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合併症

乳児血管腫は自然退縮をきたす特徴をもち、多くの症例が最終的には機能的な問題を残さず消失します。

しかし、経過中に合併症が生じる例もあり、病変部位によっては生命(気道の病変による呼吸不全、肝臓の病変によるうっ血性心不全等)又は機能(眼周囲の病変による不同視、乱視及び弱視や、口唇の病変によるほ乳・摂食困難)を脅かす可能性があります。

また、無治療では永続的な後遺症(広範囲の瘢痕化等)が残ったり、患者及び保護者に精神的な負担を誘発するおそれがある1, 2)ため、症例によっては早期治療介入が必要なこともあります。

乳児血管腫の合併症及び特に考慮すべき合併症

合併症 発現率3) 合併症に伴う問題及び補足説明

潰瘍形成

16.0%

痛みを伴い、摂食及び睡眠障害を引き起こす。治療を必要とする出血及び感染を伴う場合もある。潰瘍形成部位(肛門性器部、口唇、鼻、耳及び頸部)によっては、浸軟及び摩擦が要因となる可能性が高い。

視覚障害

5.6%

病変による視軸の遮蔽、屈折障害(乱視又は近視)、弱視、涙管閉塞4)を起こすおそれがある。眼瞼又は眼窩に病変がある場合、乱視又は眼瞼下垂による視覚遮断が原因の弱視の発現率が43~60%にのぼる5)

気道閉塞

1.4%

乳児血管腫が頤部、口唇又は下顎部にある場合、生命を脅かしうる気道閉塞が起こる可能性がある。特にあごひげ状に分布する局面型乳児血管腫を有する症例では、気道(一般的に声門下)に血管腫を合併する割合が63%にのぼる6)ことから、気道閉塞が起こるリスクが最も高い。あごひげ状に分布する局面型乳児血管腫を有する患者では必ず、気道の乳児血管腫の有無の確認のため診断検査が必要である。

内臓の乳児血管腫

0.1%
(肝臓の発現率)

肝臓の病変は限局性、多病巣性又はびまん性で、病変の分布によっては、血小板減少症、うっ血性心不全(重大な動静脈シャントがある場合)及び甲状腺機能低下症が発生する可能性がある1)

皮膚に多発性血管腫(血管腫症として知られる)を有する患者は、内臓にも乳児血管腫を有するリスクが高く、好発臓器は肝臓である。前向き研究では、5個を超える皮膚病変を有する患者の16%が肝臓の乳児血管腫を有する7)

特に考慮すべき合併症

仙椎及び腰椎の乳児血管腫

二分脊椎、係留脊髄や、肛門直腸、尿道、外生殖器の奇形等の先天性異常を伴うことがある。これらの患者では、奇形の有無の確認のため超音波検査又はMRI検査が必要である。

PHACE**症候群

20%1)
(顔面に分節性乳児血管腫を有する乳児での発現率)

顔面に大きな分節性乳児血管腫を有する患者では、特別の注意が必要で、心臓の精密検査及び神経画像検査を行い、乳児血管腫の治療開始前に診断を確定する必要がある。

あごひげ状に分布する乳児血管腫:耳介前部及び下顎部に沿って頤部、前頸部及び下口唇に分節性の局面型乳児血管腫がみられる。

PHACE:Posterior fossa brain anomalies, hemangiomas, arterial anomalies and cardiac defects and coarctation of the aorta, eye abnormalities and sternal abnormalities or ventral developmental defects

  • Frieden IJ. et al. Pediatr Dermatol. 2005; 22(5):383-406

  • Tanner JL. et al. Pediatrics. 1998; 101(3 Pt 1):446-452

  • Haggstrom AN. et al. Pediatrics. 2006 ; 118(3) : 882-887

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  • Horii KA. et al. Pediatr Dermatol. 2011; 28(3):245-253

【監修】

地方独立行政法人 神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 皮膚科部長
馬場 直子 先生
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