裂肛(きれ痔)
- 監修:
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- 牧田総合病院 肛門科 佐原 力三郎 先生
症状と分類
裂肛は女性に多い痔です。特に20~40代に好発します。多くの場合は、硬い便の排泄や勢いよく出る下痢などにより、肛門の皮膚が裂けることにより生じます。その他、肛門腺の感染や肛門後方上皮の血行障害などが、原因になるとされています。
症状
- 排便時に痛みがある。
- 排便時に少量の出血がある。
- 排便後も痛みが続く場合がある。
- 慢性化すると肛門が狭くなることがある。
裂肛の発生と経過

分類
裂肛は急性裂肛と慢性裂肛に分類されます。
裂肛分類
分類 | 主な症状 | 主な治療法 | |
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急性裂肛 |
記事/インライン画像
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慢性裂肛 |
記事/インライン画像
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治療
保存療法
食生活や排便習慣を改善し、症状を悪化させないようにする生活療法が中心となります。繰り返す肛門痛は肛門狭窄の原因となるため、当初は鎮痛薬の投与が必要となる場合があります。肛門への外用薬は炎症を抑えるためにリドカイン、ステロイド含有軟膏剤が有効です。また排便コントロールのために緩下剤を使用する場合もあります。
非侵襲的療法
薬物的括約筋切開術といわれる療法です。
保険適用外ですが平滑筋弛緩作用を有する薬剤を局所的に用いることで、狭窄した肛門管を拡張する方法です。ニトログリセリン軟膏、ニフェジピン局所注射、ジルチアゼム・ゲル、ボツリヌス毒素注射などが、国内外で試されています。
手術療法
用手肛門拡張手術
適応肛門上皮に余裕のある浅い裂肛を繰り返し、肛門狭窄している病態
肛門に左右の2指を挿入し、内肛門括約筋を広げる方法です。切開は行いません。

裂肛切開術
適応軽度の狭窄を伴う裂肛。見張りイボ、肛門ポリープ、痔瘻を併存する場合など
裂肛の部分および見張りイボ、肛門ポリープ、痔瘻を切除し、縫合する手術です。 縫合は傷跡をそのままにしておく「開放式」と傷跡を縫合する「閉鎖式」があります。

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肛門ポリープや潰瘍、見張りイボなどの病巣を切除する
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縫合
側方皮下内肛門括約筋切開術(LSIS)
適応肛門狭窄を伴う裂肛
肛門上皮からメスを入れて、狭くなった内肛門括約筋を浅く切開する手術です。これにより肛門狭窄が改善され、肛門の皮膚が切れにくくなり、痛みも和らぎます。

皮膚弁移動術(SSG)
適応肛門上皮に余裕のない慢性裂肛、術後肛門狭窄など
裂肛の部分および潰瘍や見張りイボを切除し、肛門の外側の皮膚の一部を移動させ、肛門狭窄を改善する手術です。

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肛門ポリープや潰瘍、見張りイボなどの病巣を切除する
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肛門括約筋の一部を切開し、肛門を広げる
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切開したあとに、すぐ外側の皮膚を移動して縫合する
インフォームドコンセント
急性裂肛の治療では、傷を治す保存療法が基本となります。
便秘や硬い便は、傷を深くする原因になるので、排便習慣の改善や、便の性状を改善するための食生活の指導、肛門衛生状態の改善などが重要になります。また安静・睡眠、入浴・保温などの基本的な健康対策指導も必要です。
痛みや出血がなくなっても、完治するまで患者さん自身の判断で通院を中止しないように指導する必要があります。
専門医への紹介時期
肛門痛が改善しないとき、便柱が細く下剤で下痢をして便を出しているとき、出血が続くときは専門医に紹介します。
監修医からのワンポイントアドバイス
2週間経っても裂肛の症状が改善しない場合は、専門医に紹介しましょう。
