がん性皮膚潰瘍マネジメントの現場から-施設インタビュー-:CASE3.江南厚生病院緩和ケア病棟(愛知県江南市) 第1回:医師の目線から
がんの進行に伴い壊死、自壊していく皮膚潰瘍に
全人的苦痛の緩和という視点からチーム一丸で対応
施設データ
- 診療科・部門
- 緩和ケア病棟
- チーム体制
- 医師(緩和ケア内科医、内科医・外科医・産婦人科医・耳鼻咽喉科医・歯科口腔外科医などの治療科医師)、がん看護専門看護師/皮膚・排泄ケア認定看護師、がん性疼痛看護認定看護師、薬剤師など
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記事/インライン画像
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永縄 由美子 氏
江南厚生病院 内科(緩和ケア) 緩和ケア病棟医長【略歴】
滋賀医科大学卒業後、複数の病院で消化器内科医として勤務した後に市立室蘭総合病院 緩和ケアチームおよび聖隷浜松病院 緩和医療科を経て、現職。
緩和ケア病棟におけるがん性皮膚潰瘍の特徴
江南厚生病院の緩和ケア病棟には、どのようながん患者さんが入院されていますか。
当院の緩和ケア病棟(20床)に入院されている患者さんのうち、7~8割が院内の診療科からの転入で、残り2~3割が名古屋にある大学病院やがんセンター、江南市及びその近隣の一宮市、小牧市にある病院からの紹介入院です。院内からの転入の場合には、それまでの主治医がそのまま主治医として、緩和ケア科医師が副主治医として併診のかたちをとっており、主治医は毎日、緩和ケア病棟に患者さんの様子を診に来られています。一方、他院からの紹介入院の場合は緩和ケア科医師が主治医になります。
入院の目的は、ゆっくりと療養し最期まで穏やかに生き抜くための入院(看取り入院:2~3ヵ月程度)のほか、身体症状や精神症状による苦痛を和らげるための入院(症状コントロール入院:2週間程度)や在宅療養中の患者さんのご家族の休息を確保するための入院(レスパイト入院:1週間程度)など様々です。ただし、他院から紹介入院の患者さんは看取り入院がほとんどです。
その中で、がん性皮膚潰瘍の患者さんはどのぐらいおられますか。
看取り入院の場合、予後3ヵ月未満の人が多く、症状コントロール入院やレスパイト入院では予後3ヵ月以上を見込める人が比較的多くおられます。入院目的や予後に関わらず、がんの進行に伴って現れる痛みをはじめとする様々な身体的苦痛に加えて、症状に対する恐怖感や死への不安、ボディイメージの変化といった精神的苦痛、社会的苦痛、スピリチュアルペインにも目を向ける、いわゆる全人的苦痛の緩和という視点でマネジメントが必要な患者さんです(図1)。このような患者さんの中に、がん性皮膚潰瘍を有する患者さんもいます。その人数としては、年間で5~6名ほどだと思います。

緩和ケア病棟におけるがん性皮膚潰瘍の患者さんの特徴を教えて下さい。
がん性皮膚潰瘍の原因となるがんは様々ですが、当病棟で最も多いのが頭頸部がんです。私がこちらに着任してから8ヵ月程(取材時)の間に、がん性皮膚潰瘍を有する頭頸部がん患者さんを4~5名経験しています。その他には、乳がん、有棘細胞がんなどの皮膚がん、横紋筋肉腫などの軟部肉腫があります。
がん種によって皮膚潰瘍の状態は異なる傾向があり、皮膚表面に突出した腫瘍が壊死・自壊したのち、それがさらに外側に増大してきのこ状・カリフラワー状に盛り上がっていく場合もあれば、逆に内側の皮膚や神経、骨などの周辺組織にどんどん浸潤していき、皮膚や骨が融解していく場合もあります。それに伴って、疼痛、臭い、滲出液、出血など様々な症状が現れますが、痛みが強い人もいれば、そうでない人もいたり、出血が多い人もいれば、ほとんどみられない人もいたりと患者さん個々によって異なります。
例えば、当病棟に多い頭頸部がんの患者さんは、他のがん種に比べると、①腫瘍が皮膚や骨の内側に浸潤していくような症例が比較的多い、②がん性皮膚潰瘍が目に見える顔面から頸部にかけて拡大していくことから顔貌の変化が著しく、否定的なボディイメージを持ち、見た目の自分らしさに対する喪失感や悲嘆反応を強く示す患者さんが少なくない、③腫瘍の近くに大血管が通っていることが多く、がんが浸潤することにより大出血を起こす危険性が高い、④腫瘍が神経に浸潤することにより難治性で強い痛みが出やすい、⑤創部をガーゼ等で保護するものの、衣服などで隠すことが難しいため、臭いが強いなどの傾向があると感じています。
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