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投与患者の選択

乳児血管腫は多くの場合、自然経過で退縮するため、本剤による治療の必要性は個々の患者の症状より検討してください。現時点では日本の治療ガイドライン等で本剤の明確な適応範囲が示されていないため、参考として形成外科、皮膚科、小児科の専門医の見解を集約して下記に提示します。ただし、今後の臨床使用情報の蓄積により見直される可能性があります。

なお、乳児血管腫の確定診断が困難な症例やヘマンジオルシロップ投与の適否を迷う症例については、乳児血管腫の診療経験豊富な医師との連携を適宜行ってください。早期治療が必要な場合も多いことから、連携を行う場合には、できる限り早期に行ってください。

参考:専門医による治療ガイダンス

ヘマンジオルシロップによる治療が必要な患者について

治療が強く推奨される乳児血管腫

  • 生命や機能を脅かす合併症を伴う乳児血管腫

    • 内臓(肝臓が好発臓器)に生じた乳児血管腫(血小板減少、うっ血性心不全、甲状腺機能低下)

    • 声門部や気道に生じた乳児血管腫(気道閉塞)

    • 眼瞼・眼窩内に生じた乳児血管腫(視覚障害)

  • 潰瘍を形成している乳児血管腫

  • 顔面の広範な乳児血管腫

  • 増殖が急激な乳児血管腫

解説

  • 乳児血管腫は血管のある部位であれば発症する可能性があり、内臓や気道、感覚器系に生じたものは、呼吸困難、視力障害、開口障害、難聴などの生命や機能を脅かす合併症を伴います。こういった場合は即入院させるなどして、医師の管理下でヘマンジオルシロップによる治療を開始する必要性が高いと考えられます。

  • 潰瘍が形成されている乳児血管腫は感染のリスクが高く、特に臀部の潰瘍形成はおむつが擦れて悪化することがあるため早期にヘマンジオルシロップの治療が望まれます。なお、潰瘍形成を伴う乳児血管腫患者に使用する場合は、高カリウム血症が起きる可能性があることから、慎重に投与してください。

  • 顔面の広範な乳児血管腫は、未治療の場合、整容面で醜状を残すおそれがあるため、早期にヘマンジオルシロップを使用する必要があると考えられます。

  • 増殖が急激な乳児血管腫は、ヘマンジオルシロップの治療介入によりその後の経過を良好にすることが期待できると考えられます。

場合によって治療が必要な乳児血管腫

  • 腫瘤型乳児血管腫

  • 露出部にある乳児血管腫

解説

  • 腫瘤型で目立たないところにある乳児血管腫は積極的に治療する必要性は低いかもしれませんが、局面型に比べると治りにくいこともあり、保護者の希望に応じてヘマンジオルシロップの開始を検討します。

  • 露出部にできた乳児血管腫で広範なものではない場合も、保護者が治療を強く希望する場合はヘマンジオルシロップの導入を検討します。

経過観察でよい乳児血管腫
(ただし、急激に増殖する場合もあるため注意が必要)

  • 瘢痕が残っても気にならない部位の局面型乳児血管腫

  • 瘢痕が残っても気にならない大きさの乳児血管腫

  • 明らかに退縮期に移行した乳児血管腫

解説

  • 乳児血管腫は1歳を過ぎると徐々に病変が縮小し、90%以上は5〜7歳までに数年かけて自然退縮する(退縮期)といわれています。ただし、血管拡張、皮膚の萎縮性変化、色素沈着、色素脱失などが残ることがあります。したがって、露出の少ない目立たないところにある乳児血管腫で、瘢痕が残っても問題にならない場合は、ヘマンジオルシロップの導入を見合わせてよいでしょう。

  • 増殖期にあっても、瘢痕が残ったとしても気にならない程度の小さなものであれば、積極的な治療介入は必要ありません。国内外の臨床試験では、長径が1.5cm以上の病変に対して本剤の有効性と安全性が検討されました。

  • ヘマンジオルシロップは原則、全身治療が必要な増殖期の乳児血管腫に使用が推奨されており、2〜3歳を過ぎて明らかな退縮期に移行した場合は増殖期のような治療効果が期待できません。

鑑別診断で除外が必要な類似疾患【除外疾患】について

乳幼児期の血管性腫瘍の中で最も頻度が高いのは乳児血管腫です。

しかしながら、同様の病変を呈する血管腫や血管奇形もあるため、鑑別に注意が必要です。問診により出生時から病変があったのか/生後しばらくしてから発症したのか、ということを確認し、加えて問診・視診で、増殖性の有無の確認をすることが重要です。

血管奇形と鑑別する際には、グルコーストランスポーター1(GLUT-1)が乳児血管腫の特異的マーカーとなります。しかしながら、生検が必要となり、出血のリスクもあることから、通常はGLUT-1の免疫染色を行った診断は行われません。

血管奇形

  • 毛細血管奇形(単純性血管腫/ポートワイン母斑)

  • 静脈奇形(海綿状血管腫)など

  • リンパ管奇形(リンパ管腫)

  • 動静脈奇形

<参考>乳児血管腫と脈管奇形の相違点1)

乳児血管腫 脈管奇形(血管奇形・リンパ管奇形)
発症時期及び経過 乳幼児期 治療しなければ生涯続く
経過 増殖期・退縮期・消失期の3期がある 成長に比例して増大/少しずつ増大
男:女 1:3~9 1:1
細胞 内皮細胞のturn-over亢進
肥満細胞数の増加
基底膜の肥厚
内皮細胞のturn-over正常
肥満細胞数正常
基底膜は薄い
増大の起点 ない(不明) 外傷、ホルモンの変化
病理 増殖期・退縮期・消失期に応じて特徴的
GLUT-1*陽性
毛細血管奇形、静脈奇形、リンパ管奇形、動静脈奇形それぞれの特徴
GLUT-1*陰性
治療 自然消退、薬物治療、手術、レーザー 病変に応じてレーザー、手術、塞栓療法、硬化療法など

GLUT-1=glucose transporter 1(乳児血管腫の特異的マーカー)

  • 「難治性血管腫・血管奇形・リンパ管腫・リンパ管腫症および関連疾患についての調査研究」班 血管腫・血管奇形・リンパ管奇形診療ガイドライン2017 より一部改変

血管性腫瘍

  • 先天性血管腫

解説

先天性血管腫は、乳児血管腫と鑑別が必要な疾患です。
見た目が乳児血管腫と似ていることもありますが、乳児血管腫は出生時には病変がないことが多いのに対し、先天性血管腫は胎児期に増殖したと考えられる病変が出生時より存在するという特徴があります。
退縮傾向の違いにより、以下の3つに分類されます。

  • RICH(Rapidly Involuting Congenital Hemangioma)
    生後数週から数ヵ月で退縮し、深い青や紫色を呈し、粗い毛細血管拡張を示します。

  • NICH(Non Involuting Congenital Hemangioma)
    退縮しない先天性血管腫で、わずかに隆起もしくは局面状を呈し、太い流出静脈がみられます。

  • PICH(Partially Involuting Congenital Hemangioma)
    RICHとNICHの中間型で、RICHほどではありませんが退縮傾向を認めます。

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