皮脂欠乏症の主な原因:アトピー性皮膚炎

監修:東京女子医科大学 名誉教授 川島 眞 先生

ガイドライン情報

日本皮膚科学会・日本アレルギー学会発行「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018」において、保湿剤の塗布が推奨されています。

日本皮膚科学会・日本アレルギー学会発行「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018」

CQ9.アトピー性皮膚炎の治療に保湿剤外用はすすめられるか。

推奨文

皮膚炎の状態に対してはステロイド外用剤やタクロリムス外用剤と併用して保湿剤を外用することがすすめられる。また、急性期の治療によって皮膚炎が沈静化した後も、保湿剤の外用を継続することがすすめられる。

推奨度 1 エビデンス
レベル
A
解説

皮膚の乾燥はアトピー性皮膚炎の主症状の一つであり、表皮のバリア機能を低下させる原因の一つと考えられる。保湿剤の外用は、低下している角質水分量を上昇させ、皮膚の乾燥の症状やかゆみを軽減する1-7)。また、出生直後から保湿剤の外用によるスキンケアを行うことは、アトピー性皮膚炎の発症リスクを下げるという報告もみられる8,9)。皮膚炎そのものに対する直接的な効果は期待できないが、抗炎症作用のあるステロイド外用剤と併用することで、乾燥症状やかゆみをより改善し、皮膚炎の症状が軽快した後の寛解状態の維持に効果的である10)。また、治療によって皮膚炎が寛解した後にも保湿剤の外用を継続することは、皮膚炎の再燃を予防し、かゆみが軽減した状態を保つために有効である11,12)。ただし、保湿剤による接触皮膚炎などの有害事象が起こりうることに注意しなくてはならない。

日本皮膚科学会, 日本アレルギー学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018,
日皮会誌, 128(12), 2431-2502, 2018 ©公益社団法人日本皮膚科学会 より引用

  • 1)Loden M et al.:Acta Derm Venereol, 82(1), 45-47, 2002
  • 2)Wilhelm KP et al.:Aktuel Dermatol, 24, 37-38, 1998
  • 3)Loden M et al.:Skin Res Technol, 7(4), 209-213, 2001
  • 4)Boralevi F et al.:J Eur Acad Dermatol Venereol, 28(11), 1456-1462, 2014
  • 5)川島 眞 ら:日皮会誌, 117(6), 969-977, 2007
  • 6)濱田 学 ら:西日皮膚, 70(2), 213-218, 2008
  • 7)松中 浩 ら:皮膚の科学, 3(1), 73-83, 2004
  • 8)Simpson EL et al.:J Allergy Clin Immunol, 134(4), 818-823, 2014
  • 9)Horimukai K et al.:J Allergy Clin Immunol, 134(4), 824-830, 2014
  • 10)Szczepanowska J et al.:Pediatr Allergy Immunol, 19(7), 614-618, 2008
  • 11)川島 眞 ら:日皮会誌, 117(7), 1139-1145, 2007
  • 12)Wiren K et al.:J Eur Acad Dermatol Venereol, 23(11), 1267-1272, 2009

日本皮膚科学会・日本アレルギー学会発行「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018」

3.4 スキンケア
(1)保湿外用剤

アトピー性皮膚炎では、皮膚バリア機能と保湿因子が低下している。角質層内の水分含有量は低下し、特徴的なドライスキンとなる。そのため非特異的刺激による皮膚のかゆみを生じやすく、また、種々のアレルゲンの侵入が容易になり、皮膚炎を惹起しやすいと考えられている。保湿外用剤(保湿剤・保護剤)の使用は、アトピー性皮膚炎で低下している角質層の水分含有量を改善し、皮膚バリア機能を回復・維持することで、アレルゲンの侵入予防と皮膚炎の再燃予防、痒みの抑制につながる1-3)。(CQ9:推奨度1,エビデンスレベル:A)また、出生直後から保湿外用剤によるスキンケアを行うことは、アトピー性皮膚炎の発症リスクを下げる4,5)

ドライスキンに対するスキンケアの要点は、低下している皮表の保湿性を補うために保湿性の高い親水性軟膏(oil in water:O/W)や吸水性軟膏(water in oil:W/O)を外用することである。保湿性の高い親水性軟膏と吸水性軟膏としては、ヘパリン類似物質含有製剤や尿素製剤がある。傷害された皮膚のバリア機能を補充・補強または代償するためには、白色ワセリンや亜鉛華軟膏などの、皮膚に対して保護作用がある油脂性軟膏を外用する(表)。

表:保湿・保護を目的とした主なスキンケア外用薬

1)皮表の保湿を主としたもの

一般名 代表的な製品名
ヘパリン類似物質
含有製剤
ヒルドイド®クリーム
ヒルドイド®ソフト軟膏※※
ヒルドイド®ローション
尿素製剤 ケラチナミンコーワクリーム
パスタロン®ソフト軟膏※※
パスタロン®クリーム
パスタロン®ローション
ウレパール®クリーム
ウレパール®ローション

2)皮表の保護を主としたもの

一般名 代表的な製品名
白色ワセリン 白色ワセリン
サンホワイト®(精製ワセリン)
プロペト®(精製ワセリン)
亜鉛華軟膏 亜鉛華軟膏
亜鉛華単軟膏
その他 アズノール®軟膏※※※

基剤は親水性軟膏(oil in water : O/W)、※※基剤は吸水性軟膏(water in oil : W/O)、※※※基剤は精製ラノリン・白色ワセリン含有

外用回数は1日1回の外用よりも1日2回(朝・夕)の外用の方が保湿効果は高く6)、そのうち1回は入浴直後が望ましい。また、塗布量の目安にはfinger tip unitを用いる。第2指の先端から第1関節部まで口径5mmのチューブから押し出された量(約0.5g)が英国成人の手掌で2枚分すなわち成人の体表面積のおよそ2%に対する適量であることが示されている7-9)。(finger tip unit)一般的に、アトピー性皮膚炎患者の皮膚は、病変部位だけでなく、正常に見える部分も経皮的水分喪失(transepidermal water loss:TEWL)が多く、ドライスキン状態にある10)。そのため、保湿外用剤は正常に見える部位も含めて全体に塗布し、皮膚炎の部位には抗炎症作用のある外用剤を併用する。また、抗炎症作用のある外用薬などの治療で皮膚炎が寛解した後にも保湿外用剤を継続して使用することは、寛解状態の維持に有効である11)。保湿外用剤による維持療法中に皮膚炎の再燃がみられた部位には、炎症の程度に応じてステロイド外用剤やタクロリムス軟膏を使用し、炎症の早期の鎮静化と維持療法への回帰を目指す。なお、稀に保湿外用薬の副作用による接触皮膚炎を生じることがあり、アトピー性皮膚炎の再燃との鑑別が重要である。

ステロイド外用剤と保湿外用剤の混合など、2種類以上の外用剤を独自に混合して処方をすることは、薬剤の安定性や経皮吸収性が変化することが予想されるため安易に行うべきではない。

日本皮膚科学会, 日本アレルギー学会 アトピー性皮膚炎診療ガイドライン作成委員会:アトピー性皮膚炎診療ガイドライン2018,
日皮会誌, 128(12), 2431-2502, 2018 ©公益社団法人日本皮膚科学会 より引用

  • 1)Loden M et al.:Acta Derm Venereol, 82(1), 45-47, 2002
  • 2)川島 眞 ら:日皮会誌, 117(6), 969-977, 2007
  • 3)van Zuuren EJ et al.:Emollients and moisturisers for eczema(Review),Cochrane Database Sys Rev, 2016
  • 4)Simpson EL et al.:J Allergy Clin Immunol, 134(4), 818-823, 2014
  • 5)Horimukai K et al.:J Allergy Clin Immunol, 134(4), 824-830, 2014
  • 6)大谷真理子 ら:日皮会誌, 122(1), 39-43, 2012
  • 7)Long CC et al.:Clin Exp Dermatol, 16(6), 444-447, 1991
  • 8)Long CC et al.:Arch Dermatol, 128(8), 1129-1130, 1992
  • 9)中村光裕 ら:皮膚の科学, 5(4), 311-316, 2006
  • 10)Werner Y et al.:Acta Derm Venereol, 65(2), 102-105, 1985
  • 11)川島 眞 ら:日皮会誌, 117(7), 1139-1145, 2007
ページトップへ
サイトマップ閉じる