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-マルホと理化学研究所の共同研究-ヘパリン類似物質が皮膚のバリア機能を調節するメカニズムを確認

マルホ株式会社(本社:大阪府大阪市北区、代表取締役社長:杉田 淳、以下、「マルホ」)は、国立研究開発法人理化学研究所(免疫器官形成研究チーム:古関 明彦チームリーダー)との共同研究で、ヘパリン類似物質※1(Mucopolysacccharide polysulfate:MPS)が、表皮の構成細胞であるケラチノサイトの分化亢進及び増殖抑制することにより、未成熟なケラチノサイトを成熟化させることで、外部の病原体やアレルゲンから体を守るバリア機能を亢進することを明らかにしました。さらに、ヘパリン類似物質のその作用に、ケラチノサイトの増殖を促進する因子であるアンフィレグリン(以下、「AREG」)の発現を抑制するだけでなく、ケラチノサイトから産生されるAREGの阻害が関与することを見出しました。これにより、皮膚のバリア機能の回復を目的とした新たな治療戦略が期待されます。
研究成果は、WILEY社のオンライン雑誌、Experimental Dermatologyに掲載されました。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/exd.70000

本研究成果の要点
・ヘパリン類似物質は表皮の構成細胞であるケラチノサイトの分化及び増殖を調節する。
・ヘパリン類似物質はケラチノサイトの増殖を促進する因子であるAREGを制御する。
・AREGの制御は、皮膚のバリア機能を亢進する新しい治療標的となる可能性がある。

研究背景
ケラチノサイトは、皮膚の表皮の構成細胞として外部の病原体やアレルゲンから体を守る機能を有しており、一般に皮膚のバリア機能と呼ばれています。これまで、ヘパリン類似物質がケラチノサイトのバリア機能を調節することが明らかになっていた一方で、その詳細な作用メカニズムは明確ではありませんでした。本研究では、ヘパリン類似物質のケラチノサイトに対する作用を検討し、ヘパリン類似物質が皮膚のバリア機能を調節するメカニズムの解明を目指しました。

試験方法および成果
単層および三次元培養ケラチノサイトにヘパリン類似物質を添加した後にトランスクリプトーム解析※2を実施しました。その結果、ヘパリン類似物質の添加により、ケラチノサイトの分化関連遺伝子(CLDN1 等)の発現が増加し、増殖関連遺伝子(MKI67 等)の発現が減少することが確認されました。さらに詳細なメカニズムを調査したところ、ヘパリン類似物質はAREGの発現を抑制し、かつその作用を阻害することで、分化関連遺伝子の発現を誘導することが分かりました。ケラチノサイトのバリア機能の指標である経上皮電気抵抗値を測定したところ、AREGは経上皮電気抵抗値を低下させ、バリア機能を減弱させる一方で、ヘパリン類似物質はその機能を回復させることが明らかになりました。このことから、ヘパリン類似物質はAREGの阻害を介して皮膚のバリア機能を調節することが示唆されました。

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まとめ
今回の研究によって、ヘパリン類似物質がAREGの発現を抑制すること、AREGを阻害すること、皮膚のバリア機能を調節することを確認しました。AREGを標的とする、皮膚のバリア機能の回復を目的とした新たな治療戦略が期待されます。

皮膚科学領域に特化したスペシャリティファーマであるマルホは、本研究を一層深め、応用し、アトピー性皮膚炎など皮膚のバリア機能障害を引き起こす皮膚疾患に悩む患者さんの笑顔に貢献できるよう取り組んでまいります。

※1 ヘパリン類似物質について国内の医療用医薬品では血行促進・皮膚保湿剤として使用されており、マルホでは「ヒルドイド」の販売名で製造・販売しています。
※2 トランスクリプトーム解析について細胞や組織などに蓄積されるリボ核酸(ribonucleic acid:RNA)の発現量を網羅的に解析する手法です。
マルホ株式会社について大阪市北区に本社を置く、医療用医薬品等の研究・開発・製造・販売を行う製薬企業です。創業は1915年、従業員数は1,566人(2023年9月末)です。2023年9月期の売上高は857億19百万円でした。「あなたといういのちに、もっと笑顔を。」をミッションに掲げ、誰もが笑顔で暮らすことのできる社会の実現を目指しています。
マルホ株式会社についての詳細はwww.maruho.co.jpをご覧ください。
本件に関する問い合わせ先
マルホ株式会社 経営企画部 広報グループ
Tel:06-6371-8831
Email:kouhou@mii.maruho.co.jp

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