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褥瘡予防のスキンケア


総監修:
  • 群馬大学大学院 医学系研究科皮膚科学 教授 石川 治 先生
監修:
  • 医療法人社団廣仁会 札幌皮膚科クリニック/褥瘡・創傷治癒研究所 安部 正敏 先生
  • 訪問看護ステーション 有限会社きらくな家 代表 中里 貴江 先生

保清・保湿

洗浄・清拭

褥瘡予防のためのスキンケアとは、皮膚を健康な状態に保ち、バリア機能(体内の水分が出ていくのを防ぐとともに外部からの刺激・異物から身体を守るはたらき)を維持することによって褥瘡の発生や感染を防ぐことです。

全身状態が落ち着いていれば、できるだけ入浴させるようにしましょう。入浴には血行促進効果があるため褥瘡予防に大変有用です。

  1. 洗浄の方法
    • 弱酸性の皮膚洗浄剤をよく泡立て、グローブをはめた手でやさしく洗浄します。決して強くこすらないようにしましょう。
    • 洗浄剤が皮膚に残らないよう、人肌程度に温めた微温湯で十分に洗い流します。
    • タオルで押さえるようにして水分をよく拭きとります。特に耳、手足の指の間、陰部、殿裂部などは、柔らかいタオルで丁寧に拭きましょう。
    • 洗浄後、なるべく早く(できれば10分以内に)保湿剤を塗布します。
    洗浄の方法
    記事/インライン画像
    洗浄の方法

    マルホ(株)小冊子:褥瘡ケアを知ろう:13, 2022

  2. 清拭の方法
    • 室温を患者が寒くない程度(25℃前後)に調節しておきます。
    • 50~55℃の湯に浸して固くしぼったタオル、または電子レンジを利用した蒸しタオルを用意します。いずれもタオルが熱すぎないか清拭前に確認してください。
    • 顔→上肢→胸部→腹部→下肢→背部→殿部→陰部の順番で、末端から心臓に向かって拭いていきます。体温低下を防ぐため、清拭する部分以外はバスタオルなどで覆っておきましょう。
    清拭の方法
    記事/インライン画像
    清拭の方法

    マルホ(株)小冊子:褥瘡ケアを知ろう:13, 2022

    • 身体に水分が残らないよう、タオルで押さえるようにしてよく拭きとります。
    • 清拭後、なるべく早く(できれば10分以内に)保湿剤を塗布します。

    *全身を一度に行う必要はなく、体調に合わせて部位ごとに行っても問題ありません。

    *タオルは清拭しやすいように巻きます。

    タオルの巻き方
    記事/インライン画像
    タオルの巻き方

    マルホ(株)小冊子:褥瘡ケアを知ろう:13, 2022

保湿

乾燥した皮膚は汗や排泄物、衣類の接触、圧迫などの刺激に対してトラブルを起こしやすくなります。洗浄(入浴)・清拭後に保湿剤(ヘパリン類似物質含有軟膏や油脂性基剤軟膏、クリームなど)を塗布して皮膚の乾燥を防ぐほか、居室内の湿度が低くなり過ぎないようにすることも大切です。

浮腫

浮腫を伴う皮膚は損傷を受けやすいため、慎重なケアが必要です。また、皮膚乾燥を伴っていると、そう痒感・掻破の悪循環に陥りがちなので、乾燥の予防に努めましょう。

浮腫の原因

浮腫は全身性浮腫と局所性浮腫に分けることができ、それぞれに原因となる基礎疾患が異なります。全身性ではうっ血性心不全、肝および腎機能障害、甲状腺機能低下症などの内分泌障害などで、局所性では静脈還流不全などが挙げられます。 これらの疾患を有する患者では浮腫の発生が褥瘡の発生につながらないよう、まず予防することが肝心です。

浮腫の評価(アセスメント)

浮腫の有無は、下腿前面、足背、背部(褥瘡がある場合はそれ以外の部位)を指で押し、圧痕が残るか否かで判定します。

浮腫が生じていると判定された場合、浮腫発生の原因のアセスメントも同時に行い、改善を図ります。

浮腫の判定方法
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浮腫の判定方法

日本褥瘡学会編集:在宅褥瘡予防・治療ガイドブック:70, 2015

浮腫発生時のケア

  1. 皮膚の清潔
    • 弱酸性の皮膚洗浄剤をよく泡立て、泡で包み込むようにして汚れを浮き上がらせます。皮膚を強く擦らないよう注意しながら、洗浄剤を除去します。
    • 清拭の場合は、アルコール類を含まない用品を使用します。
    • 入浴(シャワー浴)する場合は、熱い湯は避けてください。
  2. 乾燥予防
    保清後はなるべく早く(できれば10分以内に)保湿剤を塗布します。塗布量は、皮膚がてかる程度を目安にするとよいでしょう。
  3. 外傷防止
    • 皮膚の露出を最小限にするため、ゆるめのストッキングや足カバーなどを活用します。また、医療用粘着テープ固定による皮膚の緊張や衣類のゴムのくい込みによる外傷に注意しましょう。
    • 体位変換時に物を巻き込んだり、下敷きにして皮膚損傷を起こすおそれがあるため、ベッド上の環境はいつも整えておきましょう。
    • ベッドの柵はカバーなどで覆い、接触による外傷をつくらないようにしましょう。
ベッド柵の外傷防止策
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ベッド柵のカバー

日本褥瘡学会編集:在宅褥瘡予防・治療ガイドブック:71, 2015

浸軟

過剰な湿潤環境は皮膚の浸軟(角層がふやけて白く見える)をまねき、角層のバリア機能や組織耐久性を低下させます。
その結果、びらんや感染が生じやすくなります。

記事/インライン画像
浸軟

浸軟の原因と影響

皮膚湿潤は、多量の発汗、失禁によるおむつ内の高温多湿状態などが原因として挙げられます。多汗は衣類の過剰な重ね着のほか、感染症など発熱性の疾患が考えられるので、全身状態を把握しておくことが大切です。その他、体圧分散用具の使用により蒸れが生じる場合もあります。

皮膚の湿潤は、接触しているものと密着しやすくなるため摩擦やずれが起こりやすくなる、頻回の清拭による機械的刺激が皮膚の乾燥をまねくといったような悪影響を及ぼします。

浸軟の観察ポイント

  • おむつ使用の有無および使用方法
    不要な重ね付けをしていませんか、不適切な吸水量のパッドを使用していませんか。
  • 発熱・発汗の有無
  • 失禁の有無
  • 皮膚の湿り方(程度)
    特に皮膚同士が接触している部分(鼠径部・殿裂部など)は湿りやすいため、接触面を伸展させてよく観察します。

浸軟のケア

  1. 適切な寝具などの選択
    マットレス、シーツなどは吸水性・放熱性の高い素材を選びます。
  2. 発汗時の対処
    • 速やかに汗を拭きとり、皮膚が完全に乾燥したことを確認してから撥水対策を行います。
    • 発汗の度に清拭を行うと体力消耗につながることがあるため、下着の交換回数を多くします。吸水性・速乾性に優れた下着を利用するのもよいでしょう。
    • 汗取り用タオルを下着の中に入れて、こまめに交換するとよいでしょう。
    • 電気毛布などの保温用品を使用している場合、温度設定に注意し、発汗を促進しないようにします。

尿・便失禁

尿・便失禁による湿潤は皮膚を浸軟させ、皮膚損傷を起こしやすくします。同時に、失禁による湿潤・汚染が生じるのは褥瘡好発部位であるため、褥瘡発生リスクが高まります。

尿・便失禁の影響

便失禁は排泄物中の酵素・細菌などが皮膚のバリア機能を障害します。特に、腸管での水分吸収が不十分な水様便であるほど、消化酵素を多く含んだ刺激の強い排泄物となります。水様便であるため皮膚に付着する面積が拡大し、皮膚傷害が広範囲に及びがちです。
また、尿失禁と併発している場合は、尿素がアンモニアに変化して皮膚pHを上昇させます。

尿・便失禁のケア方法

予防的ケアとしては、皮膚に排泄物が付着しないようにすることが第一です。失禁には、腹圧性、切迫性、溢流性、機能性などのタイプがあるため、いずれのタイプなのかを判別することも適切な治療およびケアへの近道となります。

  1. スキンケア
    • 排泄物の性状に応じたパッドを使用します。また、水分透過性機能の高いポリエステル繊維綿を外陰部から殿裂部にかけて貼用すると、排泄物と皮膚が接触する時間を短縮できます。
    • 排泄物で汚染されたときは速やかに除去します。弱酸性の皮膚洗浄剤を用いてやさしく洗浄し、水分をよく拭きとった後、撥水性皮膚保護剤(クリームやオイルなど)を塗布します。
  2. 適切な排泄ケア用品の選択
    • 失禁量を評価(アセスメント)し、適切な吸水量をもつ高分子吸水ポリマー入りの紙おむつ、尿取りパッドを使用します。
    • 排泄口の周囲以外に排泄物が広がらないよう、おむつの当て方を工夫しましょう。不要な重ね付けは体圧を高めるので避けてください。また、交換の際は無理矢理はぎ取らないようにしましょう。
    • おむつのサイズが適切でないと、身体の動きにフィットせず、しわができる原因となるので注意が必要です。
      カバータイプのおむつの例
      記事/インライン画像
      写真:カバータイプのおむつの例
    • 男性の場合、陰茎固定型収尿器で尿を回収する方法も可能です。ただし、装着感を不快とする患者や離床している患者には適していません。
      尿失禁ケア用具の例
      記事/インライン画像
      尿失禁ケア用具
    • 頻回な水様便の付着がある場合は、単品系の消化器ストーマ装具を肛門周囲に貼付する方法が推奨されます。
    • 排便コントロールが困難で、水様または泥状便が持続する場合には、肛門にシリコンチューブを挿入する便失禁システムを用いる方法があります(注:直腸内や肛門部に病変、損傷がある場合や直腸手術後は禁忌)。
      便失禁ケア用具の例
      記事/インライン画像
      便失禁ケア用具
  3. 撥水効果のあるスキンケア用品の選択
    皮膚の浸軟は長時間の水分接触で起こるため、撥水効果が長時間保持されるスキンケア用品を選択します。クリームやオイルの他、スプレータイプの皮膚被膜剤もあります。

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