メインコンテンツに移動

褥瘡の疫学


    総監修:
    • 群馬大学 名誉教授 石川 治 先生
    監修:
    • 医療法人社団廣仁会 札幌皮膚科クリニック 安部 正敏 先生
    • 訪問看護ステーション 有限会社きらくな家 代表 中里 貴江 先生

    有病率

    日本褥瘡学会実態調査委員会によって行われた調査における褥瘡有病率を施設区分ごとにみると、病院0.80〜0.81%、介護保険施設0.77〜1.16%、訪問看護ステーションは1.93%でした。

    療養場所別褥瘡有病者数と発生場所
    記事/インライン画像
    療養場所別褥瘡有病者数と発生場所

    褥瘡会誌(Jpn J PU), 20(4): 423〜445, 2018

    ※調査の概要

    【調査対象】
    過去3 回の調査と同様に各都道府県にある病院、介護老人福祉施設と介護老人保健施設(以下、介護保険施設とする)、訪問看護ステーションから調査施設を選択し、調査施設において褥瘡管理を受けている療養者を対象とした。
    【調査期間】
    2016年10月中で各施設にて任意に設定した1日を調査日とした。
    【調査方法】
    調査に関する同意が得られた施設に対し回答を求めた。回答には、前回同様に電子調査システムを活用した。調査に関する同意が得られた施設に対してログイン用のID とパスワードを付与し、日本褥瘡学会のホームページを介して無記名式選択肢回答型フォームを用いて調査を行った。なお、電子調査システムの利用が困難な施設においては、無記名式選択肢回答型質問紙を送付し、郵送による返信にて回収した。
    【分析】
    褥瘡有病率と褥瘡推定発生率の算出は、2006年6月に褥瘡学会が公表した方法に準拠し算出した。個々の施設の褥瘡有病率、褥瘡推定発生率を算出し、つぎに病院、介護保険施設、訪問看護ステーションの療養場所別に褥瘡有病率、褥瘡推定発生率の平均値と、Wilson score intervalを用いた95%信頼区間を算出した。
    【調査の限界と有効性】
    本調査は、対象施設の選択も前回同様に非確率的抽出法により行ったので、本調査により得られた有病率や褥瘡推定発生率をわが国全体の指標とするには十分考慮する必要がある。さらに、推定発生率は、疫学上は発生褥瘡の有病率を示している。そのため、初回調査よりは褥瘡治療が進歩し早期治癒が可能になってきているため、褥瘡の発生率が一定であっても調査日前に治癒する褥瘡が増えると発生褥瘡の保有は減少するという現象が起こりうる。

    褥瘡会誌(Jpn J PU), 20(4): 423〜445, 2018より一部改変

    2002年10月の診療報酬改定に伴う褥瘡対策未実施減算施行により、褥瘡治療に関してどの程度実効が上がったかを検証した調査を紹介します(2004年日本褥瘡学会実態調査委員会実施)。褥瘡の有病率について未実施減算導入前後の推移をみると、院内発生褥瘡と総褥瘡が施策導入前の2002年9月以前と比較して2003年10月ごろで有意に減少しました。

    全施設における有病率(患者1000対)
    有病率:院内発生褥瘡
    (95%信頼区間)
    有病率:持込褥瘡
    (95%信頼区間)
    有病率:総褥瘡
    (95%信頼区間)
    2002年9月以前
    総施設数: 797
    総患者数: 166207
    27.7
    (26.9-28.5)
    2002年9月以前
    総施設数: 796
    総患者数: 164865
    13.4
    (12.8-14.0)
    2002年9月以前
    総施設数: 907
    総患者数: 206682
    42.6
    (41.8-43.5)
    2002年10月以降
    総施設数: 957
    総患者数: 209188
    26.5
    (25.8-27.2)
    2002年10月以降
    総施設数: 943
    総患者数: 205543
    13.1
    (12.6-13.6)
    2002年10月以降
    総施設数: 1058
    総患者数: 239009
    41.8
    (41.0-42.6)
    2003年4月ごろ
    総施設数: 1090
    総患者数: 245662
    25.6
    (25.0-26.2)
    a
    2003年4月ごろ
    総施設数: 1091
    総患者数: 247276
    13.1
    (12.7-13.6)
    2003年4月ごろ
    総施設数: 1199
    総患者数: 279220
    39.5
    (38.8-40.2)
    a, b
    2003年10月ごろ
    総施設数: 1168
    総患者数: 266587
    23.1
    (22.6-23.7)
    a, b, c
    2003年10月ごろ
    総施設数: 1160
    総患者数: 263467
    12.7
    (12.3-13.2)
    2003年10月ごろ
    総施設数: 1262
    総患者数: 294556
    36.4
    (35.7-37.0)
    a, b, c

    a:2002年9月以前 b:2002年10月以降 c:2003年4月ごろ a, b, c:p<0.05

    [各有病率の算出方法]
    ある特定の日の入院患者1000人に対する褥瘡患者の割合とし、以下の計算式を使用した。

    • 総褥瘡有病率=総褥瘡患者数/入院患者総数×1000
    • 院内発生褥瘡有病率=院内発生褥瘡患者数/入院患者総数×1000
    • 持込褥瘡有病率=持込褥瘡患者数/入院患者総数×1000

    宮地良樹ほか:日本褥瘡学会誌:8(1), 94, 2006より一部改変

    MEMO

    褥瘡対策未実施減算とは

    厚生労働省により「医療安全管理体制の整備や褥瘡対策が行われていない場合には、入院基本料から減算する」ことを明示した制度。以下の要件をすべて満たしていない場合、入院基本料から減算される。

    1. 当該保険医療機関において、褥瘡対策に係る専任の医師、看護師から構成される褥瘡対策チームが設置されていること。
    2. 当該保険医療機関における日常生活の自立度が低い入院患者につき、褥瘡対策に関する診療計画を作成し、褥瘡対策を実施すること。
    3. 患者の状態に応じて、褥瘡対策に必要な体圧分散式マットレスなどを適切に選択し使用する体制が整えられていること。

    保有部位

    最も多い褥瘡の部位はその他をのぞくと、8施設中6施設(一般病院、療養型病床を有する一般病院、大学病院、小児専門病院、介護老人保健施設、訪問看護ステーション)で仙骨部という結果でした。精神病院では踵部、介護老人福祉施設では尾骨部が最も多いという結果でした。

    療養場所別褥瘡の保有部位
    記事/インライン画像
    療養場所別褥瘡の保有部位

    褥瘡会誌(Jpn J PU), 20(4):423〜445, 2018

    深さ

    最も多い総褥瘡の深さは、8施設中7施設(一般病院、療養型病床を有する一般病院、大学病院、小児専門病院、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、訪問看護ステーション)ではd2(真皮までの損傷)でした。
    精神病院ではD3(皮下組織までの損傷)が最も多く、D3(皮下組織までの損傷)とD4(皮下組織を越える損傷)とD5(関節腔、体腔にいたる損傷)の全層損傷の占める割合が最も高かったのは、精神病院の54.5%でした。

    療養場所による発生場所別の褥瘡の深さ
    記事/インライン画像
    療養場所別褥瘡の保有部位
    The referenced media source is missing and needs to be re-embedded.

    褥瘡会誌(Jpn J PU), 20(4):423〜445, 2018

    有病者の特徴

    褥瘡有病者は次のような特徴を有していることが明らかになりました。

    褥瘡有病者の特徴
    年齢 一般病院、大学病院、精神病院では75~84歳の占める割合が最も多かった。
    性別 男女比は、一般病院、大学病院では、男性の割合が半数を超えていた(各54.8%、59.2%)。一方、療養病床を有する一般病院、精神病院、小児専門病院、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、訪問看護ステーションでは、女性の割合が半数を超えていた(各50.7%、53.3%、51.3%、64.6%、71.6%、57.0%)。
    日常生活
    自立度
    療養場所別で最も多い日常生活自立度は、8施設中全施設がC2の自力で寝返りもうてない(一般病院63.4%、療養型病床を有する一般病院73.3%、大学病院54.5%、精神病院33.3%、(B2と同数)、小児専門病院71.8%、介護老人福祉施設62.5%、介護老人保健施設40.2%、訪問看護ステーション44.0%)であった。

    日本褥瘡学会, 褥瘡会誌(Jpn J PU), 20(4):423-445, 2018

    お問い合わせ

    お問い合わせの内容ごとに
    専用の窓口を設けております。

    各種お問い合わせ

    本サイト上の情報・文書・商標・サービスマーク・意匠・商号・映像や画像など全ての内容にかかる権利は、著作権法および商標法等により保護されています。
    それらの利用は非営利目的かつ個人的利用の場合に限り、複写、ダウンロードまたは印刷を行う範囲で認められます。それ以外の複製・頒布・改変・公衆送信(再利用および転送などを含む)等の目的での使用は認められません。詳細はウェブサイト利用規約│マルホ株式会社にてご確認ください。

    Dermado デルマド 皮膚科学領域のお役立ち会員サイト

    医学賞 マルホ研究賞 | Master of Dermatology(Maruho)

    マルホのサイトがもっと便利に!今すぐマイページをチェック!

    Web会員サービス

    ページトップへ