自由診療の「今」に迫るインタビューシリーズ PINCER NAILS Vol.2 巻き爪矯正治療は、医師と看護師の「連携で効率化を!」
爪の病気は専門性が要求される領域であり、さらに、巻き爪矯正治療は実施できる医療機関が限られています。だからこそ、爪を診ることができる医療機関は患者さんにとって貴重であり、クリニックの信頼度を高めることにもつながると考えています。大阪市内を中心に8診療所を展開している当グループは、医師と看護師の密な連携で日々の診療に取り組んでいます。特に、自由診療である巻き爪矯正治療は、診察、費用の説明、施術、生活指導など、多くの工程を経る必要があり、医師と看護師の連携で効率化することが不可欠です。巻き爪で悩む患者さんがひとりでも多く笑顔になれるよう、今後も巻き爪の啓発を積極的に行っていきたいと思います。
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- 監修:
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- 医療法人晃有会 ササセ皮フ科 理事長 笹瀬 晃弘 先生
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- 監修:
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- 看護師 原田 美紀 様
2024年2月取材
Q1:貴院で行っている自由診療について教えてください。
- 当グループでは、「きれいに治す」をモットーにしており、美容皮膚には力を入れています。
ササセ皮フ科の主な自由診療メニュー
- ・シワ・たるみ(ヒアルロン酸ジェル注入・A型ボツリヌス毒素注射、高周波+超音波、レーザー各種など)
- ・シミ・くすみ(Qスイッチルビーレーザー、フォトフェイシャル(M22)、フォトRF、イオン導入、超音波導入など)
- ・ニキビ・ニキビ跡・毛穴(ケミカルピーリング、レーザー各種、イオン導入など)
- ・脱毛(レーザー・針)
- ・男性型脱毛症・薄毛
- ・巻き爪矯正治療
Q2:巻き爪矯正治療を始めたきっかけは何ですか?
- 元々、巻き爪や陥入爪で悩まれる患者さんは多く、その悩みに応えたいという思いから始まりました。
- 20年くらい前になりますが、巻き爪に対して有益な治療法を探したときに、超弾性ワイヤによる矯正治療があると知り、診療メニューに取り入れました。陥入爪の場合は、フェノール法等の処置がありますが、基本的に爪は温存させた方がよいため、矯正治療で治るのであれば、それに越したことはありません。
Q3:巻き爪矯正治療を行う意義・メリットをどのように考えていますか?
- 陥入がない巻き爪の場合は矯正治療が第一選択と考えています。また、見た目を気にして来院される方も多いので、爪を元の状態の形に近づけられるのはメリットのひとつだと思います。
- 患者さんの中には、爪がかなりわん曲していることで自分で爪を切ることが難しい方や、怖くて切れないという方がいます。爪を切るために何度も通院していただくのも不便ですので、状況をみて矯正治療をご案内することもあります。
- 経営方針として、「他ではやってくれないことをしてくれる。皮膚のことなら何でも相談できる」というクリニックを目指しているので、ニーズの高い巻き爪治療は導入価値があると考えています。
- 当院は、「あそこでは爪を診てくれる」と患者さん同士の口コミが広がり、相談に来られる方が増えました。爪の診察から別の疾患がみつかることもありますし、矯正治療を終えた方が別の皮膚疾患で相談に来られるなど、かかりつけ医として機能するケースもあります。
Q4:医師と看護師で巻き爪矯正治療をどのように分担されていますか?
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- ①医師は、診察の中で矯正治療が適切と判断したら、治療法・費用の目安といった基本的な内容を説明します。症例写真を提示することで患者さんの理解も早くなります。医師からはここで患者さんに意思決定を迫らず、看護師にバトンタッチします。
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- ②看護師と患者さんは別室に移動し、当院が作成した同意書に基づいてカウンセリングと費用の詳細について説明します(表参照)。時間がとれる場合はその日のうちに施術に進むこともありますし、後日予約を取っていただくこともあります。
- ③巻き爪マイスターとリネイルゲルによる矯正治療は、医師の指示のもと、看護師による装着・投薬が可能ですので、そのまま看護師が施術します。巻き爪マイスターは、どんな爪のサイズの患者さんが来院しても対応できるよう、各サイズ、一定数の在庫をストックしています。
ササセ皮フ科の巻き爪矯正治療費
(表)
価格 | 備考 | ||
初診料 | ¥3,300 | ||
再診料 | ¥1,100 | 矯正具の入れ替えや調整時に発生します。 | |
材料費 (手技料を含む) |
超弾性ワイヤ | ¥2,750 | 爪の伸びに伴い1~2ヵ月ごとの通院・矯正具の入れ替えが必要となります。 |
巻き爪マイスター | ¥7,700 | 矯正具の入れ替えは不要で、通常約3ヵ月継続使用が可能です。 | |
リネイルゲル | ¥5,500 | 各矯正具に併用します。 |
- ④施術後は、矯正具装着中の注意点やセルフケアについて指導します。
- ⑤看護師から医師に、施術した結果や指導内容を報告します。
- ⑥医師は、次回の再診時期を決め、看護師を通じて患者さんに打診します。巻き爪マイスターのみであれば通常は約1ヵ月半後の再診としています。リネイルゲルを併用する場合、ご高齢の方など、ご自身で薬剤の洗浄が難しい患者さんは翌日に来院いただいています。
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Q5:医師と看護師が役割を分担することでどのようなメリットがありますか?
- 最大のメリットは、診療効率の向上です。看護師がカウンセリングを担当することで、医師は次の診察ができるため、患者さんの待ち時間を短縮できます。
- 患者さんが落ち着いて決断できることもメリットのひとつです。医師の前では緊張して質問できないことも、看護師には話せるという方が多いです。別室でパンフレットや実物をご覧いただくことでイメージが湧きやすくなり、本音も聞きだしやすくなります。
- また、看護師が足全体をみることで、患者さんが気付いていない巻き爪以外の足トラブルがみつかることもあります。再診の際に医師が「巻き爪のほかに気になるところはありませんか?」と声をかけることができ、足のトータルケアにつながっています。
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Q6:分担するうえで、注意しているポイントはありますか?
- どの種類の矯正具を装着するかは医師がなるべく主導して決めています。爪によっては装着できない矯正具もあるためです。
- 爪の形は十人十色ですので、様々な巻き爪の形に対応できるよう、看護師は定期的に巻き爪マイスターの装着手技を訓練しています。特定の看護師にスキルが偏らないように、複数人で技術を習得しておくことが重要と考えています。
Q7:どのような患者さんにリネイルゲルを併用した矯正治療を提案していますか?
- 主に、下記のような方に提案しています。
- ・パンプスやビジネスシューズを履く機会が多い活動的な方(矯正具を早期に外して異物感をなくすことができるメリットをお伝えしています。)
- ・治療中断のリスクがある方(矯正具の長期使用により爪の割れ・欠けや、矯正具が外れる可能性のある方は、早期治療のメリットがあると思います。)
- ・巻き爪の見た目が気になる方
- ・これまでも矯正治療を行ってきたが改善が遅い方
Q8:巻き爪矯正治療における今後の課題は何でしょうか?
- まだ一般の方々には矯正治療が認知されていませんので、メディア等の媒体を通じて世の中に広めていくことが大事だと思います。院内ポスターも有用です。
- 今はSNSもありますので、それらをみて患者さん自らが矯正治療を希望してくださると、医療者もより取り組みやすくなると思います。その場合、患者さんは費用についてもある程度調べて来られるでしょうから、コストで戸惑われることもないと思います。
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- 自由診療の「今」に迫るインタビューシリーズ PINCER NAILS
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- Vol.1 巻き爪矯正治療導入・実践・今後の課題
- Vol.2 巻き爪矯正治療は、医師と看護師の「連携で効率化を!」
- Vol.3 矯正具単独療法に対するリネイルゲル併用の意義