褥瘡辞典 for MEDICAL PROFESSIONAL ~褥瘡(床ずれ)の正しいケアと治療のために~

褥瘡の治療

ハイリスク褥瘡患者・難治性褥瘡

ハイリスク褥瘡患者・難治性褥瘡とは
●ハイリスク褥瘡患者

褥瘡のハイリスク患者としては脊髄損傷患者、小児、周術期患者などが挙げられます。個々の患者に合わせた対策を講じて、まず予防に努めることが重要です。

  特徴 対処
脊髄損傷患者
  • 頸髄損傷患者は坐骨部と仙尾骨部に好発する。
  • 胸腰髄損傷患者は坐骨部に好発する。
  • 痙性麻痺の患者の場合、ずれの排除が困難かつ拘縮が起こりやすいため、難治化しやすい。
  • 脊髄損傷受傷直後から褥瘡予防体制をとる。
  • ベッドサイドリハビリテーションを行い、上肢の筋力増強訓練と関節拘縮予防訓練を励行する。
小児
  • 小児、特に新生児の皮膚は脆弱であるため、褥瘡発生のリスクが高い。
  • 体圧または医療機器の圧迫が主な発生要因である。
  • 仰臥位における体圧は仙骨部より後頭部の方が高い。
  • 体位変換制限がある場合を除いて2時間ごとの体位変換を行うことが望ましい。
  • 体重設定値に注意した上で体圧分散用具を活用する。
  • ヘッドアップの際、体幹がずれないよう殿部を支える。
周術期患者
  • 6時間以上の全身麻酔下による手術、特殊体位による手術(腹臥位・側臥位・坐位)、麻酔などの鎮痛・鎮静剤の持続的使用はハイリスク要因とされている。
  • 術前~術後まで一貫した予防対策をとる。
  • 術中は安定性と安全性に配慮した体圧分散を行う。
  • 離床までは自力動作を妨げない体圧分散用具を選ぶ。
がん患者
(化学療法施行患者)
  • 抗がん剤の細胞傷害性により、表皮の保護能力や再生能力が低下し、皮膚が脆弱化している。
  • 抗がん剤の副作用である全身倦怠感により臥床状態が続くと発生リスクが高まる。
  • 角層を破壊しない方法で皮膚を洗浄し、保湿剤を使用する。
  • 体圧分散用具を使用する(仙骨部)。
  • 排泄物が皮膚に直接付着しないケアを行う(肛門周囲)。
●難治性褥瘡

褥瘡の難治化の主な要因は、(1)不十分な除圧・ずれ対策、(2)慢性の低栄養状態、(3)不適切な局所治療が挙げられます。それらによりポケット(dead space)形成や不良肉芽形成などが起こり、治癒が遅滞します。

  難治化の原因 対処
ポケットを有する褥瘡

処置がポケットの奥まで及びにくいために

  • 壊死組織が残存する。
  • 感染や壊死組織に対する炎症反応が持続する。
  • ずれを排除することが重要である(増悪防止・治癒促進)。
  • 壊死組織が存在する場合は、ポケット切開あるいは外科的デブリドマンを行う。
不良肉芽
  • 高齢者では、線維芽細胞自体の加齢による増殖能低下、コラーゲン合成能低下と分解能上昇が考えられる。
  • 循環障害による酸素や栄養素の不足。
  • 細菌の過剰な増殖による治癒の遅滞、深部感染。
  • 創面の不適切な水分バランス。
  • 壊死組織残存の有無を確認し、残っていれば除去する。
  • 局所の循環障害と低栄養状態への対策を再検討する。
  • 過度の湿潤が認められる場合は、吸水性のある外用薬に切り替える。
感染を起こした褥瘡
  • 細菌由来のコラーゲン分解酵素、白血球などに由来する炎症惹起物質が肉芽形成を妨げる。
    *創面に細菌が存在するだけでは“感染”ではない。
  • 創面および創周囲の皮膚をよく洗浄する。
  • 消毒は通常は必要ないが、明らかな創部の感染を認め、滲出液や膿苔が多いときには洗浄前に消毒を行ってもよい。
  • 壊死組織が存在する場合は切開または除去する。
創辺縁の変化
  • 創辺縁と周囲皮膚に段差があると上皮化が進みにくい。
  • 過度の湿潤により創周囲の皮膚がふやけたような状態にあると上皮化が妨げられる。
  • 堤防状に隆起した部分を外科的に切除する。
  • 局所治療や栄養状態などの総合的な再検討を行う。
  • 浸軟がある場合は、水分含量が少ないか吸水作用を有する外用薬に変更する。
踵部、大転子部の褥瘡
  • 閉塞性動脈硬化症や糖尿病性血管障害を有する場合、末梢部分の阻血(そけつ)により肉芽形成能が低下する。
  • 自立度の高い患者の場合、患部の安静が保たれず創周囲皮膚と肉芽組織の密着維持が妨げられる。
  • 踵部は、感染徴候がなければ外科的デブリドマンは不要である(感染徴候があればデブリドマンを行う)。
  • 大転子部は、こまめにデブリドマンを行い、肉芽形成促進作用を有する外用薬を使用する。
局所治療の概要
褥瘡発生後のケア