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- WBP、TIME、MWHの概念-創面環境調整
褥瘡の治療
局所治療の概要
WBP、TIME、MWHの概念-創面環境調整
●創面環境調整の考え方-1 "wound bed preparation"とは
「wound bed preparation (WBP:創面環境調整)」とは、創傷治癒を阻害する要因を取り除き、創傷が治癒するための環境をつくることを意味しており、特に慢性創傷の局所に内在する創傷治癒阻害因子を除去することを指しています。
慢性期の深い褥瘡の局所治療の目標は、初期の「肉芽組織が形成されるための環境づくり」とその後の「形成された肉芽組織が順調に育つための環境づくり」に分けることができ、WBPは初期における基本概念です。
具体的には、「(1)壊死組織の除去、(2)細菌負荷の軽減、(3)創部の乾燥防止、(4)過剰な滲出液の制御、(5)ポケットや創縁の処理を行うこと」と、日本褥瘡学会で定義されています。
この概念の主軸となる上記4項目は、
- (1) Tissue non viable or deficient の改善 (壊死・不活性組織の管理)
- (2) Infection or inflammation の改善 (感染・炎症の管理)
- (3) Moisture imbalance の改善 (滲出液の管理)
- (4) Edge of wound-nonadvancing or undermined の改善 (創辺縁の管理)
の頭文字をとって「TIME」として重視されており、これらを改善することは肉芽形成のために不可欠なステップと考えられています。
●創面環境調整の考え方-2 "moist wound healing"とは
「moist wound healing (MWH:湿潤環境下療法)」とは、慢性期の深い褥瘡治療の後期において、創部を湿潤環境下に保つことでよりよい治癒過程をたどることを意味しています。また、MWHは急性期の浅い褥瘡治療でも行われることがあります。
従来、創傷は乾燥させた方が細菌感染に有利で治癒を促進するとされており、褥瘡を含めた創傷処置の際にはその方針がとられていました。しかし、1950年代以降、創傷治癒における湿潤環境下の有用性を示す報告がなされ、MWHの概念が徐々に普及したのです。
湿潤の環境下では、真皮側の線維芽細胞が活性化され、コラーゲンの増生が促進されて良好な肉芽組織が形成されていきます。一方、乾燥の環境下では創表面の壊死が進み、創傷治癒が遅滞します。