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薬剤師のための情報 maruho square

チーム医療と薬剤師

入院中の薬のリスクを回避したい
ー急性期病院が模索する地域保険薬局との薬薬連携

東京都では、誰もが質の高い医療を受けられ、安心して暮らせる東京の実現をめざし、医療法第30条の4に基づき定める医療計画に掲げられた地域医療構想のもと、構想区域(主に第二次保健医療圏)ごとに病床機能の分化および連携を推進している。その一貫として、高度急性期機能病院の薬剤師(以下、病院薬剤師)と保険薬局・かかりつけ薬剤師は構想区域の地域特性に応じた薬薬連携を模索し、実践に繋げている。今回はその経緯・現状、今後の展望などについて、病院薬剤師の立場から東京都立多摩総合医療センター薬剤科の廣井順子先生にお話しいただいた。

株式会社永冨調剤薬局 在宅推進部 部長 矢吹 洸二 先生

東京都立多摩総合医療センター薬剤科科長廣井 順子 先生

入院中の薬に起因するリスク回避と地域全体のシームレスな薬物療法の継続をめざす

先生は以前のご勤務先である都立墨東病院における薬薬連携の取り組みや課題を学会にて報告されました。病院薬剤師の立場から薬薬連携の必要性について詳しく教えてください。

永冨調剤薬局敷戸団地店(大分市大字鴛野362-8)

薬剤師による入院前面談の様子(持参薬コーナーにて)

【廣井】東京都は全都立病院に、多職種連携による患者支援センター(入院サポートセンター、退院サポートセンター)を整備し、入院から退院まで患者さんが安心して医療を受け、在宅療養生活を継続するための医療支援を行っています。病院薬剤師も、入院予定患者さんの持参薬の確認、アレルギー、副作用歴、併用治療などの情報収集と併せて、医師の指示に基づき検査や処置に先立ち中止すべき薬に関する指導を行うなど、入院サポート業務に大きく携わっています。しかし、病院薬剤師は入院予定患者さんの対応に多くの時間を割くことがかなわず、多職種に頼らざるを得ない現状があります。在院日数の短縮化も進んでいます。このような状況において、入院中の薬に起因するリスクを減らし、退・転院後もスムーズに薬物療法を継続していくためには、事前に患者さんの情報を効率よく的確に入手する必要があります。
ここで、患者さんの情報を日頃から管理しているのは地域の保険薬局・かかりつけ薬剤師(以下、保険薬局薬剤師)になりますので、病院薬剤師と保険薬局薬剤師の間で情報共有することをめざしました。

都立墨東病院での薬薬連携は、どのように進められたのですか。

【廣井】墨東病院がある保健医療圏の住民は、普段は大学病院などが多い隣接区の医療機関を受診する傾向がありますが、救急時には地元に搬送されます。そこで当該地区の薬剤師会と協力し、研修会などでクリニカルパス(入院診療計画書)、入院サポートセンターの役割と病院薬剤師の活動などについて説明し、入院決定から入院までの患者さんの動きを理解していただくようにしました。そのうえで、入院目的などの情報を提供する体制を構築し、保険薬局薬剤師が患者背景を考慮して服薬管理に介入し、病院薬剤師に情報を共有してほしいと協力を要請しました。この取り組みの結果、短期入院患者さんにおいて、手術前に中止すべき薬を中止し忘れたため手術が延期になるような事例はみられなくなりました。

薬薬連携システム構築の基盤となる病院薬剤師と薬局薬剤師の情報共有・相互理解を促進

多摩総合医療センターの状況を教えていただけますか。

【廣井】当センターは当該構想区域である北多摩南部保健医療圏以外からの来院や搬送も少なくなく、情報を広範囲から取らなければならない地域特性があります(図1)。広範囲となると、例えばシステムの周知も困難であり、墨東病院のようにはいきません。
そこで当センターでは、2度の入院前面談で薬剤師が情報を取っています。初回は入院が決定した日、2回目にお薬手帳、持参薬の内容確認と、アレルギーや副作用歴などに関する情報収集を行い、それを、次に患者さんが受診する麻酔科外来に繋ぎます(図2)。入院までに患者さんが新たな薬を飲むことになった場合は、そのことを病院薬剤師に電話連絡してくれるよう、患者さんに伝えています。
  • 図1. 東京都多摩地区の第二次保健医療圏(一部)

    図1. 東京都多摩地区の第二次保健医療圏(一部)

  • 図2. 東京都立多摩総合医療センターの入院サポートセンターにおける薬剤師の動き

    図2. 東京都立多摩総合医療センターの入院サポートセンターにおける薬剤師の動き

今後、2回目の病院薬剤師の面談時に的確な情報収集が効率よく行えるシステムを構築していくのが計画の要となります。例えば、薬剤師外来で持参薬とお薬手帳を確認していますが、患者さんの服薬コンプライアンスに関する情報も保険薬局から提供していただければ、服薬コンプライアンスの急な変化に伴って生じうるリスクも回避できます。しかし、どのような情報をご提供いただくかなど、具体的なことはこれからの話です。当センターのカバーする地域が広範囲であることから、まずは近隣の保険薬局の協力を得て、薬薬連携システムを構築する基盤となる病院薬剤師と保険薬局薬剤師の情報共有・相互理解に努めているところです。
東京都立多摩総合医療センターの概要

疑義照会の情報共有から抜本的に見直し、患者さんに役立つ薬薬連携システムの確立をめざす

【廣井】当センターは同じ多摩キャンパス内の都立小児総合医療センター、都立神経病院と協力して薬薬連携研修会を定期的に開催しています。研修会のテーマは、呼吸器デバイス、抗菌薬適正使用、AMR(antimicrobial resistance)対策など、保険薬局薬剤師の希望を取り入れたものとしています。加えて、府中市薬剤師会のご協力のもと、近隣の保険薬局薬剤師と病院薬剤師とで連絡会を開催しつつ、情報共有・相互理解を図っています。その中で、クリニカルパス、入院までの患者さんの動き、入院サポートセンターでの病院薬剤師の活動などについても説明しました。今後は、当センターで開催するクリニカルパス大会を保険薬局薬剤師にも案内する予定です。
ところで、保険薬局薬剤師による疑義照会情報は、多くの場合、お薬手帳には記載されていませんし、疑義照会を受けた医師がカルテに記録しているとは限りません。つまり、疑義照会情報を持っているのは保険薬局だけです。しかし、入院後の薬に関するリスクを回避するためには、服薬コンプライアンス以外にも疑義照会内容まで含めた患者さんの薬の情報をきちんと把握できるシステムを構築しておく必要があります。
そこで2018年度から、近隣の保険薬局薬剤師から当センターの医師に実施している疑義照会の内容を1ヵ月分ずつまとめて当センターにご提供いただき、その内容を当センターにて精査したうえで、あまりにもリスクの高い疑義照会から改善策を講じる取り組みを始めました。例えば、手書きで薬を追加しているが電子カルテシステム上では薬品登録がないためカルテに載らないようなケースでは、きちんと薬品登録をします。医師に病院薬剤師からアプローチすることで正されることもあります。院外処方箋の記載内容が恒常的に正しくなることにより疑義照会がなくなるという意味で、より根本的なところからの取り組みといえます。
近い将来、病院薬剤師は保険薬局を、保険薬局薬剤師は病院の薬剤科を見学して、お互いに業務の流れや、患者さんからの情報収集の方法・内容などを理解したうえで、「本当に必要な情報は何か」「お薬手帳に記載するべき情報は何か」などを話し合い、現在のシステムを抜本的に改革しながら、薬薬連携のシステムを確立させたいと考えています。
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