メインコンテンツに移動

診断・検査(原発性腋窩多汗症)


    診断

    診断の手順と診断基準

    診断は、以下の図に示すような続発性多汗症を除外する必要がありますが、Hornbergerらの診断基準と照合することにより、問診と臨床症状から原発性多汗症の診断は比較的容易に行うことができます。局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6ヵ月以上認められ、6症状のうち2項目以上あてはまる場合を各部位の多汗症と診断します1、2)

    原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂版における多汗症の分類
    記事/インライン画像
    原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂版における多汗症の分類
    Hornbergerらの診断基準1、2)

    局所的に過剰な発汗が明らかな原因がないまま6ヵ月以上認められ、以下の2項目以上があてはまる場合を多汗症と診断する

    • ① 発症が25歳以下である
    • ② 左右対称性に発汗がみられる
    • ③ 睡眠中は発汗が止まっている
    • ④ 週1回以上の多汗のエピソードがある
    • ⑤ 家族歴がみられる
    • ⑥ それらによって日常生活に支障をきたす
    1. 藤本智子他:日皮会誌. 125(7): 1379-1400, 2015(原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂版)
    2. Hornberger J. et al.: J Am Acad Dermatol. 51(2): 274-286, 2004

    重症度判定

    HDSSを用いた重症度判定

    原発性局所多汗症の重症度判定については、Struttonらが自覚症状により以下の4つに分類したHDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale) を提唱しています1、2)

    HDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale)

    • 原発性局所多汗症の重症度を自覚症状により4段階で分類する指標で、患者が1~4の状態のうち、最も当てはまるものを選択する
    • 発汗検査による重症度判定もあるが、一般的にはHDSSなどが用いられている
    スコア 自覚症状
    1 発汗は全く気にならず、日常生活に全く支障がない
    2 発汗は我慢できるが、日常生活に時々支障がある
    3 発汗はほとんど我慢できず、日常生活に頻繁に支障がある
    4 発汗は我慢できず、日常生活に常に支障がある
    1. 藤本智子他: 日皮会誌. 125(7): 1379-1400, 2015(原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂版)より改変
    2. Strutton DR. et al.: J Am Acad Dermatol. 51(2): 241-248, 2004

    生活の質(QOL)の評価方法

    疾患の生活への影響を把握する場合、患者の主観的な指標であるPRO(patient-reported outcome:患者報告アウトカム)を用いることができます。ここでは、米国で承認されたQbrexzaの臨床試験用に独自に開発された3つの腋窩多汗症患者のQOL評価指標「ASDD」「Weekly Impact Items」「PGIC Item」と、皮膚疾患患者のQOLを評価する「DLQI」を紹介します。

    ASDD(腋窩発汗日誌)

    ASDD(Axillary Sweating Daily Diary:腋窩発汗日誌)は、過去24時間の腋窩の発汗による影響について質問する、腋窩多汗症患者のQOL評価指標です。

    ASDD(Axillary Sweating Daily Diary)

    項目 質問:過去24時間について 回答
    1 腋窩に発汗はありましたか? はい/いいえ
    2 腋窩が最も発汗していた状態について、評価してください 0:発汗なし~
    10:これまで経験した最悪の発汗
    3 腋窩の発汗はあなたの活動にどの程度影響を与えましたか? 0:全く影響がなかった
    1:少し影響があった
    2:影響があった
    3:かなり影響があった
    4:非常に影響があった
    4 あなたはどれぐらい腋窩の発汗が気になりましたか? 0:全く気にならなかった
    1:少し気になった
    2:気になった
    3:かなり気になった
    4:非常に気になった
    • 過去24時間の腋窩の発汗に関する質問に対して、患者自身が日誌に回答を記載し、その評点からPRO(患者報告による治療評価)を評価する
    • 毎日、就寝前に記録する

    Nelson LM. et al.: J Patient Rep Outcomes. 3(1): 59, 2019より改変

    Weekly Impact Items(過去1週間の影響に関する質問項目)

    Weekly Impact Itemsは、過去1週間の、日常生活への腋窩多汗症の影響を主観的に評価するための指標です。

    Weekly Impact Items

    項目 質問:過去7日間に、腋窩の発汗が原因で 回答
    a 1日のうちで衣服を交換しなければなりませんでしたか? はい/いいえ
    b 1回以上シャワーを浴びるもしくはお風呂に入る必要がありましたか? はい/いいえ
    c 自信を失うことがありましたか? はい/いいえ
    d 恥ずかしい思いをしましたか? はい/いいえ
    e 他人と話すことや会うことを避けたことがありましたか? はい/いいえ
    f あなたがしたかったことやする必要のあったことができなかったことはありましたか? はい/いいえ
    • 日常生活への腋窩多汗症の影響に対する主観的評価を問う質問項目
    • 週に1回記録する

    Nelson LM. et al.: J Patient Rep Outcomes. 3(1): 59, 2019より改変

    PGIC Item(変化についての全般的な印象に関する質問項目)

    PGIC(Patient Global Impression of Change)Itemは、腋窩の発汗に関して、治療前と比較して、治療後の変化についての全般的な印象を評価するための指標です。

    PGIC(Patient Global Impression of Change)Item

    質問 回答
    全体を通じて、この治験での治療を始める前と比較して、
    あなたの腋窩の発汗はどのような状態ですか?
    1: 非常に良くなった
    2: 良くなった
    3: 少し良くなった
    4: 変化なし
    5: 少し悪くなった
    6: 悪くなった
    7: 非常に悪くなった
    • 評価は1回のみ(治験終了時)

    Nelson LM. et al.: J Patient Rep Outcomes. 3(1): 59, 2019より作表

    DLQI(皮膚疾患に関連したQOL評価)

    DLQI(Dermatology Life Quality Index)は、皮膚疾患がQOLに与える影響を評価する指標です。疾患に合わせて、「皮膚の状態のせいで」を「腋汗のせいで」のように置き換えることができます1)

    • 皮膚の状態が日常生活にどの程度影響したかを評価する指標で、患者自身が質問票に回答する1)
    • 過直近1週間における症状・感情、日常生活、レジャー、仕事・学校、人間関係、治療を問う10項目で構成される。疾患に合わせて、「皮膚の状態のせいで」を「腋汗のせいで」と置き換える1)
    • 総スコアは0~30点の範囲を取り、高得点ほどQOLが低下している状態を表す2)
    1. 健康関連QOL SF-36 DLQI(Dermatology Life Quality Index)、
      Skindex29(https://www.qualitest.jp/qol/dlqi-skin.html)
    2. Finlay AY. And Khan GK.: Clin Exp Dermatol. 19(3): 210-216, 1994

    発汗検査

    定性的測定法

    発汗量の測定には定性的測定法と定量的測定法があります。定性的測定法には、ヨード紙法(汗滴プリント法)やMinor法があり、腋窩にはMinor法が用いられています1-3)

    項目 概要
    定性的測定法 ヨード紙法
    • ゼロックス紙にヨードを加え、瓶で1週間保存後に茶褐色に変色した紙を使用する。発汗部位に触れると黒色に変色する1)
    • 重症では変色がべったりと全体に広がり、中等症では全体に、汗腺に一致して点状に個々が追えるようにみられ、軽症では主に手指指腹、手掌の辺縁など発汗の多い部位が点状に変色する1)
    • 手掌、足底に適した測定法で、平坦でない皮膚面には不向きである2)
    Minor法1)
    • ヨード液を刷毛で塗布後、乾燥させてからでんぷんを振りかけると、発汗部位は黒紫色になる
    • 黒紫色の範囲を計測して重症度および治療効果の判定に用いる
    • 腋窩、手掌、足底の発汗の観察に用いられる
    1. 藤本智子他:日皮会誌. 125(7): 1379-1400, 2015(原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂版)
    2. 佐藤賢三他:臨床皮膚科. 43:889-896, 1989
    3. Minor V.: Z Neurol. 101: 302-308, 1927

    定量的測定法

    定量的測定法にはガイドラインに記載されている重量計測法1)、換気カプセル法1)やImpression Mold法2)などがあります。

    項目 概要
    定量的測定法 重量計測法1)
    • 重量を計測したろ紙を付着させたパウダーフリーのビニール手袋を5分間装着し、汗を含んだろ紙の重量を計測。最初の重量との差から発汗量を測定する
    換気カプセル法1)
    • 皮膚面を密閉したカプセルで覆い、カプセル内に一定流量で乾燥ガスを流し汗を蒸発させ、流出するガスの湿度を発汗量として換算する
    • 発汗障害のスクリーニング、発汗障害の分布(左右差、上下肢差)、深呼吸、暗算やハンドグリップなどの刺激による発汗量の時間的様相の評価などに有用である
    Impression Mold法2)
    • 歯科用のシリコン樹脂を皮膚表面に伸展させ、それが固まるまでに排出された汗をシリコンにできた凹みとして測定する方法である
    • 経時的に同一部位の発汗反応を測定できる
    1. 藤本智子他:日皮会誌. 125(7): 1379-1400, 2015(原発性局所多汗症診療ガイドライン2015年改訂版)
    2. Lowe NJ. et al: Dermatol Surg, 28: 822-827, 2002

    診断時の問診内容・検査/説明内容

    医師調査によれば、8割の医師が診断時に患者の訴えを問診しており、HDSSは3割、ASDDや発汗検査は1割程度の医師が実施していることが示されています。
    医師が診断時に説明する内容として多かったのは、(原発性腋窩多汗症は)「治療によって改善が期待できること」などでした。

    診断時に実施している問診内容・検査
    記事/インライン画像
    診断時に実施している問診内容・検査
    診断時に説明する内容
    記事/インライン画像
    診断時に説明する内容
    原発性腋窩多汗症に関する医師定量調査
    対象: 主診療科が皮膚科、形成外科/美容外科、一般内科、神経内科、心療内科、精神科の医師493名
    方法: インターネット調査
    調査期間: 2020年12月
    医師数n=384、患者数n=2,515の記載について:回答のあった医師384名が直近1年間で診察した患者数の総計
    調査主体:マルホ株式会社

    (株)インテージヘルスケア 医師インターネット調査結果

    お問い合わせ

    お問い合わせの内容ごとに
    専用の窓口を設けております。

    各種お問い合わせ

    Dermado デルマド 皮膚科学領域のお役立ち会員サイト

    医学賞 マルホ研究賞 | Master of Dermatology(Maruho)

    マルホLink

    Web会員サービス

    ページトップへ