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チーム医療と薬剤師

施設在宅における多剤投与抑制への薬剤師介入例
~訪問診療同行と他職種連携から見えてきたもの~

超高齢社会を迎えた日本において多剤投与防止など薬剤師の果たす役割は大きい。一方で、医師へのたび重なる疑義照会は、互いの業務に支障を来し関係性が崩れるおそれもあるとして、躊躇する薬剤師は少なくない。大分県内で最大のネットワークを展開している株式会社永冨調剤薬局(本社:大分県大分市、大分市内を中心に23店舗運営)では、施設在宅において、薬剤師が「訪問診療同行」と「他職種連携」により多剤投与抑制に尽力している。今回はその経緯と現状、今後の展望について、矢吹洸二先生にお話を伺った。

株式会社永冨調剤薬局 在宅推進部 部長 矢吹 洸二 先生

株式会社永冨調剤薬局在宅推進部 部長矢吹 洸二 先生

グループ薬局の在宅専門薬剤師が連携し365日24時間の在宅医療に対応

株式会社永冨調剤薬局では、どのように在宅医療を実施されていますか?

【矢吹】私は関西地区にて薬剤師としてのキャリアを積んだ後、2013年より当社にてブロック長としての管理業務と勤務店舗の在宅業務を兼任してきました。当初、大分市内を中心に20数店舗を展開する当社保険薬局のうち2店舗で、私以外に2名の薬剤師が在宅医療に携わっている状況でした。
現在は、大分市内のグループ薬局に勤務する3~4名の薬剤師がほぼ専従のかたちで在宅医療に携わっており(以下、在宅薬剤師)、365日・24時間の対応をしています。具体的には、在宅患者さんや医療機関からの連絡を常に受けられる携帯電話を在宅薬剤師が1週間交替の輪番制で持ち、必要が生じた場合に担当の在宅薬剤師に連絡して対応に当たっています。担当薬剤師が出張などで不在である場合は、他の在宅薬剤師がフォローしています。
永冨調剤薬局敷戸団地店(大分市大字鴛野362-8)

永冨調剤薬局敷戸団地店(大分市大字鴛野362-8)

実際の活動頻度や体制について教えてください。

【矢吹】現在こちらの店舗で在宅医療に関わっているのは私1名であり、ほぼ毎日、朝から夕刻までを在宅医療業務に費やしています。訪問回数は患者さんの状況・ニーズによって変えており、例えば、定期処方だけの方なら週に1~2回、肺炎などを起こしている場合は毎日、入退院を繰り返している不安定な状態の方では日に複数回訪問することもあります。
在宅医療に興味を持っている薬剤師が弊社にも少なくありません。店舗に在宅医療の要請があれば、他の在宅薬剤師や管理薬剤師など経験者の支援のもとで在宅医療業務の経験を積んでいけるよう、体制を整えています。

医師へのスムーズな処方提案に重要なのは顔の見える関係づくりと患者さんの意向の把握

在宅医療に関わる中で、心がけておられることを教えてください。

【矢吹】多剤投与防止に関する薬剤師の役割は大きく、期待されているところです。多くの薬剤が処方されている在宅患者さんなどで減薬が可能なケースもあります。しかし、薬剤師が減薬にのみとらわれて、医師に何でもかんでも疑義照会したり一方的に提案したりすると、医師の治療方針と食い違いを生じる場合があります。また、患者さんの意向を確認しないまま減薬をすると、信頼関係が損なわれることもあるため、注意が必要です。
このようなことを踏まえ、当社の在宅薬剤師は普段から表1に示すような準備をしながら疑義照会や処方提案をし、結果として減薬できたケースをしばしば経験しています(表2)。医師の訪問診療に薬剤師が同行する場合、多剤投与を抑制できる傾向にあるといえます。
  • 表1. 当薬局の在宅薬剤師が実施していること

    表1. 当薬局の在宅薬剤師が実施していること

  • 表2. 処方提案のタイミングと減薬された薬剤の例

    表2. 処方提案のタイミングと減薬された薬剤の例

訪問診療に薬剤師が同行するメリットについて詳しく教えてください。

【矢吹】同一施設内における患者さん26名を、医師の訪問診療に当社薬剤師が同行する13名(同行あり群)と薬剤師が同行しない13名(同行なし群)に分け(表3)、剤数(外用剤・頓用を含まない)、1日薬価、服用回数それぞれの平均値を2012年3月と2017年3月で比較しました。薬価の比較では、2年ごとの改定分を補正しています。
結果は図に示すとおりです。同行あり群で平均剤数が少なく、5年後でも増加していませんでしたが、同行なし群では5年間で増加傾向がみられました(図-A)。平均1日薬価は同行なし群で上昇傾向がみられ(図-B)、服用回数も同行なし群でわずかに上昇していました(図-C)。なお、2016年4月~2017年3月の1年間における重複投与・相互作用等防止加算の算定件数は、同行あり群49件、同行なし群21件でした。
このように、初回と5年後の比較では、同行あり群において1日薬価、服用回数の平均値が低下傾向を示し、重複防止や残薬の再利用も多い傾向がみられました。薬剤師が訪問診療に同行することで多剤投与を抑制し、薬剤の適正使用が促進されていることを示す結果であると考えています。医師からは「薬剤師とともに検査結果が確認できることに加え、薬剤師が患者さんの意向や残薬数などを事前に把握しているため処方が容易となり、診療がスムーズになった」との評価をいただきました。訪問看護師からは「薬の管理を薬剤師に任せることで、看護に集中できる」、介護者(家族・介護職)からは「服用回数が減り、介護の負担が減った」といった声も寄せられました。こうしたことを背景に、医師をはじめ訪問看護師、施設責任者、介護者より、訪問診療への薬剤師同行の要望が高まっています。

表3. 患者属性と処方分類

表3. 患者属性と処方分類

図. 施設在宅への薬剤師同行の有無別にみた剤数、1日薬価および服用回数の変化

図. 施設在宅への薬剤師同行の有無別にみた剤数、1日薬価および服用回数の変化

今後の展望をお聞かせください。

【矢吹】居宅療養管理指導料の算定要件には含まれませんが、当社では、訪問看護師やリハビリスタッフ(理学療法士、作業療法士)にも訪問後の報告書を送り、薬の増減や変更に伴う副作用情報を共有して注意喚起しています。また、ご家族や介護職には「このような症状が出現したら医師に相談してください」などと要点を絞って伝えています。薬剤師よりも患者さんに頻回に接する方々にこそ、副作用の徴候にいち早く気づいてもらう必要があるからです。このように、薬剤師の介入により多職種で患者さんを見守る体制を強化していきたいと思います。あわせて、私同様、在宅医療に集中できる薬剤師が保険薬局にも増えることを願っています。

ありがとうございました。

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