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がん性皮膚潰瘍マネジメントの現場から-施設インタビュー-:CASE4.国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科(東京都中央区) 第2回:看護師の目線から


    患者さんや家族のQOL向上を目指し
    皮膚悪性腫瘍の治療に取り組むとともに
    がん性皮膚潰瘍に伴う臭い等の症状にもしっかり対応

    施設データ

    診療科・部門
    皮膚腫瘍科
    チーム体制
    皮膚科医、皮膚腫瘍科外来看護師、各科病棟看護師、薬剤師など
    専従スタッフ
    なし
    記事/インライン画像
    國分晴絵氏

    國分 晴絵 氏
    国立がん研究センター中央病院 看護部

    【略歴】
    一般病院の外科系病棟・内科系病棟を経験後、国立がん研究センター中央病院へ入職。外来スタッフとして主に皮膚腫瘍科を担当。

    皮膚腫瘍科外来におけるがん性皮膚潰瘍ケアの看護体制

    皮膚腫瘍科外来におけるがん性皮膚潰瘍ケアの看護体制を教えてください。

    当院には、がん性皮膚潰瘍ケアの専任制度や医療チームはありません。基本的に、がん性皮膚潰瘍のある患者さんが受診されている外来の看護師がケアを担当します。ただし、乳腺外科や乳腺・腫瘍内科以外の診療科では、がん性皮膚潰瘍ケアの経験があまりないため、皮膚腫瘍科の外来看護師がケアを担当することもあります。

    また、がん性皮膚潰瘍のある患者さんが入院されれば、当該病棟の看護師ががん性皮膚潰瘍のケアにあたります。例えば皮膚悪性腫瘍の患者さんが緊急入院のため消化器外科の病棟に入院した場合でも、皮膚腫瘍科の医師の指示のもと消化器外科病棟の看護師がケアを行うことになっています。

    皮膚腫瘍科外来では、皮膚悪性腫瘍に伴うがん性皮膚潰瘍のケアについて私を含めた2名の看護師がメインで担当しており、医師からの要望に迅速に対応できるよう配慮しています。

    がん性皮膚潰瘍ケアの実際と工夫

    看護師によるがん性皮膚潰瘍ケアの流れを教えて下さい。

    初診時は、レジデントによる予診が終わってから主治医による本診が行われるまでの時間を利用し、他院からの紹介状やレジデントが収集した患者さんに関する情報(家族構成、腫瘍のサイズ、臭いや出血の有無)などから、どのような看護ケアが必要なのかを推察します。

    がん性皮膚潰瘍が認められる場合には、看護師はそのために必要なケア用品をあらかじめ取り揃えて、本診に同席します。準備する薬剤やケア用品は概ねベースとなるものが決まっていて、臭いがあればロゼックスゲルを、出血があれば綿状の止血剤を、滲出液が多ければ低粘着性の吸収パッドやテープ、包帯・ネット包帯などです。診察に同席させていただく際には、老若男女問わず、すべての患者さんに「先生と一緒に看させていただきます」と声がけをしています。

    本診では、医師が患者さんや家族に説明されている診察内容を聞きとりつつ、看護師は看護の視点から、患者さん本人のActivities of Daily Living(ADL)や認知症の有無、潰瘍部の場所や大きさ、付き添いの方が誰かなどをチェックし、自宅でのケアを患者さん本人が継続的にできるか否かを考えます。例えば、患者さんのADLが悪い、認知症がある、患部が背中や頭部にある、患部が大きいなどといった場合は、患者さんが1人でケアを行うことが難しく、誰かのサポートが必要になります。付き添って来られた家族の方にケアをお願いできるのか確認し、できなければ介護保険を使って訪問看護に繋ぐ検討が必要といったことまで想定して、頭の中でケアの進め方を考えておきます。

    このように診察前、診察中に、ある程度、患者さんに必要となるサポートを考えた上で、医師と看護師が一緒にがん性皮膚潰瘍のケアを行います。再診以降は、すでに患者さんの状態が分かっているので、患者さんごとに必要なケア用品を準備しておき、初診時と同様に医師と一緒に潰瘍部の状態を確認して、ケアに入ります。

    記事/インライン画像
    インタビューに応じる國分晴絵氏

    *Activities of Daily Living(日常生活動作; ADL):人が生活を送るために行う活動の能力のこと。移動、階段昇降、入浴、トイレの使用、食事、着衣、排泄などの基本的な日常生活活動度を示す基本的ADLと買い物、食事の準備、服薬管理、金銭管理、交通機関を使っての外出などのより複雑で多くの労作が求められる活動を意味する手段的ADLがある。

    看護師はがん性皮膚潰瘍をどのようにケアされているのですか。

    がん性皮膚潰瘍ケアの具体的な方法を患者さんや家族が理解するには、「百聞は一見にしかず」だと考え、初診時から看護師が患者さんにケア方法を説明しながら実際にケアしていくスタイルをとっています。

    臭いや出血などを伴う潰瘍のケアで一番基本となるのは、感染を防ぐためにしっかりと洗浄することです。ところが、ジュクジュクしていたり、ブヨブヨしていたりする潰瘍部を目にすると、「触ってもいいのだろうか」「触って出血したら、どうすればいいのだろうか」と悩まれ、結局、初診時まで触らないまま、まったく洗浄することなく、潰瘍部をガーゼ等で覆い隠すようにして受診される患者さんが少なからずおられます。

    そこで、潰瘍部は触っても問題ないことや、感染を防ぐためにしっかり洗う必要があることを患者さんと家族に説明するようにしています。「ごしごし洗う必要はなく、お風呂で泡をつけてシャワーで流すだけでも洗うことになります」と説明しながら、実際に、潰瘍部に泡せっけんをつけた上で、シャワーボトルに入れた微温湯で洗い流してしっかりと洗浄して見せます。洗浄後も、「潰瘍部はごしごし拭かずに押さえ拭きしてください」と、実際にガーゼで軽く押さえ拭きします。そばにいる医師からも、洗浄の重要性やそのポイントについて追加で説明していただいています。

    洗浄の際、潰瘍部から出血するような患者さんには、安心していただくために、止血する方法があるので大丈夫だと伝えます。ガーゼで軽く押さえ拭きするときに止血を試みますが、それで止血できなければ、医師と一緒に、綿状の止血剤を用いて止血したほうがいいのか、ガーゼや包帯などで巻いておくだけでも止血できるかなどを考えて、適切な止血処置を行います。

    その上で、滲出液が多ければ低粘着性の吸収パッドを、臭いがあればドレッシング材やガーゼにロゼックスゲルを塗布して、潰瘍部に貼り、テープや包帯、ネット包帯などで固定します。

    潰瘍部を確認した時に、テープを留めていた周囲の皮膚が赤くなっているようであれば、患者さんに痒みや痛みの有無を確認し、痒いようであれば、よりかぶれにくいテープに変更する、肌に直接テープを貼らないようにする、テープの代わりに包帯を使うなど、別の方法を考えて対応します。

    がん性皮膚潰瘍のケアは、自宅で患者さんや家族が1日に何回も行う必要があります。そのため、看護師は、医師とともに、患者さんにとって一番良い解決方法、かつ継続可能な内容のケアを実際に行いながら伝えるようにしています。

    ただし、中には、ケア方法は理解できても、日中は家族が仕事をしているために1日に何回もケアできないというケースもあります。そのような場合は、介護申請の有無をたずね、要介護認定を受けていればケアマネージャーに連絡をとり、ケアのための訪問看護を依頼します。要介護認定を受けていなければ、相談支援センターのソーシャルワーカーと連携して介護申請を行うところから始めます。なお、訪問看護師に対しては、当科の看護師がケアの手順について写真を添付したサマリーで情報提供を行っています。

    がん性皮膚潰瘍ケアにおいて、看護師として何か工夫されていますか。

    患者さんは、医師に対して遠慮されているところがあり、「こんなつまらないことを聞いても大丈夫だろうか」と、質問されることに躊躇されていることが少なくありません。そうした患者さんの思いを汲み取り、医師に伝え、患者さんと医師を繋ぐ役割を果たしていくことが看護師の仕事の1つだと考えています。そのため、ケアの最後には、患者さんに必ず「つまらないことでもいいので、気になったら何でも言ってください」と伝えるようにしています。

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