褥瘡の治療
局所治療の概要
治療方法の種類
局所治療の方法には下表のような種類があります。褥瘡にはさまざまな病態・病期が存在するため、それぞれの状態を見極めた上で最も適切な治療方法を選択することが重要です。
治療の種類 |
方法 |
外用薬 |
外用薬を用いた治療を行う際は、まず創の深さに着目し、浅い褥瘡の場合は、創面を外力から保護し、適度な湿潤環境を保つことで皮膚の再生を図る。深い褥瘡の場合には、壊死組織を除去した上で、肉芽形成の促進、創の縮小・閉鎖を目指し、感染やポケット形成がみられた場合には適した治療を追加する。
外用薬は主薬(薬効成分)と基剤で構成されているが、大部分は基剤が占めているため、創の状態を把握した上で薬効からだけでなく、基剤特性も考慮して外用薬を選択することが大切である。
外用薬の軟膏基剤による分類
一般社団法人日本褥瘡学会編: 褥瘡ガイドブック第3版: 56, 2012, 株式会社照林社.
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ドレッシング材 |
創傷治癒環境整備を目的とした創傷被覆材である。創面の湿潤環境を保ち、滲出液を吸収するなどの役割をもつ。6種類のドレッシング材が褥瘡治療環境整備に使用されており、機能によって3種類に分類できる。
ドレッシング材の機能別分類
溝上祐子編著:褥瘡・創傷のドレッシング材・外用薬の選び方と使い方 第2版(照林社)より作成
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外科的治療 |
感染制御のための壊死組織除去、切開排膿、創処置を簡便にするためのポケット切開・切除などの外科処置および再建術に分類される。 |
物理療法 |
陰圧閉鎖療法 |
創面全体を閉鎖性ドレッシング材で覆い、創面を陰圧に保つことによって滲出液や感染物を除去したり、肉芽形成の促進、血流量増加などの幅広い創傷治癒促進効果が期待できる。 本邦では2010年4月にKCI社のVAC® (Vacuum Assisted Closure)システムが保険適応となった。 |
電気刺激療法 |
創部と周囲に貼付された電極の間に電流を流し、創傷治癒過程を活性化する方法である。血管収縮、白血球凝集作用、殺菌作用や上皮化促進作用などが認められる。 |
水治療法 |
36℃前後の微温湯または渦流による物理的な刺激を全身あるいは局所に与える。 毛細血管の新生作用のほか、壊死組織を有する場合にはデブリドマン作用がある。 |
その他に光線療法、高圧酸素療法、超音波療法、電磁波療法、振動療法などがある。 |
=消毒の是非をめぐる見解=
褥瘡などの創傷においては、細菌が存在することが必ずしも感染を起こしていることを意味するのではなく、細菌と創(宿主)の力関係が崩れ、細菌が安定した増殖を行い、生体に何らかの症状・疾患が起こされた状態を感染と呼びます。
現在、創傷における細菌の関わり方は、次の4種類に分類されています。
埼玉医科大学形成外科 教授 市岡 滋 先生
第10回日本褥瘡学会学術集会ランチョンセミナー内容集より
以前は、医療従事者の間で“創傷には消毒剤を使わない”という見解が主流でしたが、最近ではその見解は変わってきています。2012年日本褥瘡学会の『褥瘡予防・管理ガイドライン』においても「明らかな創部の感染を認め、滲出液や膿苔が多いときには洗浄前に消毒を行ってもよい」と記載されており、critical colonizationまたはwound infectionの状態にある創には、消毒剤をうまく利用すべきと考えられます。
消毒剤も1日1回創面に塗布する形ではなく、持続的に抗菌作用のある外用薬などが使用されています。