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アトピー性皮膚炎を対象としたネモリズマブの国内第Ⅲ相臨床試験(比較試験)結果がThe New England Journal of Medicineに掲載

マルホ株式会社(本社:大阪府大阪市北区、代表取締役社長:高木幸一、以下、マルホ)は、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒を対象として日本国内で実施したネモリズマブの第Ⅲ相臨床試験(比較試験)(以下、本試験)の結果が、The New England Journal of Medicineに掲載されたことをお知らせいたします。

本試験では、中等症~重症のそう痒を有する13歳以上のアトピー性皮膚炎の患者さん215名(ベースラインのそう痒VAS中央値は75.4)が、ネモリズマブ群(60mgを4週ごとに皮下投与)又はプラセボ群(プラセボを4週ごとに皮下投与)に2:1の比でランダムに割り付けられました(ネモリズマブ群143名、プラセボ群72名)。本試験では抗炎症外用薬を併用し、ネモリズマブ投与16週後の有効性と安全性をプラセボと比較しました。



●主要評価項目である投与開始16週後のそう痒VAS変化率は、ネモリズマブ群 -42.8.%に対し、プラセボ群 -21.4%であり、統計学的な有意差が認められました(p値<0.001)。
● 副次評価項目である投与開始4週後までのそう痒VAS変化率の経時推移では、そう痒VAS変化率の減少が投与翌日から確認されました(ネモリズマブ群 -10.3%、プラセボ群 -4.4%)。
投与開始16週後のEASI 変化率はネモリズマブ群 -45.9%に対しプラセボ群 -33.2%でした。DLQIスコア4以下を達成した患者さんの割合はネモリズマブ群40%に対しプラセボ群22%、ISIスコアを7以上改善した患者さんの割合はネモリズマブ群55%に対しプラセボ群21%でした。
● 有害事象の発現率は両群ともに71%であり、ほとんどが軽度あるいは中等度の事象でした。高度な有害事象はネモリズマブ群で3名(2%)に認められました(メニエール病、急性膵炎、アトピー性皮膚炎)。ネモリズマブ投与後に有害事象のため投薬を中止した患者さんは3名で、その内訳は、メニエール病及び円形脱毛症、末梢性浮腫、アトピー性皮膚炎でした。
頻度の高かった有害事象はアトピー性皮膚炎の悪化で、発現率はネモリズマブ群24%、プラセボ群21%でした。注射関連の反応の有害事象の発現率は、ネモリズマブ群8%、プラセボ群3%でした。
● ネモリズマブ群では血清TARCの上昇が認められましたが、血清TARCの上昇とEASI悪化との相関は認められませんでした。


論文の全容についてはhttps://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1917006 をご参照ください。

本論文の第一著者である京都大学大学院医学研究科 皮膚科学教室の椛島健治教授は、「アトピー性皮膚炎の患者さんは、かゆみによる仕事や学業における集中力の低下や睡眠障害などのQOLの低下に苦しんでいます。本試験は、アトピー性皮膚炎のかゆみの作用機序の特定につながる重要な結果をもたらしました。本剤は、アトピー性皮膚炎の患者さんとそのご家族の苦しみ、そしてアトピー性皮膚炎がもたらす社会的損失の軽減につながる可能性があります。」と述べています。

マルホの取締役専務執行役員で研究開発/サイエンス統括の鬼頭康彦は、「本試験において、ネモリズマブの国内アトピー性皮膚炎患者さんにおけるそう痒改善効果が検証されました。
マルホは、ネモリズマブの開発を通じ、アトピー性皮膚炎のかゆみに悩む患者さんのQOL向上に貢献してまいります。」と述べています。


【参考情報】
アトピー性皮膚炎を対象としたネモリズマブの国内第Ⅲ相臨床試験(比較試験)で主要評価項目を達成(2019年4月18日ニュースリリース)

マルホ、中外製薬新規生物学的製剤nemolizumab(CIM331)の皮膚科疾患領域における国内ライセンス契約を締結(2016年9月28日ニュースリリース)

ネモリズマブについて
中外製薬が創製した抗IL-31レセプターAヒト化モノクローナル抗体です。IL-31は、そう痒誘発性サイトカインであり、アトピー性皮膚炎、結節性痒疹および透析患者さんにおけるそう痒の発生に関与していることが報告されています。また、IL-31はアトピー性皮膚炎の病態における炎症惹起及び皮膚バリア機能の破綻への関与も示唆されています。ネモリズマブは、IL-31とそのレセプターの結合を競合的に阻害することにより、IL-31の生物学的作用を抑制し薬効を発揮します。

そう痒VASについて
そう痒視覚アナログスケール(Visual Analogue Scale)の略で、痒みの程度を10cmのスケール(0:かゆみなし、10:想像されうる最悪のかゆみ)上に線を引き、痒みの程度を判定する評価指標です。

EASIについて
Eczema Area and Severity Indexの略で、アトピー性皮膚炎の皮膚所見の重症度と病変範囲から全身のアトピー性皮膚炎の重症度を数値化した評価指標です。

DLQIについて
Dermatology life quality indexの略で、皮膚疾患に特異的なQOL尺度です。

ISIについて
Insomnia severity indexの略で、睡眠に関する患者さんの主観的評価指標です。

TARCについて
血清中のTARC値は、アトピー性皮膚炎の短期病勢のマーカーとして用いられています。

マルホ株式会社について
マルホ株式会社は大阪市北区に本社を置く、医療用医薬品等の研究・開発・製造・販売を行う製薬企業です。
創業は1915年、従業員数は1,537人(2019年9月末)です。 2019年9月期の売上高は803億67百万円でした。 "Excellence in Dermatology"を長期ビジョンとして掲げ、皮膚科学領域での卓越した貢献を目指しています。
マルホ株式会社についての詳細はhttps://www.maruho.co.jp/をご覧ください。

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