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リスクマネジメント

薬局における外国人対応の現状とこれから

株式会社フォーラル 教育担当シニアマネジャー雨宮 淑子 先生

はじめに

近年、外国人居住者や民泊利用などが増え、観光地ではない地域の保険薬局でも外国人対応に遭遇することがあります。政府は東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年の訪日外国人旅行者数の目標を4,000万人、2030年は6,000万人としており1)、今後さらに地域の保険薬局における外国人対応が必要となることが考えられます。また、保険薬局は保険調剤だけでなく、OTCによる対応など、受診以外での医療に携わることも多く、積極的に外国人の医療に係わっていくことが必要ですが、薬を扱う以上は有効性と安全性を担保することが求められ、専門用語を含め、正確な情報を伝えることが必須となります。しかし、外国語対応のできるスタッフが限られている場合も多く、十分に対応することが難しい状況にあります。
弊社でも外国語対応ができるスタッフは少なく、十分な外国人対応は難しい状況にありました。しかし、地域で外国人の医療に貢献したいという思いから、外国人対応チームを結成し、「外国人の方々でも安心してご利用いただける薬局」を目指して、主に3つの取り組みを行ってまいりました。

  • ①ツールの開発

    外国語が堪能でなくてもコミュニケーションがとれる社内統一のツールを作成。受付時や服薬指導・栄養指導などで簡単に会話できる指さしのツール(図1)、チェックするだけで簡単に使用できる英語薬袋などを全店舗(21店舗)に設置。

  • ②社内勉強会の実施

    スタッフの英語力アップおよび外国人対応への苦手意識を改善するため、英会話講座を開催。ロールプレイを多く取り入れ、ツールを使って簡単にできる受付時の対応・服薬指導・栄養指導などを実践的な内容で実施。

  • ③ホットラインの設置

    現場でスタッフが対応できない時に手助けするための社内ホットライン。スタッフからの問い合わせ、翻訳などに、外国人対応チームのメンバーが対応。

コミュニケーションを助けるツール「薬局 指さし会話帳®」

図1.コミュニケーションを助けるツール「薬局 指さし会話帳®」

これらの活動をさらに充実させるため、社内における外国人対応の現状を調査し、今後の課題・展望を検討しました。

方法

社内14店舗のスタッフ(105名)に対し、外国人対応についてのアンケートを実施しました。また、社内の外国人の来局が比較的多い7店舗で、来局した外国人患者を対象に、薬局の対応に対するアンケートを実施しました(調査期間:2017年2月1日~2017年3月5日)。

結果

103名(98%)のスタッフが「外国人の対応をしたことがある」と回答しました。頻度は「週1~5回」が48名(47%)と最も多く、次いで「月1~5回以上」33名(32%)、「週6~10回」2名(2%)でした。日本人患者と比較した場合の外国人患者とのコミュニケーションについては「最低限のことしかできていない」および「できていない」が90名(86%)と大多数を占めていました(図2)。また「外国人対応で困ったことがある」は100名(95%)であり、その内容としては「こちらの伝えたいことが伝わらない」が69名、「伝えたことを理解しているかが分からない」は66名と、伝えることに困っているスタッフが多いことが分かりました(図3)。社内における外国人対応の方法では「身振り手振り」が89名と最多であり、「日本語」74名、「英語等の外国語」56名、「外国人対応チームのツール」50名と続きました。

  • 図2. アンケート結果①(日本人スタッフ)

    図2.アンケート結果①(日本人スタッフ)

  • 図3.アンケート結果②(日本人スタッフ)

    図3.アンケート結果②(日本人スタッフ)

一方、外国人患者へのアンケートでは、薬局やドラッグストアで薬や商品を購入する際に「困ったり不安になったことがある」は48名中10名(21%)でした。その中で「言葉が通じなかった」は3名と少数であり、最も多かったのは「薬剤購入方法が自国と日本で異なっていた」の7名でした(図4)。

図4. アンケート結果③(外国人の来局者)

図4. アンケート結果③(外国人の来局者)

考察

「外国人対応が上手くできていない」と思うスタッフの割合が高かったにもかかわらず「言葉が通じない」と感じる外国人患者の割合が少なかったのは、スタッフが片言でも英語を話せることや、日本語を話せる外国人患者がいたためではないかと推測されます。スタッフが自信を持ち片言でも英語を話すことにより、意思の疎通が図れるのではないかと考えられたため、現在は英会話講座の充実に取り組んでおります。なお、2018年度の英会話講座では疾患別シリーズとして、かぜ症候群や消化器疾患などをテーマに実施しました。
また、薬を飲むうえで情報を十分に伝えられないことは、誤服用や副作用発現につながるおそれがあるため、英語ができなくても外国人対応が可能な指さしのツールや、システムの整備を進めています。さらに、購入方法などに関する日本の医療システムを外国人が理解することで、薬局を安心して利用できるようになると考えられるため、これらの情報を発信する検討を行っております。
地域の小規模な薬局では、外国人対応に人員やコスト、時間を十分にかけられない状況があります。しかし、現場で簡単に使える低コストのツールやシステムを開発することにより、訪れる外国人と現場スタッフの両者にとって安全で安心な対応を行うことが可能であると考えられます。

■参考文献

  • 観光立国推進閣僚会議 : 観光ビジョン実現プログラム2018(平成30年6月)

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