薬局経営者に聞く:医療・介護・予防・行政と連携した新時代ドラッグストア展開(1/4)
大阪府を地盤に調剤併設型ドラッグストアを展開する株式会社アカカベ。今年、創業70周年を迎え、店舗数は100店舗に達しました。
6坪の薬店からスタートした同社は現在、医療・介護・予防・行政と連携した新時代ドラッグストアの展開を推し進めています。足元では郊外店舗の半数以上がクリニック連携型ドラッグストアで、調剤併設はインバウンドを除いた全店舗の90%を超えました。2025年に開催される大阪・関西万博では大阪ヘルスケアパビリオン内に店舗を開設、日本だけではなく世界に向けても「アカカベ」ブランドを発信します。

代表取締役社長 皆川 友範 氏(薬剤師・保育士)
コロナ禍には海外からマスク調達し連携先に寄贈
- ─貴社は地域に密着した店舗戦略を掲げ、2024年1月、創業70周年を迎えられました。
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【皆川】弊社は1954年(昭和29年)、大阪府城東区に赤壁薬店を創業したことに始まります。僅か6坪の相談販売をメインとした薬店でした。その後、都心商店街立地への進出に合わせ、品揃えの拡大とディスカウントを強化したファーマシータイプに進化しました。1996年には住宅立地に駐車場を備えた大型ドラッグストア業態にチャレンジ、その後、調剤併設型ドラッグストアへと変化していきました。今は、ドクタ―を誘致したクリニック連携型ドラッグストアと、観光客を対象としたインバウンドフォーマットの店舗が主流です。現在、インバウンドフォーマットの店舗を除くと、調剤併設の店舗が90%を超えています。最近、特に注力しているのがクリニック連携型ドラッグストアで、郊外店舗の半数以上がこのタイプです。
このように70年の歴史の中で、店舗フォーマットは大きく変化してきましたが、変わっていないものは創業から引き継がれてきた理念です。創業者から引き継がれた、「お客様に親切に接して喜んでいただく。アカカベに関わる皆様に喜んでいただく」という理念を現在も引き継いでいます。創業70周年を機に企業理念を再定義し、新たなミッション「『あってよかった』を、一人ひとりに。」を掲げています。
この理念を強く実感できたのが、2020年からの新型コロナウイルスのパンデミックでした。当初、私たちドラッグストア業界は感染の恐怖の中、品薄のマスクを求めるお客様の厳しい声にさらされ、大変な状況に置かれました。そこで、「何とかして地域医療を守りたい」との思いから全社一丸となってマスク、衛生用品の調達に奔走しました。海外から輸送されたコンテナから積み下ろしたばかりのマスクを「少しでも早く届けよう」と、そのまま各自の車で配送するといったことを何度も行いました。
海外を含めた新たな取引先に先入れ金を送り、大量のマスクを仕入れることは大きなリスクがありましたが、早期に医療機関・介護事業者・行政を通じて多方面に寄贈することができ、多くの感謝の言葉をいただきました。連携先からは「アカカベと取り引きしていて良かった」と言われ、また、店頭のお客様からは「この地域にアカカベがあって良かった」と多くの方に喜んでいただきました。中には、涙を流す方もおられ、今まで仕事をしてきた中で、こんなに多くの方に感謝されたのは初めての経験でした。

