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褥瘡予防のリハビリテーション


    総監修:
    • 群馬大学 名誉教授 石川 治 先生
    監修:
    • 医療法人社団廣仁会 札幌皮膚科クリニック 安部 正敏 先生
    • 訪問看護ステーション 有限会社きらくな家 代表 中里 貴江 先生

    関節拘縮の予防方法

    関節拘縮とは、不動などによって関節の可動域が減少することをいいます。特に、股関節・膝関節の屈曲拘縮などが発生すると体動を困難にさせ、殿部局所にかかる体圧を高めることにつながり、褥瘡発生の要因となります。

    関節拘縮を予防するためには、その最大の原因である不動に対して他動運動(他動的に関節を動かすこと)の実施と、関節拘縮を最小限に留め安定した姿勢をとるためのポジショニングが重要です。

    MEMO

    関節拘縮の好発部位

    肩関節の屈曲・外転制限、肘関節・手関節・手指の屈曲拘縮、股関節の屈曲拘縮と外転制限、膝関節の屈曲拘縮、足関節の尖足拘縮。

    関節拘縮の予防のための他動運動

    他動運動は関節拘縮予防のほか、皮膚を伸張し、皮膚同士の密着を防いで皮膚の柔軟性を維持する目的もあります。実施する際は、患者の可動範囲を理解し、決して無理に動かさないようにします。

    他動運動時の留意点

    • 関節拘縮の原因となっている組織を特定する。
    • 関節の各運動方向における可動範囲および皮膚・筋・腱の緊張状態を確認する。
    • 1回に何度も動かすより、1日に複数回動かす方が効果的である。
    • ゆっくりと動かす。痛みを感じるのは危険信号である。特に、肩関節は構造が複雑なため、乱暴に動かすと疼痛の発生や関節拘縮の悪化をまねく。
    1. 肩関節の屈曲・外転運動

      (1)上腕骨骨頭が肩甲骨関節窩に納まっていることを確認します。

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      肩関節の屈曲・外転運動(1)

      (2)上腕骨骨頭部の動きを片方の手で確認しながら、反対の手で上腕を持ち、肘で軽く円弧を描くようにして屈曲・外転運動を行います。

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      肩関節の屈曲・外転運動(2)

      (3)肘関節が肩関節のラインにくる程度までを目標とします。

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      肩関節の屈曲・外転運動(2)

      (4)肩関節の外転時には、内旋位ではなく外旋位にします。

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      肩関節の屈曲・外転運動(4)-1
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      肩関節の屈曲・外転運動(4)-2

      宮地良樹, 溝上祐子編集:褥瘡治療・ケアトータルガイド:103, 2009より一部改変

    2. 膝関節の伸展運動
      • 下腿をできるだけ膝関節の近くで持ち、下腿を前方に引き出すようなイメージで膝関節を伸展させます。
      • 膝窩部に当てている手で膝後面の腱の伸張具合を感じながら行います。
      • 腱がピンと張り、抵抗感を感じる程度で保持します。
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      膝関節の伸展運動

      日本褥瘡学会編集:在宅褥瘡予防・治療ガイドブック:90, 2015

    3. 拘縮手指の伸ばし方

      (1)指を握りしめた状態から伸ばす場合、手関節が背屈位のままではなく、まず手関節を掌側に動かします。

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      拘縮手指の伸ばし方(1)

      (2)小指側より手掌部をもみほぐすように、介助者の指を入れていきます。

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      拘縮手指の伸ばし方(2)

      (3)他の指を伸張します。

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      拘縮手指の伸ばし方(3)

      日本褥瘡学会編集:在宅褥瘡予防・治療ガイドブック:90, 2015

    *拘縮が強くなってくると手掌の溝が癒着してくるため、皮膚を引き裂かないように注意しましょう。小溝部分を拭くことも効果的です。

    他動運動による褥瘡発生

    皮膚が脆弱な患者に関節可動域に関するケアを行った場合、衣服やおむつが原因でずれ力が発生し、新たな褥瘡の発生が懸念されるため、他動運動後の皮膚観察は重要です。

    他動運動後に皮膚観察を怠っていたと考えられる例
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    股関節の他動運動でも、動かし方によっては腰部の皮膚にまでずれが生じることがあるので要注意

    股関節の他動運動でも、動かし方によっては腰部の皮膚にまでずれが生じることがあるので要注意。

    日本褥瘡学会編集:在宅褥瘡予防・治療ガイドブック:92, 2015

    関節拘縮の予防のためのポジショニング

    ポジショニングとは、褥瘡を悪化させることなく関節拘縮を最小限にすることを目的とし、安定した姿勢をとるための方法をいいます。

    ポジショニングの目的

    • 体圧を分散させるとともに姿勢の安定を図るため、接触面積を増やします。
    • 皮膚同士の接触を避け、皮膚表面の通気性を確保します。
    • 既に関節拘縮がある場合は悪化を防止し、現状を維持します。
      1. 仰臥位の場合
        • 円背の有無を確認します(極度の円背では仰臥位がとれません)。
        • 病的な骨突出があり、骨盤帯が不安定な場合は空間を補う厚みのあるクッションを殿部に用います。
        • 肘は体幹より前方で保持できるようにします。
        • 膝関節の屈曲拘縮予防のため、下肢後面の全面にクッションが当たるようにします。
        • 股関節・膝関節の屈曲拘縮があり、下肢が倒れる場合には、倒れる側からの支持が必要となります。
        仰臥位時のポイント
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        仰臥位時のポイント
      2. 側臥位の場合
        • 側臥位の角度は、体幹のねじれの程度や殿筋の萎縮の程度によって異なります。
        • 角度を定めたら、肩の部分や骨盤が安定し、体がぐらつかないようにクッションで支えます。
        • 両下肢が交差している場合は、交差を解消するとともに下肢の下面の接触面積を増やすようにクッションを配置しましょう。
        側臥位時のポイント
        記事/インライン画像
        側臥位時のポイント
      3. 尖足(筋拘縮や外傷により、足関節が足底側へ屈曲して背側へ戻らない状態)の予防
        • 掛け布団の重量が足背部にかかることを避けるために支持物を配置します。
        • 膝関節が屈曲するのを防ぐため、アキレス腱部を支持します。
        • 踵部が浮いているかどうかを確認します。
        尖足の予防
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        尖足の予防

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