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リスクマネジメント

小児科門前薬局における乳幼児服薬指導強化の取り組み

クオール株式会社 クオール薬局松戸店田島 亮 先生

はじめに

私の薬局薬剤師人生は小児科の門前薬局から始まりました。その薬局の主処方元である小児科クリニックは年中無休で朝8時から夜10時までの開院時間を標榜しており、薬局も多くの患児のご両親から「医薬品の飲ませ方」「医薬品の適正な保管方法、保管期間」「誤飲」に関する多数の質問を受けてきました。夜間帯にアナフィラキシーショックなどのアレルギー症状、誤飲といった緊急性の高い質問を受け、医療機関や中毒情報センターの紹介をしたり、メルクマニュアルなどの手順書に則り状況に応じた指導や説明を行ったりしたこともあります。しかし、誤飲については、誤飲を起こさないための指導を行うことが何よりも重要であると考えます。実際、医療従事者から誤飲防止策について指導を受けたことがない方も多いのです。
本稿では「医療従事者側の不十分な指導と患者さん側の思い込みが医療事故につながるリスクを防ぎたい」、という思いから始まった薬局の取り組みを紹介します。

上手な服薬指導の鍵は、情報収集・情報管理

患児やそれを取り巻く環境情報を収集し管理することが服薬指導の第一歩です。患児の体重の変化はもちろん、好き嫌いや言語の理解度は、服薬指導において大変重要なファクターです。また、共働きが多く核家族化が進む昨今、保育園や幼稚園の事情で昼間の服薬が難しいケースも散見されます。ご両親への服薬指導時によく耳にするのは「昼に飲ませられないので、3回のところを2回にしていた」というケースです。
抗微生物薬の適正使用を例に挙げれば、こうした場合に患児が受ける不利益には薬剤耐性菌の出現など多数あり、自己判断で服用回数を調節することは決してあってはなりません。医療従事者にとって抗微生物薬の適正使用は当然のことですが、服用回数を変更してはいけないことをご存じないご両親もいらっしゃいます。「抗微生物薬の適正使用のことは誰かが指導しているだろう」「どこかで聞いているだろう」との憶測で業務に当たると前述のような状況になり得ます。だからこそ「抗微生物薬の適正使用について指導済み」であることを薬歴に記載しておくべきです。また、1度の指導では内容が十分に伝わらないこともあるため、患者さん側の理解度に応じて幾度でも同様の指導を行うよう心掛けてきました。
患児の医薬品の適正使用には、体質や生活環境だけでなく家族の情報も必要であることがお分かりいただけると思います。薬歴の患者基本情報の充実が患児の医薬品の適正使用、医療事故防止につながると考えます。皆様の薬局では十分な情報収集と情報管理が実施できているでしょうか?

手順書作成が、薬剤師のスキル差による患者さん不利益を解消

小児科領域の鑑査や服薬指導に苦手意識のある薬剤師もいらっしゃると思います。子育て経験や小児科門薬局での勤務経験の有無で、服薬指導のスキルには大きな差が生まれます。当薬局の取り組みは、小児科領域の服薬指導が苦手でも、手順に則ることで「必要最低限の情報提供が可能になる」ことを目的とし手順書を作成したのが始まりでした。指導指針の作成ともいえます。
2015年1月1日~12月31日の間に来局した小児患者9,696名のうち、特に乳幼児加算を算定している1,626件の薬歴をチェックしたところ、不十分な服薬指導は大きく3種類に分かれました。①月齢に即した指導ができていない、②患児の好き嫌いが把握できていない、③得意な、あるいは不得意な剤形が把握できていない、というものです。
①月齢に即した指導とは、特に子どもの飲食の変化を考えることを指します。生後2~3ヵ月の患児のご両親に「ゼリーなどにかき混ぜると苦みがマスクされて飲みやすいですよ」と指導した例がみられましたが、離乳食開始前の患児は、もちろんゼリーを食べることができません。1歳未満の乳児では蜂蜜は禁忌であること、ミルクなどの主食と医薬品を混ぜるのは避けるといった禁止事項の説明も必要です。
②好き嫌いの把握は、飲み合わせの指導において大変重要です。甘い味が苦手な患児と「シロップなら飲みやすいだろう」とシロップばかり希望するご両親で食い違いが起こるケースも珍しくありません。1歳に満たない患児では散剤の服薬に苦労しないことも意外とあります。散剤に慣れさせることも必要かもしれませんので、「シロップなら必ず飲みやすい」というご両親の認識を変える必要があるかもしれません。
③得意・不得意な剤形の把握は、特に外用薬に関連します。小児の処方ではアセトアミノフェン坐剤、ドンペリドン坐剤がよくみられますが、あまり使いたくないと考えるご両親も多いのです。痛みの少ない挿入方法を指導するのは薬剤師として当然の責務ですが、散剤より坐剤のほうが得意な患児もいます。以上、①~③を元に手順書を作成しました。
6ヵ月未満、6ヵ月以上1歳未満、1歳以上と、ある程度の月齢に分け、必ず確認すべき5項目として、散剤・水剤の服用歴の確認、食事の回数や内容の確認、上手な飲ませ方の指導、全量服用の指導、禁止事項の説明を設定しました。プラスアルファとして、外用薬やデバイスの指導、特殊な医薬品の飲ませ方、使い方も手順に盛り込みました。薬歴には指導した内容を患者基本情報に残すというルールで運用しました(図1)。
手順書の作成以降、16.8%(1,626件/9,696件、2015年1年間のデータ)であった乳幼児加算の算定割合が32.2%(340件/1,055件、2016年2ヵ月間のデータ)に向上しました(図2)。手順の導入前後に実施したアンケートでは、小児科に苦手意識のある薬剤師からも「自信を持って指導することができるようになった」という声が多数寄せられました。

  • 図1. 必要最低限の情報提供が可能となる手順書(指導指針)のイメージ図

    図1. 必要最低限の情報提供が可能となる手順書(指導指針)のイメージ図

  • 図2. 手順書作成前後における乳幼児加算算定割合の推移

    図2. 手順書作成前後における乳幼児加算算定割合の推移

誤飲防止について

乳幼児加算の算定要件には「誤飲防止」についての記述があることはご存じの通りです。これは社会のニーズを踏まえた、薬剤師に対しての期待感の現れであると私は考えています。ジェルボール型の洗濯用洗剤や電子タバコ、多数の医薬品の誤飲が報告されており、PTPシートの加工やチャイルドレジスタンス(CR)容器を採用した製薬企業もあります。
しかし厚生労働省の報告1)によると、誤飲防止について医療従事者から指導を受けたことがあるかどうかのアンケート(約700名)では「受けたことがない」「受けたかどうかを覚えていない」と答えた方が合わせて約6割にのぼりました。このような現状を変えるべく、薬局薬剤師として誤飲防止についての指導に取り組むことは大変有意義であると考えます。また指導以外にも、例えばシロップ剤の調剤ではCR容器を導入することで誤飲防止につながるでしょう。

さいごに

本取り組みは薬局でどのような指導をどの程度行ってきたかを把握すると同時に、患児への服薬指導が苦手な薬剤師のための指針としての利用も目的としました。平成30年度診療報酬改定では在宅現場でも乳幼児加算の算定が盛り込まれたことからも、小児科領域へのニーズの高さがうかがえます。
現在、クオール株式会社では地域の方向けに「子育て大学」という名前で講演・相談会を定期的に実施しています。東京都江戸川区、千葉県柏市を拠点として、各地で小児科医、看護師、管理栄養士などの医療従事者や、消防署など行政の方、メーカーの方と連携し、子どもの成長に関わる内容の講演会を行っています。今後も保険薬局薬剤師の立場から医薬品の適正使用や誤飲防止、広く公衆衛生に関わることで、より安全な薬物治療を提供できるよう努めていきたいと思います。

参考文献

  • 厚生労働省医薬・生活衛生局:医薬品・医療機器等安全性情報 No.330.平成28年(2016年)2月.

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