がん性皮膚潰瘍マネジメントの現場から-施設インタビュー-:CASE4.国立がん研究センター中央病院皮膚腫瘍科(東京都中央区) 第1回:医師の目線から
患者さんや家族のQOL向上を目指し
皮膚悪性腫瘍の治療に取り組むとともに
がん性皮膚潰瘍に伴う臭い等の症状にもしっかり対応
施設データ
- 診療科・部門
- 皮膚腫瘍科
- チーム体制
- 皮膚科医、皮膚腫瘍科外来看護師、各科病棟看護師、薬剤師など
- 専従スタッフ
- なし
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記事/インライン画像
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水田 栄樹 氏
国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科 チーフレジデント(取材当時)【略歴】
関西医科大学卒業後、関西医科大学医学部付属滝井病院 皮膚科、東京大学医学部附属病院および国立がん研究センター東病院の形成外科を経て2017年より国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科へ。
皮膚腫瘍科におけるがん性皮膚潰瘍の患者さんの特徴
国立がん研究センター中央病院の皮膚腫瘍科には、どのような患者さんが受診されていますか。
皮膚悪性腫瘍は種類が多く、性質は多岐にわたりますが、皮膚腫瘍科(以下、当科)ではそのすべてを対象に診療を行っています。代表的なものは、悪性黒色腫、有棘細胞がん、基底細胞がん、乳房外パジェット病、血管肉腫などです。
患者さんの多くは、専門的な手術や化学療法による治療を要する希少癌のため、大学病院を含めた他施設では治療経験がないなどの理由で、当科を「治療の最後の砦」として紹介されてきた方です。
その他に、当院の他科でがんの治療を受けられている患者さんのうち、新しくできた皮膚腫瘍が皮膚への転移か否かなどを診断するために生検を目的として受診される患者さんもおられます。乳腺外科、乳腺・腫瘍内科では、乳がんに伴うがん性皮膚潰瘍を診る機会が多く、治療ノウハウも有していますが、その他の診療科ではがん性皮膚潰瘍を診る機会も少ないため、強い悪臭や出血などの症状を生じた場合は治療の依頼を受けることがあります。
皮膚腫瘍科の診療の流れを教えてください。
基本的に当科を受診される患者さんは皮膚悪性腫瘍の治療が目的です。初診時には、まずレジデントが予診を行った上で、主治医が看護師とともに患者さんを診察(本診)し、その後は必要な検査を行うなどして、皮膚悪性腫瘍の治療方針をできるだけ早期に決定し、治療を開始します。皮膚悪性腫瘍の治療に際しては、医師から患者さんに治療方針を説明するとともに、薬物療法を行う場合には薬剤師外来にて薬剤師から患者さんに使用薬剤についての投与スケジュールや効果、副作用など詳しい説明をしていただいています。
また、皮膚悪性腫瘍やがん性皮膚潰瘍に伴って臭いや出血、滲出液、痛みなどが認められた時点から、それらの症状にも対応しています。例えば、初診時点ですでに臭いを伴うがん性皮膚潰瘍を認める場合は、ロゼックスゲルを用いて臭いの軽減をはかりながら、皮膚悪性腫瘍の治療方針を決めています。
他科から皮膚転移か否かの判断で紹介されてきた患者さんの場合、皮膚転移だと分かれば皮膚病変(創傷/潰瘍)に関して当科で処置したり、当該診療科に処置方法をアドバイスしたりすることもありますが、基本的には原発腫瘍の治療による皮膚転移の縮小をめざします。また、他科からがん性皮膚潰瘍の治療で紹介されてきた患者さんは主科でがん治療を行いつつ、当科でがん性皮膚潰瘍の対応にあたっています。
臭いや出血などの症状を伴う患者さんはどのぐらいおられますか。
皮膚悪性腫瘍は腫瘍そのものが表面にでていることが多く、臭いを伴いやすいがんです。中でも、有棘細胞がんは腫瘍そのものが壊死・自壊しやすく、増殖・壊死した角質や、血と痂皮が混じったものが溜まって、皮膚表面がジュクジュクとした状態になります。このような状態では、酸素のない環境を好む嫌気性菌が付着しやすく、早い段階から特有の臭いを発します。また、悪性黒色腫も大きな腫瘍の場合は、内部が虚血状態になって壊死することがあり、腫瘍表面も壊死・自壊し、悪臭を伴うことがしばしばあります。実際、約5cmの腫瘍を有する根治的手術適応の悪性黒色腫の患者さんで、潰瘍部が強い悪臭を伴っておられた方に、臭いの軽減の治療を行った結果、QOLが向上し、前向きに手術に挑まれたという経験をしています。
当科は治療に難渋する有棘細胞がんや悪性黒色腫の患者さんの紹介が多い(2017年度395例中有棘細胞がん40例、悪性黒色腫162例)こともあり、がん性皮膚潰瘍臭に対してロゼックスゲルを使っている患者さんも多くおられます。2019年度は当科だけで約60名に使用しており、その治療ニーズは高めです。

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