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皮膚外用薬 レシピの特徴 Fishbone 特性要因図:①基剤


はじめに、Fishbone特性要因図の①基剤について紹介します。

Fishbone 特性要因図
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Fishbone特性要因図の①基剤

皮膚外用薬は、主薬が同じであっても、基剤の製造メーカーやグレードの違いによって品質に違いが生じることがあります。基剤によって主薬の皮膚に対する浸透度の調整、使用感の向上など、様々な工夫を加えることができます。このような工夫が、皮膚外用薬のアドヒアランス向上につながると考えられます。ここでは、皮膚外用薬の基剤として最もよく使用されるワセリンを取り上げて説明します。

白色ワセリン ~延びやブリーディングの違いについて~

ワセリンは、図1のような工程で精製されます。日本薬局方には黄色ワセリンと白色ワセリンが収載されていますが、医薬品で「ワセリン」と称する場合は、脱色・精製された白色ワセリンを指すことが一般的です。この白色ワセリンは、メーカー毎に融点、粘度などが異なっており、微量に含まれる不純物(過酸化物)を除去した高精製白色ワセリンも販売されています。
このように、皮膚外用薬の基剤としてよく使用される白色ワセリンには多くの選択肢が存在しますが、その違いによって展延性(注)やブリーディング(注)などに差異がでる可能性があります。

(注)展延性:塗布時の延びを示す。

(注)ブリーディング:成分の融点の違いなどにより、低融点の油がにじみ出ること。

図1 ワセリンの精製工程
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図1 ワセリンの精製工程

表1は、製造メーカーが異なる白色ワセリンの展延性を、スプレッドメーター(注)を用いて比較した試験の結果1)です。白色ワセリンの延びは、製品により少しずつ異なることが分かります。延びの違いは、使用感や被覆性に影響します。

(注)スプレッドメーター:試料の展延性を簡便に評価するための計器。2枚の平行な平板で試料をはさみ、試料が広がる速度より、延びを調べる。

表1 白色ワセリン群の延び(出典1より一部改変)

品 名 傾 き
白色ワセリンA 0.19
白色ワセリンB 0.46
白色ワセリンC 0.25

〈 評価方法 〉
スプレッドメーター(ガラス板:111.4g×2枚)の目盛板の中央に試料0.5cm3を充填し、5、10、20、30、50、100、200秒後の試料上下の半径(広がり)を測定し、3回の平均値を求めた。測定時間と広がりの関係を表す近似直線の傾きより、展延性を評価した。

傾きが大きいほど、延びが相対的に大きいことを示す。

スプレッドメーターによる展延性の評価

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ガラス板
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使用方法

表2は、ブリーディングの違いについて検討した結果1)です。白色ワセリンDは、30℃で4週間保管した場合のブリーディング率が、高精製の白色ワセリンBよりも大きくなりました。
日本薬局方の規格に適合する白色ワセリンであっても、その精製度が異なるとブリーディングに違いが出てくる可能性を示す結果となっています。

表2 濾紙法によるブリーディングの検討(出典1より一部改変)

品 名 ブリーディング率(%)
Initial 30℃4週間保管時
白色ワセリンB 1.2 1.1
白色ワセリンD 1.5 2.3

〈 評価方法 〉
試料を濾紙上に約0.3g採取し、液状成分を濾紙にしみ込ませたあとにスパーテルで拭きとった。この濾紙をエタノールをしみ込ませた紙で1回拭き取り、40℃に設定した器具乾燥機で10分間乾燥させた。乾燥後の濾紙の質量から製剤秤量前の濾紙質量を引いた値を、液状成分のブリーディング量とした。

白色ワセリンのブリーディング

白色ワセリン
(通常)
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白色ワセリン (通常)
白色ワセリン
(ブリーディング有り)
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白色ワセリン (ブリーディング有り)

白色ワセリン以外にも脂肪酸高級アルコール類(セタノール、ステアリルアルコールなど)、高級脂肪酸類(ミリスチン酸、ステアリン酸など)、脂肪酸エステル類(ミツロウ、サラシミツロウなど)などの基剤があり、皮膚外用薬の感触の調整や乳化効果を期待して汎用されています。

①基剤〈まとめ〉

白色ワセリンを例に、皮膚外用薬の基剤は、製造メーカーやグレードの違いにより展延性やブリーディングの程度に違いがあることを説明しました。皮膚外用薬は、これらの点を考慮して適切な基剤を選択し、最適な処方で製造されています。
なお、皮膚外用薬は単剤で使用することが原則ですが、臨床現場では混合することもあります。その場合は、軟膏同士か基剤の性質が近いもの同士を選択して行うのが一般的です。ただし、同様にみえる基剤同士でも、使用しているワセリンの精製度やその他の添加剤の違いによって使用感やブリーディングの程度が異なる可能性があります。また、同じ種類の添加剤を用いていても、添加するわずかな量の違いによって、混合時に分離を起こすこともあります。

豆知識:皮膚外用薬の基剤 ~サラシミツロウについて~

サラシミツロウは、ミツバチの巣から得たロウを精製したミツロウを漂白したものです。精製により、天然のロウに含まれるアルデヒド、低級アルコール、低級脂肪酸等の不純物が除去されます。
サラシミツロウは、一般的にクリーム剤の乳化剤として添加されます。基剤にサラシミツロウを含む製剤は、固着性や被覆性が高まります。

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蜂の巣
出典:
  1. 社内資料 ブリーディングと展延性に及ぼす白色ワセリンの違いの影響

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