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発売3周年記念WEB講演会:アメナメビルの透析PKデータと腎への影響


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    愛正会 田尻ケ丘病院 内科 鶴岡 秀一 先生

    鶴岡 秀一 先生
    愛正会 田尻ケ丘病院 内科

    帯状疱疹治療薬による薬剤性腎障害のリスク因子

    2011年に厚生労働省研究班が発表した薬剤性腎障害の実態に関するアンケート調査1)において、薬剤性腎障害の転帰について過半数(55.1%)が「回復」とした一方、「非回復」が36.5%を占め、慢性腎臓病の一因となる可能性が示唆された。したがって薬剤性腎障害の回避は慢性腎臓病対策の大きな柱の一つと考えられるが、帯状疱疹治療では薬剤的、患者的要因の双方から薬剤性腎障害を誘発する可能性がある。
    まずは薬剤的要因である。従来型の抗ヘルペスウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル)は腎排泄型である。そのため、薬剤の過剰投与や脱水による尿細管内の水分の再吸収亢進があると、尿細管内薬物濃度が上昇して結晶が析出し、尿細管や集合管の内腔が閉塞して腎障害が惹起されることがある。
    また、帯状疱疹関連痛の治療に使用されるNSAIDsは、輸入細動脈を収縮させて糸球体ろ過を減少させる。ゆえに輸入細動脈の動脈硬化が進んでいる高齢者、脱水時、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬の服用により糸球体ろ過血流が減少している患者では、NSAIDsによる虚血性腎障害が誘発されやすい。加えてアセトアミノフェンについては、長期投与による腎間質障害作用に関する報告等により安全性が不確定とされている2)ほか、プレガバリン*1やトラマドール塩酸塩*2は中枢への影響によって水分摂取の低下を招く可能性があり、脱水を介した腎機能への影響に注意を要する。
    次に患者的要因である。帯状疱疹は高齢者に多く、加齢による腎機能低下をきたしやすい。合併症に伴うRAS阻害薬の服用や複数の薬剤の併用による影響も大きく、実際に薬剤性腎障害の頻度は高齢になるほど増加する3)。また、帯状疱疹関連痛によって活動が制限されるケースでは、排尿回数を減らすために水分摂取を控えることも薬剤性腎障害の要因となる。薬剤性腎障害を回避し帯状疱疹治療を行うためには、薬剤的要因や患者的要因、患者の年齢や基礎疾患、併用薬、体調、脱水などのリスク因子を投与前に評価し、患者には水分摂取を促すことが重要である。

    従来型よりも腎排泄率が低い抗ヘルペスウイルス薬アメナリーフ

    前述の通り、従来型の抗ヘルペスウイルス薬は腎排泄型だが4)、2017年に臨床導入されたアメナメビルは肝代謝型で、主に糞便中に排泄される5)図1)。腎障害を有する患者に抗ヘルペスウイルス薬を投与する場合、従来型はクレアチニンクリアランスに基づく用量調節が必要だが、アメナメビルは腎排泄率が低く、理論上は用量調節が不要である6)。したがって、帯状疱疹治療における用量調節の複雑性も改善しつつあると考える。

    図1:アメナメビルとファムシクロビルの糞便中/尿中排泄率
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    アメナメビルとファムシクロビルの糞便中/尿中排泄率

    維持透析患者におけるアメナメビルのPKデータ

    血液透析を必要とする腎障害患者におけるアメナリーフを用いた検討はこれまで報告されていない。我々は成人維持透析患者9例を対象に、アメナメビル400mgの食後単回投与を実施した7-9)図2)。

    図2:維持透析患者対象:アメナメビル透析性・PK試験(JapicCTI-184242)
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    維持透析患者対象:アメナメビル透析性・PK試験 (JapicCTI-184242)

    48時間にわたり経時的に採血し、投与24時間後に維持透析を実施した際の薬物動態(pharmacokinetics;PK)データを図3・表に示す。健康成人と比較すると、Cmaxは同程度、半減期は約1.8倍の延長がみられた7、10)。血中濃度–時間曲線下面積(AUCinf)は38,120ng・h/mLで7)、健康成人の16,866ng・h/mLに対し2倍程度上昇した10)。参考情報として、健康成人にアメナメビル2,400mgを食後単回投与し安全性が確認された際のAUCinfは62,893ng・h/mL11)であった*3。なお、ダイアライザ前後のアメナメビルの濃度から算出されるアメナメビル除去率は30.7%であった7)。本試験における重篤な副作用は認められず、有害事象は腹部膨満が1例に認められた。また、本試験において、アメナメビル投与後に臨床上問題となる臨床検査値またはバイタルサインの変動等はみられなかった7)

    図3:血漿中アメナメビル濃度推移
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    図3:血漿中アメナメビル濃度推移
    表:PKパラメータ(維持透析患者および健康成人)
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    表:PKパラメータ(維持透析患者および健康成人)
    1. 【効能・効果】神経障害性疼痛
    2. 【効能・効果】非オピオイド鎮痛剤で治療困難な慢性疼痛における鎮痛
    3. アメナリーフ錠200mgの承認された【用法・用量】通常、成人にはアメナメビルとして1回400mgを1日1回食後に経口投与する
    1. 研究代表者 今井圓裕. CKDの早期発見・予防・治療標準化・進展阻止に関する調査研究.厚生労働科学研究費補助金(腎疾患対策研究事業)分担研究報告書. 細谷 龍男ほか. 高齢者における薬物性腎障害の調査(2012)
    2. 日本腎臓学会 編. エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018(東京医学社)
    3. Yokoyama H et al. Clin Exp Nephrol. 20(5)720(2016)
    4. Filer CW et al. Xenobiotica. 24(4)357(1994)
    5. Kato K et al. Clin Pharmacol Drug Dev. 8(5)595(2019)
    6. アメナリーフ錠200mg 添付文書
    7. マルホ株式会社社内資料:血液透析患者を対象としたアメナリーフ錠の単回投与試験
    8. Tsuruoka S et al. Adv Ther. 37(7)3234(2020)
    9. Tsuruoka S et al. Adv Ther. 37(11)4758(2020)
    10. Kusawake T et al. Adv Ther. 34(12)2612(2017)
    11. マルホ株式会社社内資料:健康成人を対象とした薬物動態試験(M522101-J21試験)

    Discussion

    ■ 森実実臨床において、透析患者に対しどのように抗ヘルペスウイルス薬を選択すべきでしょうか。

    ■ 鶴岡従来の抗ヘルペスウイルス薬の処方を検討する場合、投与開始時に腎機能を評価して投与設計を行うと思いますが、今回お話ししたような理由で投与中に腎機能が低下する可能性も考えられます。そのようなケースでは改めて投与設計を変更する必要がありますので、複雑性を考慮するとアメナリーフは有用な選択肢の一つになると思います。

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