メインコンテンツに移動

薬局経営者に聞く:調剤併設ドラッグを1㎞ごとに出店、半径25㎞圏内に75店舗(3/4)


備蓄薬局に専任配送員を配置し10分以内に店舗に配達

現在、門前薬局は何店舗になっているのですか。

【平野】今では、7店舗あります。そこでは身体障がい者の方々を配送要員として雇用しています。これらの店舗を私どもでは「センター店舗」と呼んでいるのですが、センター店舗からクルマで10分以内の地区に、弊社の店舗の90%が存在しています。従って、薬がない場合でも10分以内には、センター店舗から各薬局に薬が届けられる体制を整えています。

記事/インライン画像
門前薬局
店舗展開

実は、この配送体制を構築した背景には、一つのエピソードがあります。当時、副社長だった私のところに一人の薬剤師が来て、「昨日、とても良いことがありました。聞いてください!」と言って話してくれたのは、欠品のため患者さんに迷惑を掛けたという内容でした。あちこちの店舗を回って薬を集め、調剤を終えてご自宅に届けたのは夜10時になっていた。患者さんはとても感激してくれたそうで、「薬剤師になって良かった」と嬉しそうに体験を話してくれました。それを聞いていて、私は違和感があった。お客が店に行ったら商品がなくて、夜、10時に届けたら「有難う」と言われて感謝される世界が薬局以外にあるのだろうか、という違和感でした。本来ならば商品が揃っているのが当たり前で、なかったら文句を言われるのが普通です。しかし、薬局の世界は違う。しかも、その患者さんはその後、当該薬局には来なかった。「私のために頑張ってくれた親切な薬剤師に、また迷惑を掛けたくない」と思ったからでしょう。

この一件から学んだことは、この業界で何をもってサービスと言うのか、根本から考え直さなければならないということでした。だからこそ、配送要員を配置したセンター店舗を作り、患者さんが待てる時間内に薬を各薬局に届ける必要があった。もっと言えば、以前ならファックス、今ならば処方箋アプリを活用し、患者さんが帰宅したら薬が届いているぐらいのサービスを提供したいと考えました。

その後、私の見込み通りに処方箋が面に広がり、センター店舗の役割はますます高まっていきました。しかし、いずれ大病院の外来患者も減少していくでしょう。それも織り込み済みです。その時は、今、議論されている調剤センターのような機能を持たせたいと考えています。

診療所の誘致は順調に進んだのでしょうか。

【平野】ずっとテーマとして残されていたのが診療所の誘致でした。ドラッグストアを先に作り、診療所を誘致しようとしたのですが、これにも社員からは「そんなこと、できるわけがない」と冷ややかに見られました。しかし、2004年に初めて診療所を誘致でき、その後、20年弱の間に50軒以上の診療所を誘致してきました。医師には、弊社が薬歴を全店で共有していることを説明し、重複投薬が発見された場合や飲み合わせに問題があれば即座に連絡し、処方変更をお願いすることに理解をいただいています。

ドラッグ会員32万人、調剤のユニーク患者23万人

【平野】ここまでお話ししてきたように、これまで最も苦労したのは、実は現場を支えている従業員に私の考えを、どのように理解・納得してもらうのか、ということだったかもしれません。その延長線上で今、生みの苦しみをわが社が味わっていることは事実です。即ち、疾患の早期発見に貢献していくというテーマです。

現在、弊社には処方箋は持ってこないものの、ドラッグストアに買い物に来てくださっている顧客がたくさんいます。われわれの商圏である北九州市と下関市の人口は116万人で、所帯数が55万軒です。そのうちドラッグの会員数が32万人で、ドラッグのアプリ会員数は16万人です。調剤のユニーク患者数は23万人、ドラッグ会員であり調剤の患者さんでもある方は9万人います。そうすると、こういう購買行動を取る方が、この疾病を発症する傾向が高いということが分かります。あるいは、ある疾患の処方箋を持参した方の購買行動の変化まで把握できます。つまり潜在患者の発掘、患者でない人を患者にするという意味ではなく、早く発見することで早期対応を促すことができるわけです。具体的には、ドラッグのアプリ会員は積極的に情報を閲覧してくれますので、そこに個別のアラートを流すようにすれば、疾患の早期発見・早期対応が可能になるのではないかとか、現在、検討している最中です。

記事/インライン画像
株式会社サンキュードラッグ(福岡県北九州市) 代表取締役社長 兼 CEO 平野 健二 氏
実際に動き始めているわけですね。

【平野】その通りです。ちなみに2022年度の処方箋の受付回数は110万回で、既存店で前年度に比べて6万回増えました。日本の一人当たりの処方箋発行枚数は6.6枚ですから、それを北九州市と下関市の人口と掛け算し、弊社の処方箋枚数の占有率を調べると14.5%でした。しかも毎年度、0.75ポイントずつ増えています。この数字は、経営の側面から見ると面処方の増加を意味する一方、医療の観点からは、一人の患者さんの複数医療機関からの処方箋持ち込みが増えていることを物語っています。

これまでお話ししましたように、弊社は北九州市と下関市でドミナント出店を展開しています。その中で、弊社が掲げる「地域の生活と健康のインフラになる」という目標にどれだけ近づいているかどうか、調査したことがあります。即ち、複数医療機関から処方箋を持ち込んでくれている患者さんが、どのくらいの割合なのかを調べました。すると、会社全体ではユニーク患者数23万人のうち18.5%でした。私は、もっと多くの割合なのかと思っていたのですが、18.5%だった。一方、かかりつけ薬局として利用している患者さんがどれだけいるのかを見るために薬局ごとに調べると、各店によって差はあるものの平均では7.4%しかいませんでした。

弊社のように北九州市と下関市に集中出店していても、かかりつけとして弊社の薬局を利用しているのは全社で2割以下だった。しかし逆に言うと、少なくともこの2割の方々に対しては、薬歴の共有によって重複投与や相互作用を防止できていることになります。従って、オンライン資格確認によって薬歴が閲覧できるとは言え2カ月遅れですから、弊社の薬歴共有の取り組みが、電子処方箋が普及するまでは大いに有効だと考えています。

お問い合わせ

お問い合わせの内容ごとに
専用の窓口を設けております。

各種お問い合わせ

Dermado デルマド 皮膚科学領域のお役立ち会員サイト

医学賞 マルホ研究賞 | Master of Dermatology(Maruho)

マルホ地域連携推進LINE

Web会員サービス

ページトップへ