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褥瘡の分類


    総監修:
    • 群馬大学 名誉教授 石川 治 先生
    監修:
    • 医療法人社団廣仁会 札幌皮膚科クリニック 安部 正敏 先生
    • 訪問看護ステーション 有限会社きらくな家 代表 中里 貴江 先生

    色調分類

    深い褥瘡の治癒過程は、褥瘡の創面の色に反映します。通常は黒色期→黄色期→赤色期→白色期の順で推移します。色調分類を前述の治癒過程に照らしてみると、黒色~黄色期は炎症期、肉芽形成が進む赤色期は増殖期、白色期は上皮化が進み肉芽組織も成熟する時期にほぼ対応すると考えられます。

    創面の色調による褥瘡の病期分類
    記事/インライン画像
    創面の色調による褥瘡の病期分類
    宮地良樹, 真田弘美:「ガイドラインを読む」シリーズ褥瘡局所治療ガイドライン編:15, 2009より改変

    DESIGNツール

    2002年、日本褥瘡学会学術教育委員会により、褥瘡状態判定スケール「DESIGN(デザイン)」が開発されました。これは褥瘡創面を6項目で評価するものです。それぞれの頭文字をとって「DESIGN」とし、ポケットがある場合は、最後にPが追加され7項目となります。

    DESIGNは重症度分類用と経過評価用に分けられ、重症度分類用は軽度-重度で区分し、軽度は小文字、重度は大文字の頭文字で記載します。

    DESIGNの項目
    Depth 深さ
    Exudate 滲出液
    Size 大きさ
    Inflammation/Infection 炎症/感染
    Granulation tissue 肉芽組織
    Necrotic tissue 壊死組織
    Pocket ポケット

    経過評価用では各項目を細分化してスコア化し、重症度が高ければ高スコアとなります。深さ(Depth: d/D)の数値は重み値に関係せず、EからPまでの6項目に異なる点数をつけて合計0~66点とします。

    2020年版ではDの項目に「DTI: 深部損傷褥瘡(DTI)疑い」とIの項目に「3C: 臨界的定着疑い(創面にぬめりがあり、滲出液が多い。肉芽があれば、浮腫性で脆弱など)」が追加されました。DESIGN-R®による評価は2002年より利用されており、蓄積されたデータを継続して評価できるように、項目追加に伴う採点方法の変更は行われませんでした。

    DESIGN-R

    DESIGN-R®2020 褥瘡経過評価用
    記事/インライン画像
    DESIGN-R®2020 褥瘡経過評価用
    褥瘡状態評価スケール 改訂DESIGN-R®2020コンセンサス・ドキュメント

    深達度分類

    褥瘡の深達度による分類は、1975年のShea分類に始まり、Campbell分類、IAET分類などさまざまな方法が発表されてきました。我が国では1998年の「褥瘡の予防・治療ガイドライン」において、深達度をⅠ度からⅣ度の4段階に分類する方法が考案されました。その後、更に検討が進み、最新の2008年改訂版DESIGN-Rでは7段階評価となっています。

    褥瘡の深達度は、米国褥瘡諮問委員会(National Pressure Ulcer Advisory Panel: NPUAP)の提唱するステージングシステムに準じてステージI(消退しない発赤)からステージIV(骨、腱、筋肉の露出を伴う全層組織欠損)に分類されてきました。しかし、ステージという言葉はIからIVに段階的に進んでいく印象や、治癒過程においてIVがIに軽快していく印象を与える可能性があります。そこで、2009年に欧州褥瘡諮問委員会(European Pressure Ulcer Advisory Panel: EPUAP)と共同で新しい分類を提唱しました。それがカテゴリ分類です。この分類は国際的に使用されており、わが国においても今後ますます一般的になるであろう、と在宅褥瘡予防・治療ガイドブックでは記載されています。

    この分類には「分類不能」および「深部組織損傷疑い」の2つのカテゴリが追加されています。

    壊死組織によって創面が覆われている場合に深達度が判定できない症例については、DESIGN-R®でも「DU:深さ判定が不能(判定不能)」として記載することになりました。

    一般社団法人 日本褥瘡学会(編); 在宅褥瘡予防・治療ガイドブック第3版, 2008; 株式会社 照林社.
    褥瘡の深達度分類の比較
    DESIGN-R®2020
    Depth”深さ”
    International NPUAP/EPUAP褥瘡分類システム
    (2009、2014)
    d0
    皮膚損傷・発赤なし
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    d1 持続する発赤
    d1
    持続する発赤
    カテゴリー/ステージI:消褪しない紅斑
    通常骨突出部位に限局する消褪しない発赤を伴う、損傷のない皮膚。暗色部位の明白な消褪は起こらず、その色は周囲の皮膚と異なることがある。当該部位は、隣接する組織と比較して、痛み、硬さ、柔らかさ、暖かさ、または冷たさを感じる場合がある。カテゴリー/ステージIは、肌の色が濃い人では判別が難しい場合がある。
    「リスクを有する」人を示している可能性がある(リスクの前兆)。
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    d2 真皮までの損傷
    d2
    真皮までの損傷
    カテゴリー/ステージII:部分的な真皮の厚さの喪失
    真皮の部分的な厚さの喪失は、脱落を伴わずに、赤ピンク色の創傷底を伴う浅い開放性潰瘍として現れる。また、無傷または開放/破裂した血清で満たされた水疱として現れる場合もある。脱落やあざを伴わず、光沢があるかまたは乾燥した浅い潰瘍として現れる。*このカテゴリ/ステージは、皮膚裂傷、テープによる熱傷、会陰部の皮膚炎、浸軟または擦過傷の説明には使用できない。
    *打撲傷は深部組織損傷の疑いを示す。
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    D3 皮下組織までの損傷
    D3
    皮下組織までの損傷
    カテゴリー/ステージIII:全層組織欠損
    全層組織欠損であり、皮下脂肪は見える場合があるが、骨、腱、筋肉は露出していない。スラフが存在する場合があるが、組織欠損の深度がわからなくなるほどではない。ポケットや瘻孔が存在する場合がある。カテゴリー/ステージIIIの褥瘡の深度は解剖学的部位によって異なる。鼻梁、耳、後頭部、くるぶしには皮下組織がないため、カテゴリ/ステージIIIの褥瘡は浅い場合がある。対照的に著しい肥満部位では非常に深いカテゴリ/ステージIIIの褥瘡が発生する可能性がある。骨/腱は見えず、直接触知はできない。
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    D4 皮下組織を超える損傷
    D4
    皮下組織を超える損傷
    カテゴリー/ステージIV:全層組織欠損
    骨、腱、または筋肉が露出を伴う全層組織欠損。創底の一部に壊死組織または痂皮が存在する場合がある。多くの場合、ポケットや瘻孔が存在する。カテゴリー/ステージIVの褥瘡の深度は解剖学的部位によって異なる。鼻梁、耳、後頭部、およびくるぶしには皮下組織がないため、これらの潰瘍は浅い場合があります。カテゴリー/ステージIVの褥瘡は、筋肉や支持構造(筋膜、腱、関節包など)にまで広がる可能性があり、骨髄炎を引き起こす可能性がある。骨/腱の露出が見られ、直接触知が可能である。
    D5
    関節腔、体腔に至る損傷
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    DDTI 深部損傷褥瘡(DTI)疑い
    DDTI
    深部損傷褥瘡(DTI)疑い
    深部組織損傷疑い:深さの判別が不能
    圧力や剪断による下層の軟部組織の損傷を原因とし、紫色または栗色に変色した無傷の皮膚または血腫が局所的に存在する。隣接する組織と比較して、痛み、硬さ、柔らかさ、滲出液、暖かさ、または冷たさのある組織の存在が先行する。深部組織の損傷は、肌の色が濃い人では判別が難しい場合がある。進行すると黒色の創底が薄い水疱に覆われる場合がある。さらに進行すると、薄いエスカーで覆われる場合がある。最適な治療を行っても、進行が速く、組織層の露出が進行する場合がある。
    記事/インライン画像
    DU 壊死組織で覆われ深さの判定が不能
    DU
    壊死組織で覆われ深さの判定が不能
    判定不能:深さの判別が不能
    創底で、潰瘍の底面がスラフ(黄色、黄褐色、灰色、緑磯、または茶色)および/またはエスカー(黄褐色、茶色、または黒色)で覆われている全層組織欠損。スラフおよび/またはエスカーが十分に取り除かれ創底が露出しなければ正しい深度、つまりはカテゴリー/ステージが判別できない。踵の安定したエスカー(乾燥、定着しており、紅斑や変動のない無傷状態)は、「身体の(生物学的な)自然な覆い」として機能しているため除去するべきではない。

    一般社団法人 日本褥瘡学会(編); 褥瘡状態評価スケール 改訂DESIGN-R®2020コンセンサス・ドキュメント, 2020; 株式会社 照林社.

    European Pressure Ulcer Advisory Panel, National Pressure Injury Advisory Panel and Pan Pacific Pressure Injury Alliance. Prevention and Treatment of Pressure Ulcers/Injuries: Clinical Practice Guideline. The International Guideline. Emily Haesler (Ed.). EPUAP/NPIAP/PPPIA: 2019.より作成

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