褥瘡の予防(ケア)
スキンケア
尿・便失禁
尿・便失禁による湿潤は皮膚を浸軟させ、皮膚損傷を起こしやすくします。同時に、失禁による湿潤・汚染が生じるのは褥瘡好発部位であるため、褥瘡発生リスクが高まります。
●尿・便失禁の影響
便失禁は排泄物中の酵素・細菌などが皮膚のバリア機能を障害します。特に、腸管での水分吸収が不十分な水様便であるほど、消化酵素を多く含んだ刺激の強い排泄物となります。水様便であるため皮膚に付着する面積が拡大し、皮膚傷害が広範囲に及びがちです。
また、尿失禁と併発している場合は、尿素がアンモニアに変化して皮膚pHを上昇させます。
●尿・便失禁のケア方法
予防的ケアとしては、皮膚に排泄物が付着しないようにすることが第一です。失禁には、腹圧性、切迫性、溢流性、機能性などのタイプがあるため、いずれのタイプなのかを判別することも適切な治療およびケアへの近道となります。
- スキンケア
- 排泄物の性状に応じたパッドを使用します。また、水分透過性機能の高いポリエステル繊維綿を外陰部から殿裂部にかけて貼用すると、排泄物と皮膚が接触する時間を短縮できます。
- 排泄物で汚染されたときは速やかに除去します。弱酸性の皮膚洗浄剤を用いてやさしく洗浄し、水分をよく拭きとった後、撥水性皮膚保護剤(クリームやオイルなど)を塗布します。
- 適切な排泄ケア用品の選択
- 失禁量を評価(アセスメント)し、適切な吸水量をもつ高分子吸水ポリマー入りの紙おむつ、尿取りパッドを使用します。
- 排泄口の周囲以外に排泄物が広がらないよう、おむつの当て方を工夫しましょう。不要な重ね付けは体圧を高めるので避けてください。また、交換の際は無理矢理はぎ取らないようにしましょう。
- おむつのサイズが適切でないと、身体の動きにフィットせず、しわができる原因となるので注意が必要です。
カバータイプのおむつの例
- 男性の場合、陰茎固定型収尿器で尿を回収する方法も可能です。ただし、装着感を不快とする患者や離床している患者には適していません。
尿失禁ケア用具の例
- 頻回な水様便の付着がある場合は、単品系の消化器ストーマ装具を肛門周囲に貼付する方法が推奨されます。
- 排便コントロールが困難で、水様または泥状便が持続する場合には、肛門にシリコンチューブを挿入する便失禁システムを用いる方法があります(注:直腸内や肛門部に病変、損傷がある場合や直腸手術後は禁忌)。
便失禁ケア用具の例
- 撥水効果のあるスキンケア用品の選択
皮膚の浸軟は長時間の水分接触で起こるため、撥水効果が長時間保持されるスキンケア用品を選択します。クリームやオイルの他、スプレータイプの皮膚被膜剤もあります。