Case5 リネイルゲルの実際~臨床で遭遇した症例のご紹介~


<お話を聞いた人>
済生会宇都宮病院 皮膚科 外山雄一先生
IT業界で約12年間働いた後、医師の道へ。とちぎメディカルセンターしもつがで研修医を務め、自治医科大学の皮膚科に入局し、現在に至る。一般企業で働いた経験も活かしつつ、患者さんの目線に立った治療を実践。患者さんが症状を忘れるくらいの“普通の日常生活”を送れるようになることを目指して日々の診療に取り組んでいる。
(解説) リネイルゲルの登場により、治療提案の選択肢が広がりました。今回は、私が臨床で遭遇した巻き爪患者さんの症例や、リネイルゲルの位置づけについて触れていきます。
巻き爪患者さんの望みは「痛みからの早期解放」
- 私が巻き爪治療をはじめた時は、超弾性ワイヤーなどの器具を用いて物理的に彎曲した爪を平らにするといった治療法が主流でしたが、これだけでは治療期間が長期に及んだり、期待する効果が得られなかったりすることもあり、課題を感じておりました。しかしながら、当時はその治療法しかなかったため、どうすることもできない日々が続いていました。そんな時に登場したのが、リネイルゲルです。矯正器具による物理的な矯正と組み合わせて薬剤を使用する今までにないアプローチで、少し希望が見えたのを今でも覚えています。
- それ以降、当院の巻き爪矯正治療は、リネイルゲルありきの治療となり、リネイルゲルの発売をきっかけに巻き爪マイスターも導入しました。初診から両者を併用していますので、巻き爪マイスター単独の治療を患者さんに紹介することは基本的にありません。リネイルゲルの治療期間の短縮が期待できる1)という点と、多くの患者さんの望みである“痛みから早く解放されること”は、患者さんの要望にマッチしていることから、両者を併用する矯正治療が“標準的な治療”であると考えています。
リネイルゲルの適応症例について
- 当院に来院される巻き爪患者さんの年齢層は、40代以降と比較的高齢の方が多く、70歳以上の方が半数以上を占めております。また、男性よりも女性の割合のほうが多いです。
- 実際にリネイルゲルを処方した患者さんの症例写真(※治療前)をピックアップしております。いずれの症例も遠位爪幅狭小化率※(以下、狭小化率)20~50%程度で、リネイルゲルの第Ⅲ相臨床試験1)に登録された患者さんと同じくらいの数値となっています。また、リネイルゲルは1包0.5gで、第1趾の巻き爪1回分使い切りとなります。使用された方の中では、量が多い印象を持たれた方もいらっしゃるかもしれないですが、すべて使い切っていただき、爪甲にたっぷりと塗布することが重要です。
- 私は、治療に入る前に、症状の進行具合によってはリネイルゲルを追加塗布する場合もあることを説明し、発生し得る費用を予め見積もっていただくようにしています。特に、硬い爪や狭小化率が20~30%といった比較的重度の巻き爪の患者さんは、複数回塗布した方が効果が得られることもありますので、最初の説明は特に重要であると考えています。
※遠位爪幅狭小化率
爪甲表面に沿って計測した爪の横幅(A:実寸幅)で、彎曲による実際の横幅(B:爪甲遠位での両側縁幅)を除し、どの程度爪が彎曲しているかを表す評価法。狭小化率の値が小さいほど爪の彎曲が強いことを示す。

<当院を受診した巻き爪患者さんの症例写真 ※抜粋>







まずは成功体験を積み、段階的に応用症例にもトライしていく
- どの医薬品にも通ずることですが、新しい製剤を導入して間もないあいだは使用するにあたって迷ったり戸惑ったりすることも多いと思いますので、まずは前述のような典型例の患者さんからトライして、成功体験を積んでいくのもひとつです。成功体験を積み重ねることで、自信が蓄積され、さらには適応症例の見極めにも繋がると思います。実際に、私が経験した症例の中で、下記のような根元から強く巻いていて硬い爪や、爪の中央部が厚く辺縁が薄い爪、爪白癬を合併している爪は、典型例に比べて改善に時間を要しました。この発見は、症例を重ねたからこそ分かった結果であり、次の一手を考えるきっかけにもなりますので、前向きにとらえています。


辺縁が薄い症例

(最後に) リネイルゲルの併用によって、痛みからはやく解放されることや、矯正具を早く外せることで患者さんのQOLの向上に大きく寄与すると考えています。自費診療というハードルもありますが、費用対効果を理解いただいて、巻き爪で悩まれている患者さんに広く普及されることを望んでいます。
- 社内資料:巻き爪患者を対象とした第Ⅲ相臨床試験 (承認時評価資料)
2025年7月取材