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褥瘡予防の圧迫・ずれの排除


    総監修:
    • 群馬大学 名誉教授 石川 治 先生
    監修:
    • 医療法人社団廣仁会 札幌皮膚科クリニック 安部 正敏 先生
    • 訪問看護ステーション 有限会社きらくな家 代表 中里 貴江 先生

    体圧分散ケア

    体圧とは、ベッドなどの寝具から身体の表面に加わる圧力のことであり、褥瘡予防のためには骨突起部に加わる圧力をできるだけ低く保つことが重要です。そのためにベッドと身体の接触面を広くし、体表面に加わる圧力を減少させることを体圧分散といいます。
    体圧分散ケアには、臥位における体位変換や体圧分散用具の使用、坐位における姿勢保持や用具の使用などがあります。体位変換とは圧迫されている身体の部位を、身体が向いている方向や姿勢などを変えて移動させることです。

    体圧分散用具について、詳しくはこちら:
    体圧分散用具の紹介

    MEMO

    70~100mmHg以上の圧力が2時間皮膚に加わると、組織損傷徴候が現れるとされている。

    体圧分散ケア-臥位の場合

    1.評価(アセスメント)

    体圧分散を考える際は、自力体動ができるか否か以外にも、禁忌な体位の有無や病的骨突出の有無などについてアセスメントし、各患者に適したケア方法を検討します。なお、手術後の安静など一定の体位が長時間に及ぶ場合は特に注意が必要です。

    2.体圧分散の姿勢

    褥瘡好発部位である仙骨部・大転子部での発生を予防する体位は、原則的に30度側臥位とされています。それは骨突出がなく、広い面積の殿筋で体重を受けられるからです。この体位をとる場合はクッションなどを活用し、できるだけ広い接触面積で姿勢を保持できるようにします。ただし、皮下脂肪および筋肉組織の量は個人差がありますので、30度はあくまでも目安としてください。

    30度側臥位
    記事/インライン画像
    30度側臥位のイメージ
    記事/インライン画像
    30度側臥位の図
    石川治, 田村敦志編集:創傷治療プラクティス:105, 2006より一部改変

    3.体位変換のスケジュール

    2時間ごとにクッションなどを使用して体位変換を行います。時間ごとに体位を決めてスケジュールを立てておきます。患者および介護者の生活リズムに合わせて計画します。

    体位変換スケジュール表
    記事/インライン画像
    体位変換スケジュール表
    石川治, 田村敦志編集:創傷治療プラクティス:104, 2006

    4.背上げ

    膝を曲げてから上半身を起こします。上半身を起こす角度を30度以下にすることにより、皮膚のずれや殿部にかかる力を排除できます。

    背抜き
    衣類や寝具の小さなしわでも皮膚を圧迫するため、褥瘡の原因となります。 背上げを行った後は背抜きを行い、皮膚のずれや衣類、寝具のしわをなくすよう整えます。

    5.仰臥位から側臥位への体位変換

    臥位での体圧分散の注意点

    • 局所の圧力が高まるため、姿勢保持に円坐を使用しない
    • 原則として麻痺側を下にしない。
    • 体位変換後は背抜きや足抜きをし、皮膚のずれや寝具のしわによる圧迫をなくすよう整える。

    体圧分散ケア-坐位の場合

    車いす利用者では、姿勢保持が困難なため円背や骨盤が前方へ滑り落ちることによって、坐骨部や尾骨部の褥瘡発生が助長されます。そのリスクを低減するため、坐位時に高まる殿部にかかる圧力をより広範囲に分散させる目的で行います。

    1.体圧分散の姿勢

    • 関節拘縮、麻痺、円背など、坐位姿勢と患者の身体的特徴の評価(アセスメント)を行います。
    • 体格や病態に応じたサイズの車いす・クッションを選択します。患者に適していないと、姿勢全体の崩れにつながります。
    • 坐面と大腿後面の接触面積を広げるために90度ルール(股関節90度・膝関節90度・足関節90度)を基本とします。
    • 体動可能な患者は15分ごと、できない患者では1時間ごとに除圧を行います。
    坐位姿勢の基本
    記事/インライン画像
    図:坐位での体圧分散

    2.車いすへの移乗

    記事/インライン画像
    矢印
    記事/インライン画像
    矢印

    坐位での体圧分散の注意点

    • 沈み込みによる底突きが起きていないか確認する(クッションと患者の殿部の間に指2本が入るか否か)。
    • 局所の圧力が高まるため、姿勢保持に円坐を使用しない

    体圧分散用具の紹介

    体圧分散に使用する用具には、素材・機能・使用方法別にさまざまなものがあります。各用具の特徴を十分に理解し、患者の状態に適したものを選択しましょう。用具選択や管理方法が不適切な場合、逆に褥瘡を発生させてしまうことがあります。

    体圧分散用具の種類

    〇:長所 ●:短所

    素材 臥位用体圧分散用具の特徴 坐位用体圧分散用具の特徴
    エア
    • 〇マット内圧調整により個々に応じた体圧調整ができる。
    • 〇セル構造が多層(2層と3層あり)のマットレスは低圧保持できる。
    • ●自力体位変換時に必要な支持力(安定感)が得にくい。
    • ●鋭利なものでパンクしやすい。
    • 〇マット内圧調整により個々に応じた体圧調整ができる。
    • ●エアの抜けが起こることがある。
    ウォーター
    • 〇水の量により個々に応じた体圧調整ができる。
    • 〇ヘッドアップ時のずれが少ない。
    • ●患者の体温維持のために、水温管理が必要である。
    • ●水が時間とともに蒸発する。
    ウレタン
    フォーム
    • 〇低反発のものほど圧分散効果がある。
    • 〇反発力の異なるウレタンフォームを組み合わせることで、圧分散と自力体位変換に必要な支持力(安定感)を得られる。
    • ●個々に応じた体圧調整ができない。
    • ●ウレタンフォーム上に身体が沈み込み、自立体位変換に支障をきたす場合がある。
    • 〇低反発のものほど圧分散効果がある。
    • ●年月が経つとへたりが起こり、圧分散力が低下する。
    ジェル(ゲル)
    またはゴム
    • 〇動力を要しない。
    • 〇表面を拭くことができ、清潔保持できる。
    • ●十分な体圧分散効果を得るには厚みが必要であるが、厚みを増やすと重量が増す。
    • 〇ジェルが殿部を包み込み、ずれを防ぐ。
    • 〇表面を拭くことができ、清潔保持できる。
    ハイブリッド
    • 〇2種類以上の素材(エアとウレタンフォーム)の長所を組み合わせることができる。
    • ●体圧分散効果を評価するための十分なデータが不足している。

    日本褥瘡学会編集:在宅褥瘡予防・治療ガイドブック第3版:57, 67, 2015より改変

    エアマットレスの場合、圧の設定が適切かどうか 「底突きの確認」をしながら使用しましょう。

    底突きの確認方法
    記事/インライン画像
    底突きの確認方法

    手の平を上にし、指をまっすぐにして、マットの下に差し込む。
    圧迫されやすい部位の真下に入れること。

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    底突きの確認方法

    示指か中指を曲げてみる。

    記事/インライン画像
    底突きの確認方法
    体圧分散用具の製造・販売会社ホームページへのリンク(50音順)
    会社名 URL
    株式会社ケープ https://www.cape.co.jp/
    株式会社ハートウェル https://hartwell.co.jp/pages/corporate
    パラマウントベッド株式会社 https://www.paramount.co.jp/
    株式会社モルテン https://www.molten.co.jp/health/
    株式会社ユーキ・トレーディング https://www.yukitrading.com/

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