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薬局経営者に聞く:未病・予防含む総合ヘルスケアビジネス構築へ(3/4)


グループ理念「すべての人の『生きる』に向き合う」策定

近年、薬局に対するニーズは多様化し、それに比例し業務も繁雑化してきました。効率化については、どのようにお考えですか。

【三津原】2019年4月に発出された、いわゆる「0402通知」の後、多くの薬局は事務職の積極的な採用に動きました。しかし弊社は、その動きに乗りませんでした。今後、社会全体の労働人口が減少していくことが明らかなのですから、医療事務職に多くを依存する調剤にしてはならないと考えました。実際に今は、中途の事務職採用は薬剤師より厳しいのが現実です。それは、当然と言えば当然の結果です。なぜなら、事務職の採用は薬局間の競争に止まらず、コンビニや飲食店など全ての産業と競合しあう大きな渦に巻き込まれるからです。その渦に突っ込むことは賢明ではないと考えました。そのため事務職の増員ではなく機械化を進めることで、合理化に結び付ける方向に舵を切りました。その背景は、私どもの薬局の1店舗当たりの売上高が業界平均の3倍あるからです。そのため店舗内において効率化を進めやすい環境にあることから、機械化を進める判断を下しました。勿論、当時もいろいろな意見が出ましたし、今も「人がやったほうが早い」などの声が聞こえてきます。そうした考え方は短期的には妥当かもしれませんが、中長期のスパンで考えると機械化のほうが効率を上げられると判断しました。

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0402通知
国は今後、医療DXを強力に推進していく考えです。電子処方箋が普及し、将来は「全国医療情報プラットフォーム」も構築されます。そうすると自ずと薬局に求められる役割も変わっていくと想定できます。今後の薬局機能については、どのようにお考えですか。

【三津原】グループ経営理念を2年前に新たに策定しました。従来は、創業理念である「真の医薬分業の実現」を継続して掲げてきたのですが、それは日本調剤という企業には当てはまるものの、グループ内の他社には必ずしもストンと腹落ちしない部分がありました。そのため全てのグループ会社の社員が共有できる理念を創設したいと考え、社内公募を中心に1年半ぐらいかけて検討しました。その結果、「すべての人の『生きる』に向き合う」というグループ理念をまとめました。従来は疾病を抱えた方を対象にしたビジネスでしたから、私個人としては「すべての人」という表現は、かなりチャレンジングな文言だと考えています。未病・予防の領域を含むからです。本来、薬局とは「健康サポート薬局」のように予防の役割が期待されているにもかかわらず、OTC薬供給を含め全てのサービスが有機的に結合し、総合的に提供されているとは言い難いのが現状です。ご批判を受けるかもしれませんが、敢えて申し上げれば、多くのOTC薬販売は一つのサービスとして提供しているに過ぎない。「モノ売り」に止まっているように見受けられます。そうではなく、付加価値として薬局の専門性を加味した上で、OTC薬販売を含めた総合的なビジネスモデルを構築できないか、現在、検討を続けています。

PB製品の「5COINS PHARMA」も2023年に発売されました。

【三津原】ご指摘の「5COINS PHARMA」やオンラインストアの立ち上げも、新たなビジネスモデル開発の一環と位置付けています。ただ、未病・予防の領域は競合が極めて激しいですから、どのように今後アライアンスを組んでいくかが成功の鍵になると考えています。

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オンラインストア「5COINS PHARMA」
オンラインストア「5COINS PHARMA」

ジョンズ・ホプキンス大学で公衆衛生学を修了

2021年にジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院を修了するなど、リスキリングを積極的に行ってこられました。学びに行かれた背景をお聞かせください。

【三津原】大学で経営学を勉強していましたので、医療を勉強したいという気持ちが以前からありました。しかも、いずれ企業のトップに立たなければならないという立場を考え始めた40代前半、医療を学んでおきたいと思うようになりました。ただし、今さら医師や薬剤師になれる歳ではありませんでしたし、そんな時間もありませんでした。一方、医師法や薬剤師法の1条には、その任務として「公衆衛生の向上及び増進に寄与し」という文言がそれぞれ明記されています。それだったら公衆衛生学について勉強してみようと思い立ったわけです。そこで国内の大学を探したのですが、興味の持てるプログラムがなかったため海外を調べたところ、ハーバード大学とジョンズ・ホプキンス大学が見つかりました。しかし、ハーバード大学は1年間の留学が必要でした。一方、ジョンズ・ホプキンス大学はオンラインとリアルのコンバインでプログラムが構成されていました。「これは最後のチャンス」と思い、急きょ、英語を猛勉強して何とか合格することができました。年に1回、リアルの講義に行きましたが、日本人の同期は全員、医師でした。
実際に公衆衛生学を学んでみると、半分くらいは文系分野が入っているのです。たぶん、学んでいた医師もビックリしたはずです。ですから、お互いに助け合いながら3年間のプログラムを終えることができました。ちょうどコロナ禍の頃でしたので、各国の防疫対策を比較する講義などもありました。

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日本調剤株式会社(東京都) 代表取締役社長 三津原 庸介 氏

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