皮膚外用薬 レシピの特徴 Fishbone 特性要因図:②添加方法
次に、Fishbone 特性要因図の②添加方法について紹介します。
![Fishbone 特性要因図:②添加方法](/medical/sites/files/images/articles/inline/fishbone_addition.png)
ここでは、クリーム剤を例に挙げて、成分の投入順序や主薬相温度が皮膚外用薬の製剤品質や特性を決定する要因となることを説明します。
クリーム剤 ~W/OとO/W~
クリーム剤は、油相と水相のいずれかの相に主薬を加えて、それぞれを加温し、油相および水相を合わせて全体が均一になるまでかき混ぜる乳化過程を必要とします。主な乳化タイプには油中水型(W/O)と水中油型(O/W)があり、乳化タイプによってクリーム剤の特徴が異なります。
![クリーム剤の乳化タイプ](/medical/sites/files/images/articles/inline/img_emulsification.png)
W/Oクリーム剤の特徴と乳化フロー
W/Oクリームは、外相が油であるため、一般的にしっとりとした使用感で、被覆性に優れます。医療用医薬品の皮膚外用薬では、ヘパリン類似物質クリーム(ヒルドイド®ソフト軟膏0.3%)2)、ジフルコルトロン吉草酸エステルクリーム(ネリゾナ®ユニバーサルクリーム0.1%)3)、尿素軟膏(パスタロン®ソフト軟膏10%、20%)4)5)などがW/Oクリームです。
W/Oクリームの調製には、図2のような乳化法が用いられます。界面活性剤、水(アミノ酸など)によるゲル状物質に油を分散させ、さらに水を加えて安定な乳化物を得る方法です。つまり、油・界面活性剤に水を添加する乳化方法です。
![図2 W/O乳化のフロー図](/medical/sites/files/images/articles/inline/img_wo_flow.png)
O/Wクリーム剤の特徴と乳化フロー
一方、O/Wクリームは、外相が水であるため、皮膚の冷却による消炎・止痒が期待でき、さっぱりとした使用感が特徴です。ちなみに、医療用医薬品の皮膚外用薬は、O/Wクリーム剤が大部分を占めています。O/Wクリームの調製は、W/Oクリームとは異なり、図3のように親水性、親油性のバランスが釣りあっている3相領域(油相、水相、界面活性剤相)が出現する転相(注)温度付近で水相に油相、界面活性剤相を添加し、冷却する乳化方法が用いられます。
(注)転相:ある温度で急に粘度が増し、再び減少すること。O/WからW/Oへ変化すること、または、その逆に変化する現象のこと。
![図3 O/W乳化のフロー図](/medical/sites/files/images/articles/inline/img_ow_flow.png)
②添加方法<まとめ>
皮膚外用薬は、用いられる主薬・基剤によって最適な製剤設計が行われます。特に乳化工程を伴う場合は、主薬・基剤を投入する順序や主薬を含む相の温度など様々な要因が複雑にかかわってきます。
- 出典:
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- ヒルドイド®ソフト軟膏0.3%インタビューフォーム
- ネリゾナ®ユニバーサルクリーム0.1%インタビューフォーム
- パスタロン®ソフト軟膏10%インタビューフォーム
- パスタロン®ソフト軟膏20%インタビューフォーム