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maruho square 保険薬局マネジメント:仙台市薬剤師会の取り組みを介して、市民・薬局・行政の信頼関係を構築できる地域密着型薬局をめざす


株式会社オオノ(本社:宮城県仙台市、2018年5月現在、東北・関東で55店舗運営)では、1977年の創業以来「地域の人々の健康で豊かな暮らしに貢献します」というミッションを掲げ、地域の人々が気軽に立ち寄ることができる薬局作りをめざしている。同社はまた、2013年から仙台市薬剤師会が取り組み始めた「健康(労働)寿命」延伸アクションプランに参加し、同会が目標とする地域密着型薬局(ハートヘルスプラザ)として、地域包括支援センターと密な連携による認知症対応などをはじめ様々な活動を展開している。その活動について、これまでの経緯、現状、今後の展望を藤田先生に伺った。

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株式会社オオノ ひかり薬局大学病院前調剤センター 店長兼管理薬剤師 藤田 尚宏 先生
  • 株式会社オオノ ひかり薬局大学病院前調剤センター 店長/管理薬剤師 藤田 尚宏 先生

仙台市薬剤師会が取り組む「健康(労働)寿命」延伸アクションプランに参画

仙台市薬剤師会(以下、同会)は、以前から、薬局を心と健康情報の発信および中継の拠点と位置づけ、市民・薬局/薬剤師・行政の信頼関係を構築できる「保険調剤だけでない、地域密着型薬局/薬剤師」の育成に力を注いできた。その活動の一環として、市民一人ひとりの健康管理の充実により、健やかに生活し働き老いる「健康(労働)寿命」延伸アクションプランを2013年に策定し、同会のめざす地域密着型薬局を「ハートヘルスプラザ」と名づけ、ここを拠点に様々な活動を展開することにした。
同年、最初のアクションプランとして「認知症対応」の取り組みが始まった。背景には、認知症が社会問題であることや服薬アドヒアランスが重要な疾患であること、早期発見による適切な治療が疾病の進展速度を抑制することに加え、仙台市が国のモデル事業として認知症初期集中支援事業を実施しており、その支援チームに薬局薬剤師の参画を要請してきたことなどがある。

一方、若手薬剤師を中心とするワーキンググループ(WG)が月1~2回の研修会を開催し、まずはメンバーの認知症に関する知識や対応スキルを向上させた。その上で、早期発見と服薬継続支援を認知症対応薬局の役割と定め()、薬局への入店から処方箋受付時、投薬・服薬指導時、一般的会話から店内での様子、退出までの各場面で認知症を疑うべきポイントとその際の対応、地域包括支援センターへつなぐタイミングなどを示した「薬局における認知症の気づき場面集」、本人らしく得意なことが続けられる環境作りをめざした「服薬継続向上のための患者初期指導ツール」、患者フォローリストなどを作成した。「認知症は症状に変動があることから、地域包括支援センターへの紹介の必要性を見極めるまでしばらく観察する必要があり、その経過を記録するものとして患者フォローリストを作成しました」と藤田先生は話す。
このような入念な準備を経て、2014年4月より、30店舗が「認知症対応薬局」として活動を開始。株式会社オオノ(以下、同社)も、同会の活動がミッションに合致すること、以前より藤田先生が中心となって独自の認知症SOAPを作成するなど取り組みを進めていたことから、藤田先生を含む薬剤師数名が初期からWGに参加し、ひかり薬局大学病院前調剤センター(以下、同薬局)など数店舗がいち早く認知症対応薬局として名乗りをあげた。

図:仙台市薬剤師会の認知症対応薬局に期待される役割
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仙台市薬剤師会の認知症対応薬局に期待される役割
ひかり薬局大学病院前調剤センター(仙台市青葉区支倉町4-34)
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佐野薬局中通一丁目店(秋田市中通1-2-16)

地域包括支援センターと連携し、認知症に対応すべく主体的な活動を展開

しかし、活動開始当初、薬局と地域包括支援センターは互いの役割や機能を十分に理解しているとは言い難かった。そこでスムーズな連携を行うための関係構築をめざして、仙台市内の50ヵ所の地域包括支援センターに対応する薬局(以下、対応薬局)を担当エリアごとに決め、研修会や勉強会を合同で開催したり、地域住民に対する認知症の啓発活動を行ったりして顔の見える関係作りに取り組んだという。「前任地のエリアの地域包括支援センターは、以前から認知症啓発活動の1つとして市民を交えた寸劇や認知症カフェを開催していました。我々も医療従事者として依頼を受けて、寸劇のなかで医師・看護師役として参加したり、認知症カフェでお薬相談を実施したりするなど、地域包括支援センターとの連携を強化していきました」と藤田先生。その他、各エリアが発行する地域版認知症ケアパス(いつ・どこで・どのようなサービスが受けられるかをまとめたもの)の作成に関わった対応薬局もあるそうだ。

認知症対応薬局であることを示すシールが入口に貼付してある
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認知症対応薬局であることを示すシールが入口に貼付してある

こうした活動により、現在は各エリアの薬局が主体的に活動を展開できる状況となっている。例えば同薬局は、3ヵ月に1回開催している店内でのアロマ教室において、アロマクラフト作りを楽しむ機会をとらえて認知症啓発も行うようになり、地域住民からも地域包括支援センターからも高評価を得ているという。また、各エリア内から認知症対応薬局に手を挙げる薬局が増え、2017年10月現在、認知症対応薬局は同会会員薬局520店舗中、約半数となる250店舗まで増加した。藤田先生は、「新規認知症対応薬局に対して、WGが半日間の初期研修会を実施し、実践的に認知症に対応できるように、場面集などのツールの使用方法のほか、気づき・つなぎの成功事例のスモールグループディスカッションなどを行っています」と話す。
WGは認知症対応の成功・失敗事例の症例検討や実践の中から浮かび上がった問題の改善方法、薬局以外の場所で薬剤師が地域住民に対して健康サポートを実施するアウトリーチ型事業の取り組みなどについて、月に1回話し合いをしている。最近では、認知症対応薬局へのアンケート調査において、副作用発生時に対応して継続できた事例が少なかったことが明らかになり、改善策を検討している(250店舗中82店舗が回答)。また、「場面集だけでは紹介に至る判断が難しい」との声を受け、地域包括支援センターにつなぐ際、東京都大森医師会が作成した認知症簡易スクリーニングツールである「TOP-Q」(詳細は同医師会ホームページ:www.omori-med.or.jp/ninchisho.htmlを参照)を用いることでスムーズな連携ができないかを模索しているそうだ。

アウトリーチ型健康サポートへと発展させ、うつ、禁煙、感染症予防などにも着手

今後、認知症対応薬局は、同会が独自で開催している年2回の「市民講座」や仙台市との共催で開催している年1回の「もの忘れ市民フォーラム」、他の医療・福祉団体の健康フェアなどに積極的に参加し、アウトリーチ型健康サポートを展開していくという。藤田先生によれば、寸劇による認知症の啓発は非常に効果的であることが分かり、同会が自前の劇団を設立。藤田先生もその一員として上記イベントをはじめ、地域包括支援センターが開催する行事で寸劇を披露しているそうだ。
このような認知症への対応を足がかりとして、同会は、仙台市が策定した「いきいき市民健康プラン」で重点分野とされている生活習慣病予防、心の健康づくり、食生活と歯・口の健康づくり、防煙・禁煙・分煙、感染症予防にも順次取り組み始めている。すでに心の健康づくりとして「うつへの対応」が開始されており、藤田先生はそのWGに参加、初期研修を受けた。藤田先生は「これからも同会と足並みを揃え、ハートヘルスプラザとして、地域住民の健康をサポートし、豊かな暮らしに貢献して、当社のミッションを達成していきたい」と意気込んだ。
また、大学病院前に位置する薬局であることに関連して、病院が経口抗がん剤服薬プロトコールの公表を始めたことで服薬指導への段取りがスムーズにできるようになったため、高度薬学管理により積極的に関わっていきたいと話された。

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