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帯状疱疹治療の際に何を気にすべきか?


    • 聖隷三方原病院 皮膚科 白濱 茂穂 先生

    増加する帯状疱疹

    帯状疱疹は初感染後に神経節に潜伏感染した水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-zoster virus:VZV)の再活性化により発症する疾患であり、神経支配領域に沿って帯状に分布する皮膚病変と痛みを呈する。VZVの再活性化は加齢、疲労、ストレスなどにより、宿主のVZVに対する免疫力が低下することで起こる。帯状疱疹は高齢者に多く、本邦で実施された帯状疱疹の大規模疫学調査である宮崎スタディによると、発症数は50~70歳代が多く、発症率は50歳代以上が高くなっている1)。近年、発症率は上昇傾向であり(図12)、2014年10月の小児に対する水痘ワクチン定期接種化に伴い、水痘患児との接触機会が減少したことにより、VZVに対する免疫のブースター効果を得られていないことが一因ともいわれている。このような状況から、帯状疱疹患者は今後さらに増加すると考えられる。

    図1:1997年からの帯状疱疹発症率の増加率(1997~2017年)
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    帯状疱疹発症率の増加率

    Toyama N, et al.: J Dermatol Sci 92(1): 89-96 (2018)

    帯状疱疹治療に用いる薬剤と注意点

    帯状疱疹治療には主に経口抗ヘルペスウイルス薬が使用され、アシクロビル、バラシクロビル塩酸塩、ファムシクロビル、アメナメビルの4種類がある(表1)。アメナメビルを除く3種類は腎排泄性の薬剤である。腎排泄性の抗ヘルペスウイルス薬はクレアチニンクリアランス(CCr)に基づく投与量の調整を考慮しないと急性腎不全などの薬剤性腎障害を起こすリスクがある。これは、尿中薬物濃度が溶解度を超えたときに腎尿細管で結晶化し、結晶が尿細管腔を閉塞するためと考えられており、実際、抗ヘルペスウイルス薬投与後に急性腎不全を起こした患者の尿から針状結晶を確認している(図2)。また、帯状疱疹は痛みを伴う疾患のため、患者によっては痛みの治療薬も使用される。急性期痛に用いられるNSAIDsが腎血流量を低下させること、帯状疱疹後神経痛に用いられるプレガバリン※1やトラマドール塩酸塩※2が腎排泄性の薬剤であることに留意が必要である。抗ヘルペスウイルス薬とこれらの薬剤を併用すると薬剤性腎障害の発現リスクが高まる懸念があり、投薬時には腎機能の状態にさらに注意すべきである。

    • ※1 【効能・効果】神経障害性疼痛
    • ※2 【効能・効果】非オピオイド鎮痛剤で治療困難な慢性疼痛における鎮痛
    表1:帯状疱疹治療に用いる経口抗ヘルペスウイルス薬 一覧表
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    帯状疱疹治療に用いる経口抗ヘルペスウイルス薬 一覧表

    各製品の添付文書(2018年9月1日)より作成

    図2:抗ヘルペスウイルス薬を投与後に急性腎不全を起こした患者の尿中の針状結晶
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    抗ヘルペスウイルス薬を投与後に急性腎不全を起こした患者の尿中の針状結晶

    白濱 茂穂 先生 ご提供

    より適切な帯状疱疹治療を目指して

    帯状疱疹の治療には腎機能への配慮は必要不可欠であり、配慮を怠ると薬剤性腎障害発現のリスクが高まるだけでなく、副作用で帯状疱疹自体の治療が継続できなくなり、患者が被る不利益は計り知れない。

    すべての患者で薬剤性腎障害を発現させないために、本資材で解説したリスク因子の見極めや適切な薬剤選択が浸透し、帯状疱疹治療がより良いものとなることを期待する。

    引用文献:

    1. 外山望: 日臨皮会誌 29(6): 799-804 (2012)
    2. Toyama N, et al.: J Dermatol Sci 92(1): 89-96 (2018)

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