが、他の脈管性腫瘍のほか、深在型(deep type)については視診のみでは鑑別できない疾患があり、MRIや超音波検査など画像診断が有用になることがあります。乳児血管腫との鑑別上、問題となる脈管性腫瘍としては、以下のものがあります。

静脈奇形(海綿状血管腫)

乳児血管腫の深在型(deep type)と静脈奇形(海綿状血管腫)は病理組織学的に類似することがあり混同されている場合がありますが、病態が全く異なりその鑑別には注意を要します。

乳児血管腫(深在型)と静脈奇形(海綿状血管腫)の相違

乳児血管腫(深在型) 静脈奇形(海綿状血管腫)
病因 不明。多種多様な仮説が提唱されている 先天性
発症時期 乳児期 小児期に発症することが多いが、成人期での症状初発もまれではない
経過 増殖期・退縮期・消失期の3期 成長に伴って症状が進行する
病理 増殖期・退縮期・消失期それぞれに病理組織像は異なる。増殖期にCD31とGLUT-1陽性の腫瘍細胞の集塊を形成 結合組織中に拡張した血管を認め、血管壁は薄く内腔は不規則で平滑筋細胞を欠損していることも多い。GLUT-1陰性

平成26‐28年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)「難治性血管腫・血管奇形・リンパ管腫・リンパ管腫症および関連疾患についての調査研究」班:血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017, 第2版, 2017年3月 より作表

乳児血管腫と脈管奇形の経過

乳児血管腫は生後一年以内に急速に増殖するが、多くは8歳頃までに自然退縮します。一方、静脈奇形などの脈管奇形は成長に伴い増大し、退縮せず生涯存続します。

乳児血管腫と脈管奇形の経過

【監修】
地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 皮膚科部長 馬場 直子 先生

脈管性腫瘍

  • 先天性血管腫

先天性血管腫は、乳児血管腫と鑑別が必要な疾患です。これら先天性血管腫ではGLUT-1は陰性です。

  • RICH(rapidly involuting congenital hemangiomas)

    出生時にすでに腫瘍が完成しておりその後乳児血管腫と同様自然退縮傾向を見せる。

  • NICH(non-involuting congenital hemangiomas)

    同じく先天性に生じるが自然退縮傾向を有さない。

  • PICH(partially involuting congenital hemangiomas)

    退縮が部分的である。

房状血管腫とカポジ肉腫様血管内皮細胞腫

房状血管腫とカポジ肉腫様血管内皮細胞腫は、乳児血管腫との鑑別が必要な疾患です。両者ともGLUT-1は陰性で、Kasabach-Meritt現象を惹起しうる血管腫ですが、乳児血管腫がKasabach-Meritt現象をきたすことはありません。

  • 房状血管腫(tufted angioma)

    出生時から存在することも多く、また痛みや多汗を伴うことがある。病理組織学的に、内腔に突出した大型で楕円形の血管内皮細胞が、真皮や皮下に大小の管腔を形成し、いわゆる“cannonball様”増殖が認められる。

  • カポジ肉腫様血管内皮細胞腫(Kaposiform hemangioendothelioma)

    異型性の乏しい紡錘形細胞の小葉構造が周囲に不規則に浸潤し、その中に裂隙様の血管腔や鬱血した毛細血管が認められる。

<出典>
平成26‐28年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)「難治性血管腫・血管奇形・リンパ管腫・リンパ管腫症および関連疾患についての調査研究」班:血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017, 第2版, 2017年3月

<参考>

glucose-transporter-1(GLUT-1)とは

グルコースは、細胞内に取り込まれる際に糖輸送担体と呼ばれる膜蛋白を必要とする。
糖輸送担体は、促通拡散型糖輸送担体(glucose transporter:GLUT)と、Na共役能動輸送性糖輸送担体(sodium glucose co-transporter:SGLT)に大別される。
GLUTは12回膜貫通型の膜蛋白で、主に細胞内外の濃度差に基づく促通拡散輸送を担っている。GLUT-1は1985年にクローニングされた。

<出典>
門脇孝他編. 糖尿病学 基礎と臨床, 西村書店. 2007 ; 201
大野晴也他 : 月刊糖尿病. 2011 ; 3 : 108

Kasabach-Meritt現象(症候群)とは

脈管性腫瘍内で生じる血液凝固障害により引き起こされる病態で、巨大血管腫・血小板減少・全身性紫斑がみられる。乳児血管腫は血液凝固異常を認めず、Kasabach-Meritt現象はカポジ肉腫様血管内皮細胞腫、房状血管腫(tufted angioma)で合併することが多いと考えられる。

<出典>
平成26‐28年度厚生労働科学研究費補助金難治性疾患等政策研究事業(難治性疾患政策研究事業)「難治性血管腫・血管奇形・リンパ管腫・リンパ管腫症および関連疾患についての調査研究」班:血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017, 第2版, 2017年3月

【監修】

地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 皮膚科部長
馬場 直子 先生
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