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地域包括ケアと薬剤師

薬剤師が変わるためにまずなすべきこととは?

ファルメディコ株式会社 代表取締役社長医師 ・ 医学博士 狹間 研至 先生

はじめに

「対物から対人へ」「立地依存から機能依存へ」「バラバラから一つへ」というキーワードとともに、薬局は「門前」から「かかりつけ」、そして「地域」に移っていくべきではないかということが、厚生労働省から「患者のための薬局ビジョン」として示されて2年余り。平成30(2018)年度の調剤報酬改定については、「病院前の景色を変える」との厚生労働大臣の発言が現実のものになるのではないかという雰囲気が色濃くなってきました。
とはいえ、今現在の業務は「門前薬局の計数調剤」であることが少なくない中で、薬剤師は薬という「物」を扱い、門前という「立地」に依存した薬局で活動することが求められているように感じられます。また、調剤のミスや不適切な服薬指導は許されないことですから、薬剤師の中には「一体どうすればよいの?」という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本稿では、薬剤師が従来型の「2.0」からこれからの「3.0」に変化するために、何をなすべきかについて、お話しします。

薬局や薬剤師が変わるべき2つの理由

その前に、なぜ、これほどまでに薬局や薬剤師は変わらなくてはならないという風潮になっているのかを考えてみたいと思います。人間は一般に変化を嫌いますし、現在の業務がたとえ「対物」と言われようが「立地 依存」と言われようが、正確性とスピードが厳しく求められているにもかかわらず、その金銭的評価を引き下げると言われると、よい気分のままでいられる薬剤師は少ないと思います。
一方で、この数年の流れ、特にこの1年あまりの様々な動きを見てみると、薬局や薬剤師はこのままではいけないというのは、動かせないような雰囲気になってきました。これはなぜでしょうか?
厳しい言い方になるかもしれませんが、現在の薬局薬剤師の業務が二つの大きな問題を内包しているからではないかと私は考えています。一つは、機械化や情報通信技術(Information and Communication Technology:ICT)化により、現在の「門前薬局の計数調剤」の業務は、人間ではなくても達成できるようになってきたこと。もう一つは、薬剤師の現在の業務が「多剤併用」「薬剤性有害事象」「残薬」といった問題の解決にはほとんど役に立たないことが明らかになってきたことです。

1)薬剤師にしかできない仕事か?
昨今の機械化やICT化の波にはすさまじいものがあります。学会の企業展示ブースなどでは、ため息が出るようなすごい機械が粛々と薬を調製したり準備したりしている光景を目の当たりにすることがあります。人間は疲れたりミスをしたりしますが、機械には疲れもミスもありません。「ヒューマンエラーをなくすためには、ヒューマンをなくせばよいのではないか?」というブラックジョークは、「当たらずとも遠からず」なのかもしれません。
また、ユビキタスやモバイルデバイスという言葉すら気にならなくなるほど、どこででもインターネットに接続できるようになった今、薬剤情報は瞬時に手に入れることができ、必要なときに、いつでも呼び出すことができます。
「医師の処方箋に疑義があれば問い合わせる」「重複投与や相互作用を薬剤師が見抜く」といっても、患者さんの情報がネット上で一元化できれば、医師が処方箋を作成する際に、例えば問題のある処方をしようとしてもシステムがアラートを出したり、あるいは処方ができないようにしたりすることは、十分に現実のものとなっているのです。
ここにおいて「薬剤師法第19条(調剤)が定めているのだから、薬剤師がやらなければいけないのです!」と言っても説得力が十分ではないというのは、当然のことかもしれません。

2)わが国の薬の問題を解決できるか?
現在のわが国における薬の問題は、多種類の薬の併用により薬剤性の有害事象が起きている、いわゆるポリファーマシーです。それに付随して残薬が問題となっており、医療経済面での損失も決して小さいとはいえません。
しかし、処方された薬剤の種類や分量に関して、相互作用のリスクや重複投与の可能性がなければ、薬剤師は基本的に口を挟むことはできません。それに、薬剤師が医師の処方箋通りに薬を正確かつスピーディーに準備し、分かりやすい服薬指導とともに患者さんにお渡しする努力をいくら積み重ねたとしても、ポリファーマシーの問題解決には全くといってよいほど貢献することはできません。
すなわち、現在の薬剤師の業務は「国民の健康な生活を確保する」という薬剤師法第1条に定められた薬剤師の任務も果たしづらいだけでなく、この20年ほどの機械化やICT化により、薬剤師以外でも代行可能となってしまったといえます。言い換えると、薬局も薬剤師も、いよいよ本当に変わらなくてはならない時代が到来していると考えられるのです。

薬剤師の本質的業務を考える

それでは、この二つの問題を解決するためにはどうすればよいのでしょうか?私は、「薬剤師にしかできない業務」に専念することで、社会の問題を解決するということだと考えます。機械にもインターネットにも、薬剤師以外の人間にもできないことを薬剤師が行うことです。それにより、多すぎる薬、副作用の発現、服用されずに余っている薬をめぐる状況が改善されるのであれば、薬剤師や薬局の立ち位置は大きく変わっていくはずです。
「薬剤師にしかできない業務」とは、薬剤師が薬学部で学んだ内容をもとに、患者さんの状態を改善するための決断を行い、その結果について責任を負うことです。薬学部で学んだ内容とは、薬理学、薬物動態学、製剤学の概念です。高齢者などでは、通常通りの用法・用量や投与方法ではうまくいかないケースも出てきます。そこで、薬剤師ならではの見方で、自らが調剤した薬剤を使っている患者さんの状態を読み解き、前回処方の妥当性を評価し、よりよい処方につなげていくことが求められるのです。こうした役割は、機械や薬学的素人(薬剤師以外の医療従事者)では担えません。また、薬剤師が投薬後も患者さんの状態をフォローすることで、薬が余っていることを発見するところから始まり、コンプライアンス、効果や副作用の確認を行うことができます。これはとりもなおさず、「多剤併用」「薬剤性有害事象」「残薬」のいずれをも改善することにつながります。
このように、「薬剤師にしかできない業務」とは「薬剤師の本質的業務」であり、薬剤師がこの業務に専念することで、日本の地域医療はよりよくなっていくと実感しています。

おわりに

では、薬剤師はまず何をすればよいのでしょうか?それは、本シリーズで前回お示ししたように、薬剤師が「時間と気力と体力」を温存することです。それを可能とするには、「薬剤師の非本質的業務」を薬剤師以外のスタッフや機械などに担ってもらうことが大切です。「薬剤師の非本質的業務」とは、おそらく機械化とICT化によって代替可能な業務であるとともに、その業務を正確・迅速に行うだけでは、ポリファーマシーや残薬の問題を解決するには至らない業務を指すはずです。
薬局と薬剤師が変わるための第一歩。それは、薬剤師の「非本質的業務」を担う人材を系統的に育成し、薬剤師の肉体的・精神的負担を軽減することであると私は考えています。

非本質的業務・本質的業務

  • Maruho Square No.29(2017年12月作成)「地域包括ケアと薬剤師⑦:薬剤師の時間と気力と体力を温存する」

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